hirokuroによる

リーマン仮説証明の不可能性の証明

ver 40



new 14/09/19






■1■      リーマン仮説についての基礎的前提


リーマン仮説とは「ゼータ関数における実虚零点は、b=0 以外はすべて a=0.5 上にある。」というものです。「すべてある」ということは証明しにくいので、「a=0.5上以外にはない」という形に直し、これを「a=0.5上以外にひとつある」と仮定したとき、どのような矛盾が生じるかを示すことにより証明を完成させようとするのが仮定法による証明です。

「もし、ひとつあるなら、a=0.5から左右対称のところにもうひとつ零点がある」 ということはver20で証明してあります。ですから、実際に仮定する内容は 「a=0.5から等距離のところにふたつ並んで実虚零点がある」 ということです。これを仮定したとき、どのような矛盾が生じるかをhirokuro証明ではトライしてきました。しかし、何度も失敗した揚句、最後にはとうとうできないという結論に到達しました。失敗に至る流れの多くは、まづ第一に素人的には矛盾であると思える現象を思いつくことです。仮定した現象からその矛盾を導こうと分析している途中で、最初に矛盾と考えた現象が実際に起きていることを発見することです。実際に起きていることを矛盾とは言えません。

次に別の矛盾を思いつきます。そこで、これなら証明が出来ると思って分析を進めると、これも実際に起きていることに気がつきます。そのようなことを何度も経験するうちに、ついに新しいアイデア(つまり矛盾と思われる現象)を思いつかなくなりました。矛盾を思いつかなければ仮定法の証明はできません。ですから、証明にトライすることもお仕舞いにしようと思ったのです。

ところが最後の最後に不思議な現象に出くわしました。リーマン零点がふたつ横に並ぶことを仮定して、矛盾を探していたのですが、どうも実際に存在するらしいということが判ってきました。いろいろ工夫してa=0.5の両側に零点がくるような関数を作ってみました。それが or(s) という関数です。この関数の零点はa=0.5の両側に 0.25 の距離のところにあります。単にいろいろな矛盾と思われる現象が実際に起きていただけではないのです。最初に仮定した命題が実際に起きているのです。これでは証明がうまくいかないのも当たり前です。もちろん、このor(s)の零点はリーマン零点ではありません。しかし、実虚零点であり、実零線と虚零線が交差する点です。リーマン零点とはk(s)の実虚零点のことですから、実質的に同じ性質の点です。それが実際に存在するとは、仮定法を使う証明が初めから有効ではないことを示しています。

これについては、もう少し説明が必要かもしれません。先に仮定した内容は、証明する側の気持ちとしてはk(s)の実虚零点、つまりリーマン零点のつもりです。しかし、仮定された実際の内容はリーマン零点という限定がどこにもありません。ですから、この内容で仮定して、ここから矛盾を導きだすということは、一般的な実虚零点が二つ並ぶときの矛盾が導かれることになります。ところが、一般的な実虚零点はふたつ横に並ぶことがありえるのですから、矛盾が起きるはずはありません。矛盾に見えるのは初心者だからであって、一見おかしな現象ですが、複素関数では起きることがあるのです。

「では、k(s)のリーマン零点が二つ並ぶと仮定すればよい」 と思う人もいるかもしれません。しかし、一般的実虚零点とリーマン零点とは零線図上の区別はまったくありません。区別の付けようがないのです。

あとは k(s) が他の関数と異なる点を証明の手掛かりにするしかないのですが、k(s)は無限計算をいくつか内部に抱えているので、全体的な法則は少なく、他の関数との違いを命題化できることはわずかしかありません。厳密に言うとひとつもありません。

特徴といえるいくつかのことは他の関数とも共通のものばかりです。たとえば、「実零線と虚零線が直交する」などのことです。一部の複素関数と一致する特色もあります。k(s)の場合、実部のaについての微分零線と、虚部のbについての微分零線が一致します。これもf(s) = p0 + p1*s + p2*s^2 + ...  と表記できる複素関数ではごく普通の現象です。or(s)など特殊な関数では成り立ちませんが、k(s)も含めた普通の関数ではみな一致するのです。

k(s)と同じ微分零線が一致する関数の中にも a=0.5 から等距離のところに実虚零点が並ぶものがあります。ですから、仮定した内容の実虚零点がリーマン零点かどうかは、条件としては付けられないのです。

ですから、仮定した内容の現象が実際に起きていることが示された途端、このやり方での証明は不可能ということになります。これはやや当たり前といえる論理なので、証明と称することは問題かもしれませんが、あえて耳目を集めるために「証明」という言葉を使っておきます。





■2■      実際の具体例   or(s) の場合


では、実際に起きている事例を紹介します。or(s)とはk(s)を左に0.25ずらしたものと、右に0.25ずらして虚部をマイナスにしたものを掛け合わせた関数です。

or(s) = k(a+0.25+b*i) * k(a-0.25-b*i)
というものです。

or02 の図
この式をつかて、実際の実零線図を描いてみます。判りやすいように a=14.1 あたりを拡大してあります。左の交点が (0.25, 14.1) にあり、右の交点が (0.75, 14.1) にあることが見てとれます。厳密に調べたい人は、さらに細かく計算すれば、実際に (0.25, b), (0.75, b) に交点が来ていることが判ります。b=14.13472... です。

