リーマン仮説(リーマン予想)の証明  ver1

(07/04/03 up)






証明できました。・・・と言っても信じてくれない人が多いでしょうから、まずは概略を説明し、ある程度納得してもらった上で、リーマン仮説の証明に入りたいと思います。




第1部      証明の概略


■    リーマンの零点はk(x)で計算できる

まずは、最初の大前提から説明します。おそらくk(x)と言っても何のことか判らないでしょうから、再度k(x)から説明することにします。

k(x)とはゼータ関数のxが実数の時、x>1で収束する値のことです。 (第5の広場参照のこと)

k(2)=1.644934067、k(4)=1.082323234 などで、k(2)=pi^2/6, k(4)=pi^4/90, k(6)=pi^6/945, k(8)=pi^8/9450, となることが判っています。
これを、k(2)=su(2)*2*pi^2, k(4)=-su(4)*2^3*pi^4, もしくは、k(2)=B(2)*pi^2*2/2!, k(4)=-B(4)*pi^4*2^3/4!, のように、su(r), B(r) を使っても表記できます。ベルヌーイ数はあちこちに顔を出します。
これをもっと一般化して数式化すると以下のようになります。
Σ1/n^r = k(r)-1/(r-1)/n^(r-1) + 1/2/n^r - r/12/n^(r+1) + 0 + r*(r+1)*(r+2)/6!/n^(r+3) + 0 + .....

この公式を使うと、k(x)を速やかに計算できます。k(3), k(5) などは奇数ゼータと呼ばれています。この式を使うと、x<1でも、x<0でも計算できます。たとえば、k(0.5)は-1.4603545088... となっています。

さて、このxは実数であることを前提に、いままでやってきましたが、これを拡張して複素数として計算すると、リーマンの零点を得ることが出来ます。リーマン自身の使った数式を知りませんし、その後のリーマン仮説の研究者の研究成果も知りませんので、 はたしてこの式が彼らの式と同じかどうか判らないのですが、計算上同じ結果になるのですから、 これで良しとしていただかないことには話しになりません。 以下の証明ではこのことは大前提となっています。


■   複素数における零点の法則

さて、複素数a+biが零であるとは、a=0 かつ b=0 ということです。そして、複素数zが零の時、任意の複素数x に対して、x*z=0 となり、x/z は計算不能となるのは実数の時と同じです。交換法則や結合法則も成り立ちます。 そして、x*y=0 の時、 x=0 もしくはy=0 であることも実数と同じです。x≠0 かつ y≠0 のとき、x*y≠0 であることも実数と同じです。


■      複素空間で複素数の動きを調べる

実数関数ではXY座標を使って関数の形を調べます。私もXY座標の威力にほとほと感心した人間のひとりで、 これを発案したデカルトを深く尊敬しています。XY座標は、数学の本質を変えるものではありませんが、 これにより数学を判りやすくすると言うことにおいて絶大な貢献をはたしました。数学史の本を開けてみると、 このXY座標の発案についての記述があまりないのですが、これについては是非触れて欲しいと思います。

さて、XY座標と同じアイデアを複素数にも導入したいのですが、複素関数では、x、y のそれぞれにa, b という二つの要素があり、 合計4つの要素を考えなければなりません。しかし、平面で使えるのは2つ、空間として捉えても3つの要素しか扱えません。 何かよい方法はないだろうかと模索しているのですが、なかなかこれと言ったものが見つかりません。 やむを得ず、ここでは複素空間というアイデアを使うことにします。

複素空間は、XYZ座標と同じことですが、ただ、ふたつのXYZ座標を重ねて理解するという特徴があります。 つまり、複素関数のxには(a1, b1)という要素があるので、a1をX軸、b1をY軸として、平面全体をa1+b1*i と対応させます。 xが定まると、それに対応している平面上の点が定まることになります。 さて、yにもふたつの要素があるので、(a2, b2) と表現します。このa2とb2をZで対応させます。 つまり、yの実部であるa2を意味するZ座標と、虚部のb2を意味するZ座標のふたつを想定するのです。 これで、複素数x, y がXYZ座標と対応関係を持つことができるようになります。

ひとつの数にふたつの空間を想定するのはやや不便ですが、いまのところ仕方ありません。これを使って複素関数の姿をなんとか捉えてみたいと思います。


■      複素空間における振動、発散、収束、極限値

XY座標で使った概念の大半は複素空間でも使えます。ただ、違いがないわけでもないので、注意が必要です。 XY座標では、点の動きが線となり、その線が振動したり、発散したりするのですが、複素空間では、平面が振動したり、発散したり、収束したりします。 XY座標では極限値という考え方をしましたが、複素空間でも同じような現象が起きます。 つまり、ある形の線分がXの増加と共に姿を変化させてゆきますが、Xの極大化したところでひとつの形に収束することがあります。 その形のことを何と呼べばよいのか・・・。一応「極限値」、もしくは「極限形」という言い方をすることにします。



■      リーマン零点とは
a+biの図

さて、k(x)を複素数に拡大して、x=a+bi 、k(x)=z1+z2*i と理解します。k(x)が零となるのが零点ですから、 z1=0 かつ z2=0 ということです。これを視覚的に理解するために、まずはXYz1座標においてz1=0となるようなa, b を探してみます。そのようなa, b をXY座標で表し、複素平面図を描いてみます。また、XYz2座標でも同じようにz2=0となるような図を色を変えて描いてみます。 そのふたつを重ねたとき、その交点がz1=0, z2=0 となっているので、そこが零点 であることが判ります。右図は、まだ未完成なので、一部の線が描かれていませんが、一応、描かれた範囲内では、 実部と虚部の交点がa=0.5の線上にあることが判ります。 零点は、b=0 つまり実数の線上にもあります。「それ以外に零点となるところがない」ということがリーマン仮説の内容ですから、 それを証明することがここでの目標になります。



■      極限値の計算

それから、私の証明では極限値計算を使うときがあります。極限値を計算して、それで証明するとは、やや証明としては問題だと思う人もいるような気がしますが、それは証明の定義の問題になるので、私には何とも言えません。ご理解いただきたいのは、リーマン仮説そのものの中に計算による証明が含まれていると言うことです。「リーマン仮説とは、a=0.5, b=0 上の点以外に零点が存在しない」というものですが、「a=0.5上に零点がある」ということが前提にされています。しかし、このことはどのようにして証明されているのでしょうか。最初の零点はb=14.1347251417ですが、実部の零点と虚部の零点が計算上一致すると言うだけのことであって、それ以上のことではありません。また、a=0.5というのも、計算上そうなるということです。ですから、私の証明に於いて、極限値計算を適宜証明の手段として採用しているのも決して不当なことではありません。

もちろん、零点を順次計算して、計算した範囲内ですべて零点がa=0.5上にあることを示すことが証明だと言っているわけではありません。もし零点の出現に法則性があるなら、それで証明は可能となりますが、実際の零点はランダムに出現しています。ですから、いくら多くの零点を計算しても、すべての零点を検証したことにはなりません。以下の証明は、まさにその点をクリアすることが出来る証明であるという点は強調しておきたいと思います。



■   k(x)=f(x)*g(x) となるf(x), g(x) を見つける

さて、リーマン仮説を証明する方法としては、k(x)=f(x)*g(x) となるような f(x), g(x) を見つけるというやり方でゆきたいと思います。

実数の場合、z≠0を証明するためには、z=x*y の式に於いて、x≠0 かつ y≠0 を証明すればよいわけです。同じように、関数に於いても、もし、k(x) = f(x) * g(x) となるようなf(x), g(x)があり、f(x)がa=0.5, b=0 上にしか零点がなく、g(x)もa=0.5, b=0 上にしか零点がないことが証明できるなら、k(x)もa=0.5, b=0 上にしか零点がないことになります。

ただし、はたして証明可能なf(x), g(x) が存在するでしょうか。また、あったとしてもそれをどのようにして見つけだしたらよいのでしょうか。それが大きな課題となります。



■   ゼータ関数とk(x)を結びつける

そういう方針のもとに、 k(x) = f(x) * g(x) となるf(x), g(x) を探すことにしました。 はたして証明可能なf(x), g(x)は見つかるだろうかと心配だったのですが、とにかく手当たり次第いろいろな可能性を探ってみました。 その中で、zeta(x)と関連させてみるのが一番有望ではないかとの感触を得ました。

k(x)/zeta(x) なる関数を調べてみようと思い立ち、zeta(x)の零点複素平面図を描こうとしたのですが、 zeta(x)は振動して図を描くことが出来ません。それにどうも a=0.5上に零点がくるのでなく、a=0上に零点が集まっているように見えました。そこで、zeta(x-0.5)として、無理矢理a=0.5上に零点ができるよう変更してみました。 その上で、hk(x) = k(x) / zeta(x-0.5) となるようなhk(x)を定義し、このhk(x)を計算したところ、けっこう綺麗な数式を得ることができました。それに気を良くして、さらに分析したところ、非常にうまい具合に証明可能な論理の筋道を見つけることが出来ました。

つまり、k(x) = zeta(x-0.5) * hk(x) なのですから、zeta(x-0.5) と hk(x) がともにa=0.5 上にしか零点、および特異点を持たないことを証明すればよいわけです。そこで、zeta(x-0.5)については、zeta(x) = 2^x/(2^x-1) * 3^x/(3^x-1) * 5^x/(5^x-1) * ..... を使うことにしました。2^(x-0.5)/(2^(x-0.5)-1) 、 3^(x-0.5)/(3^(x-0.5)-1) 、 5^(x-0.5)/(5^(x-0.5)-1) のそれぞれを独立に分析し、それぞれで a=0.5, b=0 上にしか零点がないことを証明すればよいのです。これは証明できました。

また、hk(x)については、hk(x) = hk1(x) * hk2(x) * hk3(x) *.. なる式が見つかったので、hk1(x), hk2(x), hk3(x) のそれぞれで、a=0.5, b=0 上以外で零点が存在しないことを証明すればよいのです。これも証明可能でした。
zeta(x-0.5)とhk(x)で証明できると言うことは、k(x)での証明が可能であることを意味しています。
以上が証明の概略です。このやり方でこれから証明して見せようと思いますが、ここで躓く方は、以下を読んでも意味が ありませんね。 (^^) 失望されなかった方はさらにお付き合いいただければと思います。





第2部      証明の本体


さて、k(x) = zeta(x-0.5) * hk(x) ということですから、zeta(x-0.5) と hk(x) の証明を順番にしてゆくことにします。hk(x) の実態についてはまだなにも説明してないので、ピンとこない人もいるでしょうが、気になるなら、「第2部の2」を先に検討していただいても差し支えありません。


第2部の1

ここでは、x=a+biとして、zeta(x-0.5)が、a=0.5 上にしか零点・特異点がないことを証明します。

zeta(x) = 2^x/(2^x-1) * 3^x/(3^x-1) * 5^x/(5^x-1) * ..... という式があります。 これはゼータ関数と素数を結びつける式として有名です。2^x/(2^x-1) や 3^x/(3^x-1) などで、もし零点がa=0上にあれば、x-0.5に移行 したとき、零点はa=0.5上に来ることになります。ですから、zeta(x)で a=0上に零点がくることを証明しても良いのですが、 計算結果の是非を調べるためにzeta(x-0.5)をしばしば使うので、ついでに証明もこちらの式を使うことにしました。

c=x-0.5 と置きます。すると、 zeta(c) = 2^c/(2^c-1) * 3^c/(3^c-1) * 5^c/(5^c-1) * .....  となります。
次に、zt1(c) = 2^c/(2^c-1), zt2(c) = 3^c/(3^c-1), zt3(c) = 5^c/(5^c-1),  となるように zt1(c), zt2(c) ..... を定義します。 つまり、zeta(c)の零点がa=0.5上にしかないことを証明するとは、zt1(c), zt2(c), zt3(c), .... のそれぞれの関数において、 その複素平面での零点がa=0.5、b=0 上にしか存在しないことを証明すればよいと言うことです。それでは順番に証明してみせることにします。