このような実例はほかにも作ることができます。






■3■      実際の具体例   os(s) の場合

or(s)はk(s)と異なり、実部のaについての微分零線と虚部のbについての微分零線が一致しません。この違いが証明に影響を与える可能性もあるので、微分式が一致する関数の中で実虚零点が横に並ぶ具体例を探してみました。

その関数をos(s)と名付けます。

os(s) = s^2 - s*(1+6i) + (-9+3i)
というものです。係数が複素数の二次式です。


os00 の図
この式の零線図では、(0,3)と(1,3)に零点が来ています。微分零線は一致するので、k(s)と同じ種類の複素関数です。この種の関数でも零点が横に並ぶことがあることの実例となっています。

os(s)が簡単すぎると感じる人は、この式に任意の式を掛けるといくらでも複雑になります。掛け算の場合、最初の零点の場所は変わらず、あとから掛けた式の零点が付け加えられるだけの変化になります。ですから、零点が横に並ぶ構造であることには変わりありません。

このような実際に存在する零点を前にして、そこに何らかの矛盾を見つけるということは初めからどだい無理なことなのです。






■4■      まとめ


以上のふたつの実例が存在するということは、零線図から矛盾を見つけるというやり方が不可能であることを示しています。「零点がふたつ横に並ぶ」という仮定に何か別の条件がプラスされるなら証明の可能性は復活しますが、このままでは仮定法による証明が成り立たないことを示しています。


ここで言う仮定法は 「零線図を使った仮定法」 のことです。ですから、零線図を使わない仮定法があるならまだ証明成功の可能性が残っているといえます。たとえば、計算式を使って零点が横に並ばない証明などは可能かもしれません。また、オイラー積表示のように、ゼータ関数を何らかの掛け算の無限式で表わせるなら、個別の証明を積み上げて、全体証明につなげることも可能かもしれません。しかし、ここにも問題はたくさんあります。そもそも、無限に掛けたものを安易にイクオールで結ぶというのは危険です。まさに、0 = (1 - 1) + (1 - 1) + (1 - 1) + . . . と書くのと同じで、安易にやってはいけないことなのです。

オイラー積表示は、ゼータ関数をzt(s)と書くなら、 zt(s) = 1/(1-2^-s) * 1/(1-3^-s) * 1/(1-5^-s) * . . . というもので、 zt(s) = 2^s/(2^s-1) * 3^s/(3^s-1) * 5^s/(5^s-1) * . . .  と書くこともできます。

このオイラー積表示を検討すると判りますが、個別の部分には零点はありません。しかし、無限点はあります。零線図を作ると、その無限点に実零線、虚零線が集まっているように見えます。ただ、困ったことにそれらの無限点は a=0 上に存在するようです。このような関数をzt(s)とイクオールで結んでよいのでしょうか。

aを0.5ずらすと無限点がa=0.5上に並ぶようになります。しかし、個別の式ごとの無限点はそれぞれ2πごとに繰り返しあらわれますから、素数を増やしてゆくと、無限点の数はどんどん増えてゆき、ついにはa=0.5上のほとんどが無限点になってしまいます。これとゼータ関数が同じ関数なのでしょうか。

また、hk(s) = k(s) * k(s-0.5) という関数を ver1 で紹介してあります。これのhk(s)も因数分解できて、綺麗な個別の式の掛け算として表現できるのですが、発散するので零点は計算できません。

また、k(s) = lim_[n→∞] { zt(s,n) + ber(s,n) } というk(s)の本体を見ても、この式はプラスで繋がったふたつの部分から出来ています。掛け算ではありませんから前者、後者を分析して零点を探しても意味はありません。

計算式についての分析はまだすべてを徹底的にやったわけではありませんから、「可能性が無い」と言うのは差し控えておきたいと思います。将来、証明にふさわしい計算式が見つかるなら、証明が可能となることがあるかもしれません。ただ、計算式のバリエーションもたいして多くはありませんし、すでに大半は検討を終えているのですから、計算式を使う証明には期待が持てません。

仮定法でもなく、計算による証明でもないとすると、まだ何かあるでしょうか? ネットの情報によると、区体論による証明というのがあるとのことです。私は区体論を知らないので何とも言えませんが、少なくとも、仮定法でなく、計算によるのでないとすると、少しは可能性が残っているということになります。

とにかく、零線図を使うことでは証明はできませんので、それ以外の証明方法を検討しなければなりません。そして、すべての証明方法が検討され、すべてが不可能であることがわかったとき、それでリーマン仮説証明は不可能ということが証明されたことになります。

この「すべての証明方法を検討する」ということはほとんど不可能なことのように思えますから、リーマン仮説証明はいつまでたっても、証明もできず、不可能性の証明も出来ないという状態が続くことになります。

そういう息の長い作業の中で、「零線図を使った仮定法による証明が不可能である」ことを知っておくことは少しは意義のあることではないかと思います。




<付記>

「誰かわからない人と、名前だけ判っている人が別人であることを証明せよ」と言われたら戸惑うのではないでしょうか。判断する材料が無いのです。リーマン仮説証明も同じような感じがします。矛盾を見つけること以外の証明方法にはどういうものがあるのでしょうか。そこから研究しなければなりません。







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