■   zt1(x-0.5)  つまり、2^(x-0.5) / { 2^(x-0.5)-1} の証明

というわけで、まずは、zt1(x-0.5) = 2^(x-0.5) / { 2^(x-0.5)-1} の場合を証明します。これは図を書いて零点の場所を確認するまでもなく、方程式として直接、解を求めることができます。

xは複素数ですからa+biと書くことが出来、c=a-0.5、p=b*log(2)/log(e) と表記することにして、式を整理し、 分母にある虚数を消すと、zt1(a+bi-0.5) = { 2^c(2^c-cos(p)) - i*2^c*sin(p) } / { 2^(2c) - 2*2^c*cos(p) + 1 } となります。この式の分母が零でない場合、実部と虚部がともに零になるのが零点です。 分母が零になると無限となり値を持ちません。
この無限も零点に関係するので、まず、分母が零となる場合を調べます。

分母が零とは、 2^(2c) - 2*2^c*cos(p) + 1 = 0 ということです。これは 2^(2c) + 1 = 2*2^c*cos(p) として、解くことが出来ます。両辺を2*2^cで割ると、(2^c+1/2^c)/2=cos(p) となります。 (2^c+1/2^c)/2>=1 かつ、cos(p)=<1ですから、成り立つためには (2^c+1/2^c)/2=1 かつ、cos(p)=1 でなければなりません。 つまり、c=1 ゆえに a=0.5、p=2pi*r (rは0, 1, 2, 3, ... ) ゆえに b=2pi*r*log(e)/log(2) となります。計算すると、b=0, b=9.064720283, b=18.12944056,. . . となります。これでaとbが確定し、この(a, b) では分母が零となるので、値が存在しないことになります。

分母が零とならないところでは、分子が零となるのが零点ですから、そこを計算してみます。 実部が零、虚部が零となるのが零点ですから、2^c(2^c-cos(p)) = 0 , 2^c*sin(p) = 0 をそれぞれ解いたところ、 c=0, p=0 となり、a=0.5, b=2pi*r*log(e)/log(2) となりました。 これは分母を零とする点とまったく一致しています。ですから、この点では零割る零という形になっているということです。 この点は特異点であり、他の式との加減乗除の過程で零点を生み出す可能性を秘めているので、零点になる場所として認識することも出来ます。そして、この点以外には特異点も零点もないことは、式の分析から明らかです。
ですから、zt1(c)における零点、もしくは特異点がa=0.5 かつ b=0, b=9.064720283*r にしかないことが証明されました。


■   zt2(x-0.5) = 3^(x-0.5) / { 3^(x-0.5)-1 } の証明


zt2(x-0.5)のときも、基本的にはzt1(x-0.5)と同じです。

xをa+biとし、c=a-0.5 とし、p=b*log(3)/log(e) として、分母にある虚数を消すと、 zt2(a+bi-0.5) = { 3^c * (3^c-cos(p)) - i * 3^c*sin(p) } / { 3^(2c) - 2*3^c * cos(p) + 1 }  となります。

分母が零となるのは、 3^(2c) - 2*3^c*cos(p) + 1 = 0 ということで、これを解くと、 cos(p) = 1/2 * (3^c+1/2) となり、(3^c+1/3^c)>=2 かつ、cos(p)=<1 となります。これを成り立たせるのは c=1, p=2pi*r (rは0, 1, 2, 3, ... ) となるので、a=0.5 かつ b=0, b=5.719201735, b=11.43840347, となります。 計算方法はzt1(c)のときとまったく同じです。

分子が零のときも同じやり方で、a=0.5 かつ b=0, b=5.719201735, b=11.43840347, を得ることが出来ます。そして、これ以外に解はないのですから、これで証明は終わりです。

つまり、b=0, b=5.719201735, b=11.43840347,... は、すべてa=0.5上の点なので、零点、特異点の存在範囲としては、a=0.5上にしかないことが証明されました。


■   zt3(x-0.5) より先の証明

さて、zt1(x-0.5), zt2(x-0.5) が証明できたのですから、同じやり方でzt3(x-0.5), zt4(x-0.5) も出来ることは明らかです。 そこで、2, 3, 5, 7.. の数を一般化してgと表記し、式もzt(x-0.5)と表記して、zt(x-0.5)=g^(x-0.5)/(g^(x-0.5)-1) という式を用いて、全体をまとめて証明することにします。 やり方としては、zt1(x-0.5), zt2(x-0.5) のときと同じです。

xをa+biとし、c=a-0.5 とし、p=b*log(g)/log(e) として、分母にある虚数を消すと、 zt(a+bi-0.5) = { g^c * (g^c-cos(p)) - i * g^c*sin(p) } / { g^(2c) - 2*g^c * cos(p) + 1 } となります。

分母が零となるのは、 g^(2c) - 2*g^c*cos(p) + 1 = 0 ということで、これを解くと、 cos(p)=1/2 * (g^c+1/2) となり、(g^c+1/g^c)>=2 かつ、cos(p)=<1 となります。これを成り立たせるのは c=0, p=2pi*r (rは0, 1, 2, 3, ... ) となるので、a=0.5, b=0, b=p*log(e)/log(g), となります。

分子が零となるのは、g^c(g^c-cos(p)) = 0 , g^c*sin(p) = 0 となる点で、その解は、 c=0, p=0 となり、a=0.5, b=2pi*r*log(e)/log(g) となります。bはいくつもの値を取りますが、aは0.5のひとつですから、zt(x-0.5)における零点、もしくは特異点はa=0.5上にしかないことが証明されました。



zeta(x-0.5)についての証明終わり。








第2部の2

ここではhk(x)が、実数部分(b=0)を除いて、a=0.5 上にしか零点・特異点がないことを証明します。



第2部の2の1    hk(x)とは


そこで、このhk(x)の中身ですが、それはこの式の定義に従って計算すれば出てきます。つまり、 hk(x) = zeta(x-0.5) / k(x) が定義で、zeta(x) も k(x) も既知の式ですから、hk(x)を計算することができます。

zeta(x) = Σ1/n^x ですから、 zeta(x) = 1 + 1/2^x + 1/3^x + 1/4^x + 1/5^x + ..  ということです。
k(x) = zeta(x) + 1/(x-1)/n^(x-1) - 1/2/n^x + x/12/n^(x+1) - x*(x+1)*(x+2)/6!/n^(x+3) + ....  であることは既に知られています。 (第5の広場参照のこと)

k(x)の式の後半は見にくいので、k(x) = zeta(x) + ber(x) となるようなber(x)を定義しておくこともできます。 つまり、ber(x) = 1/(x-1)/n^(x-1) * { 1 - (x-1)/2n + (x-1)x/12n^2 - (x-1)x(x+1)(x+2)/6!n^4 + ... }   これをΣで書き直すと、ber(x) = 1/(x-1)/n^(x-1) * Σ { B(r)*(x-1)*x*(x+1)*...(x+r-2) / r!/n^r }  となります。 B(r)はベルヌーイ数です。

というわけで、hk(x)の計算は理論上は可能となりました。しかし、いざやってみるとけっこう面倒だったので、さらに判りやすくするために、zeta(x) = 2^x/(2^x-1) * 3^x/(3^x-1) * 5^x/(5^x-1) * 7^x/(7^x-1) * ...  という式を利用することにします。 f1(x), f2(x), f3(x) ... という式を次のように定義します。

まずは、f1(x) = { 2^(x-0.5) / (2^(x-0.5)-1) } / k(x) とします。次に、 f2(x) = { 2^(x-0.5) / (2^(x-0.5)-1) } * { 3^(x-0.5) / (3^(x-0.5)-1) } / k(x) 、次に、f3(x) = { 2^(x-0.5) / (2^(x-0.5)-1) } * { 3^(x-0.5) / (3^(x-0.5)-1) } * { 5^(x-0.5) / (5^(x-0.5)-1) } / k(x) となります。
f1(x), f2(x), f3(x) ... と順次計算してゆくと、この式は最終的にhk(x) に近づくことになります。


■   f1(x) を求めます

そこでまず、f1(x) = 2^(x-0.5) / (2^(x-0.5)-1) / k(x) を実数の範囲で計算することにします。f1(x) = t1 + t2/2^x + t3/3^x + t4/4^x + .... とおいて、順次、t1, t2 .. を求めてゆきます。幸い、t1,t2..は√と有理数で表現できるので、有効桁数を上げ、時間さえかければいくらでも確定させることが出来ます。これを計算するために、私が多桁形算用に作ったTk.javaを使いました。実際に計算したプログラムはam002.javaと名付けておきます。

結果は次のようになりました。
f1(x) = 1 + (√2-1)/2^x - 1/3^x - (√2-2)/4^x - 1/5^x - (√2-1)/6^x -1/7^x + 2(√2-1)/8^x + 0/9^x - (√2-1)/10^x - 1/11^x - (√2-2)/12^x -1/13^x ... となっています。このあたりまで来ると法則が見えてきます。 素数の項数はすべて-1です。偶数の項数には√2が関係しているようです。
長くなったので、以下のように纏めておきます。

t1=1, t2=(√2-1), t3=-1, t4=-(√2-2), t5=-1, t6=-(√2-1), t7=-1, t8=2(√2-1), t9=0, t10=-(√2-1),
t11=-1, t12=-(√2-2), t13=-1, t14=-(√2-1), t15=1, t16=2(√2-2), t17=-1, t18=0, t19=-1, t20=-(√2-2),
t21=1, t22=-(√2-1), t23=-1, t24=-2(√2-1), t25=0, t26=-(√2-1), t27=0, t28=-(√2-2), t29=-1, t30=(√2-1),
t31=-1, t32=4(√2-1), t33=1, t34=-(√2-1), t35=1, t36=0, t37=-1, t38=-(√2-1), t39=1, t40=-2(√2-1),
t41=-1, t42=(√2-1), t43=-1, t44=-(√2-2), t45=0, t46=-(√2-1), t47=-1, t48=-2(√2-2), t49=0, t50=0,
t51=1, t52=-(√2-2), t53=-1, t54=0, t55=1, t56=-(√2-1), 以下略です。

素数は-1, 2の累乗は、t2=(√2-1), t4=-(√2-2), t8=2(√2-1), t16=2(√2-2), t32=4(√2-1), t64=4(√2-2), ・・・ となっています。
3, 5 ,7の累乗、およびその倍数はすべて0、あとは、分母を因数分解したとき出てくる数字の項数を掛けると答えになります。 ただしプラスマイナスは別途検討が必要です。特にt4=-(√2-2) となっていて法則に乱れが生じている点には注意しなければなりません。


■   f2(x)を求めます

次に c=x-0.5 として、f2(c) = 2^c/(2^c-1) * 3^c/(3^c-1) / k(x)  を求めます。

f2(c)= t1 + t2/2^x + t3/3^x + t4/4^x + ... とすると、
t1=1, t2=(√2-1), t3=(√3-1), t4=-(√2-2), t5=-1, t6=(√2-1)*(√3-1), t7=-1, t8=2(√2-1), t9=-(√3-3), t10=-(√2-1) , t11=-1, t12=-(√2-2)*(√3-1), t13=-1, t14=-(√2-1), t15=-(√3-1), t16=-2(√2-2), t17=-1, t18=(√2-1)*(√3-3), t19=-1, t20=(√2-2), t21=-(√3-1), t22=-(√2-1), t23=-1, t24=2(√2-1)*(√3-1), t25=0, t26=-(√2-1), t27=-3(√3-1),
以下略です。

f1(x)を修正した程度の違いしかありません。


■   f3(x)を求めます

次に c=x-0.5 として、f3(c) = 2^c/(2^c-1) * 3^c/(3^c-1) * 5^c/(5^c-1) / k(x)  を求めます。
その結果は以下のとおりです。

f3(c)= t1 + t2/2^x + t3/3^x + t4/4^x + ... とすると、
t1=1, t2=(√2-1), t3=(√3-1), t4=-(√2-2), t5=(√5-1), t6=(√2-1)*(√3-1), t7=-1, t8=2(√2-1), t9=-(√3-3), t10=(√2-1)*(√5-1) , t11=-1, t12=-(√2-2)*(√3-1), t13=-1, t14=-(√2-1), t15=(√3-1)*(√5-1), t16=-2(√2-2), t17=-1, t18=-(√2-1)*(√3-3), t19=-1, t20=-(√2-2)*(√5-1), t21=-(√3-1), t22=-(√2-1), t23=-1, t24=2(√2-1)*(√3-1), t25=(√5-5), t26=-(√2-1), t27=-3(√3-1),
以下略です。

f1(x), f2(x)と大した違いはありません。


■   hk(x)を数式で表わします

f1(x), f2(x), f3(x) を眺めると、次がどうなるかを予想することができます。そしてf(x)の極限であるhk(x)が最終的にどうなるかを明らかにすることはそれほど難しくありません。

その式は次のようなものです。
hk(x) = 1 + (√2-1)/2^x + (√3-1)/3^x - (√2-2)/4^x + (√5-1)/5^x + (√2-1)(√3-1)/6^x + (√7-1)/7^x + 2(√2-1)/8^x - (√3-3)/9^x + (√2-1)(√5-1)/10^x + (√11-1)/11^x - (√3-1)(√2-2)/12^x + (√13-1)/13^x + (√2-1)(√7-1)/14^x + ...

rが素数のとき、t(r) = (√r-1) です。r=r1^pで、p=2 のとき、t(r) = -(√r1-r1)/r1^2x となり、p=3では、t(r) = r1(√r1-1)/r1^3x となり、p=4では、t(r) = -r1(√r1-r1)/r1^4x 、 p=5では、t(r) = r1^2(√r1-1)/r1^5x となります。
r=r1*r2 のとき、t(r1)/r1^x, t(r2)/r2^x ですから、t(r) = t(r1) * t(r2) となります。

これで、hk(x)の数式表現が完成したことになります。これを使ってhk(x)の零点、また特異点がすべてa=0.5、b=0 上にあることを証明することにします。






第2部の2の2    hk(x)を因数分解する


さて、hk(x)の式を眺めると判るのですが、この式は因数分解することができます。数の因数分解ではありません。 hk(x)を、見事にいくつかの式の積として表わすことが出来ます。つまり、hk(x) = hk1(x) * hk2(x) * hk3(x) *.. と書けるような hk1(x), hk2(x), hk3(x) が存在し、それぞれ綺麗な数式で表記することができます。それが以下の式です。

hk1(x) = 1 + (√2-1)/2^x - (√2-2)/4^x + 2(√2-1)/8^x - 2(√2-2)/16^x + 4(√2-1)/32^x - 4(√2-2)/64^x + 8(√2-1)/128^x -8(√2-2)/256^x + 16(√2-1)/512^x - 16(√2-2)/1024^x ...

hk2(x) = 1 + (√3-1)/3^x - (√3-3)/3^2x + 3(√3-1)/3^3x - 3(√3-3)/3^4x + 9(√3-1)/3^5x - 9(√3-3)/3^6x + 27(√3-1)/3^7x - 27(√3-3)/3^8x + ...

hk3(x) = 1 + (√5-1)/5^x - (√5-5)/5^2x + 5(√5-1)/5^3x - 5(√5-5)/5^4x + 25(√5-1)5^5x - ...

という具合です。

hk(x) = hk1(x) * hk2(x) * hk3(x) * ....  ですから、hk1(x), hk2(x) を順次検討してゆき、それぞれがa=0.5, b=0 上にしか零点、もしくは特異点が存在しないことが証明出来ればよいわけです。





第2部の2の3    hk1(x)の証明


そこで、まずhk1(x)を証明することにします。

hk1(x) = 1 + (√2-1)/2^x - (√2-2)/4^x + 2(√2-1)/8^x - 2(√2-2)/16^x + 4(√2-1)/32^x - 4(√2-2)/64^x + 8(√2-1)/128^x -8(√2-2)/256^x + 16(√2-1)/512^x - 16(√2-2)/1024^x ...
となっています。これに x=a+bi を代入して、任意のa上の実部線、虚部線を描こうとしてみたところ、図形としては収束しないようで、零点の不存在を証明する手がかりは得られませんでした。しかし、いくつかの操作を加えるとhk1(x)の動きを把握することが出来るようになります。

hk1(x)=Σ[n=0,∞]t(n)/2^nx では振動・発散してしまいますが、nを任意の有限な値にするとhk1(x)もすべて有限な値になります。この場合のhx1(x)をhx1(x,n)と書き表すことにします。

hx1(x,0) = 1 であり、
hx1(x,1) = 1 + (√2-1)/2^x
hx1(x,2) = 1 + (√2-1)/2^x- (√2-2)/4^x
hx1(x,3) = 1 + (√2-1)/2^x- (√2-2)/4^x + 2(√2-1)/8^x
ということです。
hx1(x,∞) = hk1(x) ということです。

これでhx1(x)を有限な値で分析することが可能となります。

しかし、それでもまだ値が大きく、図を書くことが容易ではありません。
そこで、任意のa上のhk1(x,n)の値を調べてみると、その中ではhk1(a+0i,n)が一番大きくなることが確認できたので、すべての値をhk1(a+0i,n)で割ることにします。すると、hk1(x,n)は必ず1以下の値になり、図で表示しやすくなるし、零点の分析も可能になります。以後、断りのない限り、hk1(x,n)の値はhk1(a+0i,n)で割ったものを使いますのでご注意ください。
hk1(x)を計算するプログラムはas002.javaとしてあります。

注    hk1(a+0i,n)で割るという便宜上の操作が嫌いな方がおられるかもしれません。そういう人は、あとで述べる補足のところに書いているように、hk1(a+0i,n)を掛けるともとの値になるので、本来のhk1(x,n)の値に直して、修正して理解していただければと思います。座標軸の単位を変えると、結局は同じ図形になります。結論に影響を与えることはありません。


■    b軸(Y軸)上の繰り返し

次に、b軸上の値には繰り返しがあることを確認しておきます。

hk1(a+bi)の実部は、 1+ (√2-1) * cos(b*log2/log(e)) / 2^a - (√2-2) * cos(b*log4/log(e)) / 4^a + 2(√2-1) * cos(b*log8/log(e)) / 8^a .... となります。ここで、log4=2log2, log8=3log2 なので、p=b*log2/log(e) とすると、 1 + (√2-1) * cos(p) / 2^a - (√2-2) * cos(2p) / 2^2a + 2(√2-1) * cos(3p) / 2^3a .... と書き直すことが出来ます。 この場合、cos(p), cos(2p), cos(3p), ... は、pが2piの倍数のとき同じの値になります。ですから、2pi=b*log2/log(e) を計算し、b=9.064720283を得ます。つまり、実部は9.0647202...ごとに繰り返されると言うことです。

虚部も同じです。虚部の式は  - (√2-1) * sin(p) / 2^a + (√2-2) * sin(2p) / 2^2a - 2(√2-1) * sin(3p) / 2^3a .... となります。ここで、pが2piの倍数のときは全体が同じ値になるので、実部と同様、9.0647202... で繰り返されることになります。このことは図でも確認できます。それゆえ、零点の不存在証明は、b<9.0647202.. でなされれば充分であることが判ります。以後、比較の便宜上、hk1(x)では、p=9.0647202 を基準に図を描くことにします。

n=4のとき、hk1(x,n)=Σt(n)/2^(n*(a+bi)) の図
hk1(x) n=4 の図










hk1(x) n=4 の図










この図の観察から判ることは、実部がb=0からb=pまでの図で左右対称であることです。また、虚部もb=0からb=pまでの図で、上下左右反転させた図が元の図に重なります。

図だけでははっきりしないので、数値データも挙げておきます。

実部の数値データの最初の部分は data[0][0]=3.9999999; data[0][1]=3.9430827; data[0][2]=3.7752394; data[0][3]=3.5050311; data[0][4]=3.1461863; となっていて、終わりの部分は、data[0][96]=3.1461863; data[0][97]=3.5050311; data[0][98]=3.7752394; data[0][99]=3.9430827; data[0][100]=3.9999999; となっていて、 数値が完全に一致しています。

虚部も同じで、data[1][0]=1.0E-50; data[1][1]=-0.5460172799999999; data[1][2]=-1.0669677; data[1][3]=-1.5391485; data[1][4]=-1.9415045; 終わりの部分は、data[1][96]=1.9415045; data[1][97]=1.5391485; data[1][98]=1.0669677; data[1][99]=0.5460172799999999; data[1][100]=1.0E-50; となっています。 プラス・マイナスが異なるだけで、数値は一致しています。

このようは現象はa+biのあらゆるところに現れるので、零点を確認するためには、p/2=4.5323601まで調べれば充分であることが判ります。



■    波頭の数はnと関係している
hk1(x) n=8 の図
n=4のときの波頭の数は4でしたが、n=8とすると8になります。n=16では16になります。a=0, n=8 の図を載せておきますが、a<0.5のほとんどでこのような波が現れ、波頭の数とnは連動しています。

au2_-1000_8 の図

しかし、aがかなり大きなマイナスになると波頭の数が減少し、ついにはp内部でひとつだけになります。これはhk1(a+bi)の式を見ると判りますが、aがマイナスのとき、1/2^(ra)が2^(-ra)ですから、値があまりに巨大になり、他の級数の項目を加えても影響されないほどになります。そして最後にはt(n)/2^nxを計算しただけとなり、波頭が1となります。a=-1000, n=8 の図を載せておきます。




ass_0.4_8 の図

aが0.5に近づくと波はz=0近くで小さく変動しますが、波が消えるわけではありません。

















第2部の2の4    a<0.5 には零点が存在しないことを証明します。


さて、a<0.5 と a>0.5 ではhk1(x)の形が異なるので、これを分けて証明することにします。

上記のa=0.4, n=8 の図を見ても判るように、a<0.5では実部と虚部が交差することがあり、もしかすると零点があるかもしれないという感じがします。しかし、実部、虚部の線はきわめて法則的に並んでいて、交わることは交わるのですが、普通はz=0で交わることはありませんし、nが極大のところではz=0で交わることがありません。
hk1(x) a=-10, n=8 の図

まずは、hk1(-10,8)の図(右図)を見てください。高いところはz=1で、低いところがz=-1で、真ん中がz=0です。p/2というのが波の繰り返しを表わすpの半分と言うことで、波頭が4つあるということは、全体で8になり、n=8と一致します。また、縦軸(z軸)のグレー線はp/8を意味していますが、その線上に実部の波頭が来ているように見えます。これは、nが増加しても同じことで、高さは常に1、波頭はp/nの近くにあります。

この図から言えることは、実部線と虚部線は同じ形でリズムよくずれていることです。ですから、z=0で交わることはないということが判ります。



■      実部の波の高さはa=0.5で零になる ( hk1(a+bi,n)で割った場合の説明です )

さて、a<0.5では、a=-10あたりの波の高さ、低さはだいたい同じですが、-5を過ぎると次第に中央部分がへこみ始め、0.5では零になってしまいます。下記の a=0.4 の図を見るとへこみ方が判ります。波頭の位置に注目すると、b=0 は1ですが、そこから急激に下がり、第1波頭からなだらかに減少します。そして、p/2で底となり、またなだらかに増加に転じ、b=p付近でまた急激に増加して、b=p で1になります。

ass0.4 n=8,16 の図
nが増加すると波頭が増え、波の基準線が少し下がりますが、基準線についてはすぐに収束して、同じ位置で波打つ形になります。この場合、波の中央だけは振動せずに定位置に留まりますので、その値を調べてみたところ、面白いことに法則のある数式で表すことができました。

f(a) = 1 - √2*2^a + 4^a - √2*8^a/2 + 16^a/2 - √2*32^a/4 + 64^a/4 - ...
とても綺麗ですね。

試しにa=0.5を代入すると、1と-1の繰り返しになり、計算不能となりますが、まさにa=0.5に相応しい答えが出てきます。

この式を見つけたので、以下の説明はいらなくなったかもしれませんが、一応、素朴なやり方で、波の中央(b=p/2) がa=0.5で0と なることを計算と図で示しておきます。
hk1(x) n=0.5 中央高さの図
a=0.5として、n=2のときの値がz(1)で、n=4のときの値がz(2)です。

波の中央の点の値の推移
z[1]=0.63060193;
z[2]=0.46049571;
z[3]=0.29911947;
z[4]=0.17586154;
z[5]=0.096408001;
z[6]=0.050645307;
z[7]=0.025980550;
z[8]=0.013161243;
z[9]=0.0066242130;


これを図示すると右図のようになります。綺麗に0に近づいているのが判ります。

中央の波の高さが0になるのと同様、周辺の高さも0に近づきます。そのことは計算結果で示しておきます。

たとえば、p/16を基準として、その右にできる実部の波頭の高さを計算したところ、次のようになりました。
z(r)のrはn=2^rを意味しています。

z(4)=0.23211647;
z(5)=0.12864904;
z(6)=6.9360698E-2;
z(7)=3.6262367E-2;
z(8)=1.8591242E-2;
z(9)=9.4531372E-3;
z(10)=4.8041931E-3;

綺麗に零に近づいているのが判ります。

p/8や、p/4を基準とした波頭についても同じような結果になります。ですから、a=0.5においては、b=0, b=p を除いて、すべてのbにおいてz=0 が成り立つことになります。(ただし、hk1(a+0i,n)で割らなかった場合については、別の考察が必要です。それについては、補足の項目で説明する予定です。)



■      実部の波底の動き ass_04_8 の図



波底も波頭に連動して似たような動きをしますが、a=0.5近傍ではやや異なるところもあります。しかも、波底の動きは証明にも直結しているので、少し丁寧に説明しておきます。

波底の高さは、a=-10ではz=-1あたりにありますが、次第に0に近づいてゆきます。この現象は波頭と同じです。しかし、a=0.2あたりから、nの値によっては0を越えてプラスに転じるところが現れ始めます。そこでは波頭も波底もプラスになり、z=0との交点がなくなります。たとえば、hk1(0.4, 8)の場合(上記の図、および下記の表参照)、第1の波以外は全体的にプラスになっています。nが増加するとマイナスの波底が増えてきますが、aが0.5に近づくとマイナス波底が減ってきます。ですから、a=0.5の近傍で、nがある程度大きいとき、はたしてその波底がプラスなのか、マイナスなのかは実に微妙な問題となります。

そこで、この点をより明らかにするために、nを特定し、aが小から大へと変動するとき、波底がどのように動くかを考察してみました。aがマイナスのときは、だいたいどのnに対しても波底はマイナスであって、z=0との交点が存在しています。n=8のとき、b=p/2で、a=0.20595081を越えるとプラスに転じて、a>0.20595081ではz=0との交点は無くなります。b=p/4の右に出来る波底では、a>0.23159954でプラスに転じます。b=0では、a>0.43693194でプラスになります。つまり、このとき、すべての波底がプラスになり、z=0との交点が消滅して零点も存在しないことになります。

n=16として同じ作業をしてみると、b=rp/nの各線の右側に出来る波底がいつプラスに転じるかが判ってきます。n=32でも同じ作業が可能です。これをまとめたのが以下の表です。


波底の交点のなくなるaの値

n= b=0 b=p/8 b=p/4 b=3p/8 b=p/2
8 a= 0.43693194 0.29330397 0.23159954 0.20595081 0.20595081
16 0.51389297 0.40861417 0.36799163 0.35022463 0.34695267
32 0.52620579 0.45847516 0.43491306 0.42455128 0.42199304
64 0.52016589 0.48048842 0.46774405 0.46215481 0.46062899
128 0.512373640.490589040.483952160.481049910.48022307
256


波底の場所はb=0からp/2まで、n個ありますが、表以外の場所は省略しました。

この表の数字より大きいaのところでは交点が存在しないことを示しているので、一見、交点が無くなりそうに見えますが、hk1(x)はnが極大になったときの姿ですから、n=∞のときにどうなるかが重要です。b=0の値で極限値計算してみると、0.51の方向から0.5に近づいて、綺麗に0.5に収束します。つまり、b=0の場所では、a=0.4も、a=0.49も含めて、どのaに対しても最後には交点が生まれることを示しています。波の中央であるb=p/2の値で計算しても、収束の方向は異なりますが、やはり0.5になります。この場所は、一見交点が存在しないように見えますが、最後にはz=0と接することになり、ここでも交点が存在します。その間にある波底は場所により0.5に近づく方向が変化するので、厳密に説明するには、ここで別の計算を入れなければなりませんが、結論を言うと、どれも最終的に0.5に近づきます。

つまり、nの値によっては交点が存在しない場合が多々あるのですが、nの増加により交点が生じてきます。aの値が0.5の近くではnをかなり大きくしないと波底がマイナスになりませんが、そのような場合でも、そのaの値よりも大きな数字を示す場所を見つければ、そのときのnより大きければ波底がマイナスとなり、交点が必ず存在することになります。この作業はあらゆるaとrp/nで可能ですから、a<0.5のすべてのaで、すべての波底がかならずz=0と接するか、交わることが明らかとなります。






■      実部線と虚部線とz=0の線とのそれぞれの交点の位置関係には法則がある

hk1(x) a=-1, n=8 の図
さて、実部波と虚部波は交互に現れて重なることはありません。いつもだいたい同じくらいにずれているように見えます。ずれを計算したところ、値は少しずつ異なりますが、いくつかの法則があるようです。これで零点が存在しない証明が可能となります。

まず、図によって、どういう法則があるかを見てみます。a=-1, n=8の図を見ると気がつきますが、z=0の線上で実部と虚部が交互に交わっていますが、その間隔が同じように見えます。aの値を変えても大きく変化するようには見えません。

a=0.2 n=8の図
そこで、このことを単なる観察ではなく、計算によって説明してみます。


b=r*p/nを基準として、この線の右側で、最初に現れる実部線とz=0の交点をx1とします。次に現れる虚部線とz=0の交点をy1とします。次に実部線とz=0の交点をx2とします。そして、(y1-x1)/(x2-x1)を計算します。この計算結果がn=∞のときに0、もしくは1となると実部と虚部がz=0で交わり、零点が存在することになります。しかし、0でも1でもないなら零点が存在しないことになります。


a<0のときは、ほとんどすぐに0.5に近い値が出てくるので、収束に時間はかかりません。

a>0の場合をa=0.2を材料に説明してみます。まずは最初のb=0の線を基準として計算したところ、n=8のとき、0.60740295, n=16で 0.53084033, n=32 0.50713194, n=64, 0.50111238, n=128 , 0.50014014, n=256 , 0.500017346102となり、0.5に収束しているのが判ります。
0.5ということは、つまりは真ん中で交わっていると言うことであり、零点にはならないことを示しています。

a=0.2
n= b=0 p/8 p/4 3p/8
8 0.6074013 0.6005872 0.6035354 0.5800135
16 0.5308403 0.51240071 0.50889216 0.50411856
32 0.5071314 0.50124641 0.50030961 0.50014755
64 0.5011123 0.50005698 0.50000938 0.50000341
128 0.5001401 0.50001697 0.5000017 0.5000017

p/8, p/4, 3p/8 を基準としたときの計算結果を右表のようにまとめておきました。

値をf(a,rp/8,n)で表すと、f(0.2,p/8,16)=0.51240071 ということです。





a=0.4
n= b=0 p/8 p/4 3p/8
8
16 0.65934347 0.87362476 交点なし 交点なし
32 0.55941224 0.54069138 0.5406266 0.53899297
64 0.51776458 0.50362534 0.50275355 0.50144837
128 0.50351661 0.50004762 0.50003404 0.50001702

a=0.4のときの値も載せておきます。

この表の縦軸を眺めると気が付きますが、nの増加とともに値は限りなく0.5に近づいています。 数学的に表現するなら、すべてのf(a,rp/8,n)において、f(a,rp/8,n)>f(a,rp/8,n*2) が成り立ち、lim[n=2,∞]f(a,rp/8,n)=0.5となっています。

このことは、表の数を増やすとますます明らかになるのですが、これで証明とするのはやや不充分なので、もっと明快な説明を探しています。残念ながらまだ見つからないので、lim[n=2,∞]f(a,rp/8,n)=0.5の証明は諦めて、lim[n=2,∞]f(a,rp/8,n)≠1の証明をしておきます。f(a,rp/8,n)≠0であることはすでに明らかですので、これができれば零点の不存在証明が完成します。


■      f(a,rp/8,n)>f(a,(r+1)p/8,n)である条件

縦軸を比較することで、f(a,rp/8,n)>f(a,rp/8,n*2)であることはすぐに見つけることが出来ます。表の同じ箇所を比較することで、a1>a2ならf(a1,rp/8,n)>f(a2,rp/8,n)であることは問題なく認められると思います。比較が可能であるところでは例外なく成り立っています。さて、横軸を比較すると、f(a,rp/8,n)>f(a,(r+1)p/8,n)であるように思えるのですが、これには例外があり、全体的に成り立っているわけではありません。しかし、例外にはそれなりの条件があり、その場合を除くと、これも全体的に例外なく成り立つ法則であることが判ります。
 
たとえば、a=0.4, n=16で、f(0.4,0,16)=0.65934347 であり、f(0.4,p/8,16)=0.87362476 となっています。これは例外のひとつの事例ですが、f(0.4,p/4,16)では、波底の値がプラスとなり、交点が存在しません。このように波底が上がり、最後にプラスに転じる直前のf(a,rp/n,n)の値は必ず増加に転じて、例外を作り出します。見方を変えると、この現象もまた法則に則っているのであって、交点がなくなるところでは増加し、交点のないところでは必ず減少すると纏めることが出来ます。

上記の「波底の交点のなくなるaの値の表」に載っていますが、n=8を固定すると、b=p/8の波で交点が無くなるのはa=0.29330397であることが判ります。これより小さいと交点が存在するので、その境界線あたりでf(a,p/8,8)がどのような値になるかを計算してみました。すると、f(0.29,p/8,8)=1.2884316, f(0.293,p/8,8)=3.1332770, f(0.2933, p/8,8)=23.5688573 という結果となりました。(y1-x1)が大きくなることはありませんから、つまりは分母である(x2-x1)が小さくなり、最後には点となる直前の現象であることが判ります。

このような現象のないところではすべて例外なくf(a,rp/8,n)>f(a,(r+1)p/8,n)が成り立っています。

さて、a=0.5の近傍ではnを大きくしないと交点が生じないのですが、しかし、nを大きくすると必ず交点が生じることも上記の表から明らかになっています。ですから、b=rp/nのすべての波において、必ずf(a,rp/8,n)>f(a,(r+1)p/8,n)が成り立ちます。また一方で、a1>a2ならf(a1,rp/8,n)>f(a2,rp/8,n)なのですから、すべてのf(a,rp/n,∞)はf(0.5,0,∞)より小さいことになります。

n= a=5.0 極限値
8 交点なし
16 1.7584119
32 1.1946201 0.639747375
64 1.0833409 0.972007372
128 1.0394052 0.995464136
256 1.0192486 0.999091384
512 1.0093698 0.999490924
1024


そこで、f(0.5,0,∞)を計算することにします。これは極限値計算となりますが、a=0.5として、n=512まで計算してあります。これをもとにしてn=∞の値を計算してみると、限りなく1に近づくのが判ります。つまり、f(0.5,0,∞)=1ということです。

f(0.5,0,∞)=1なら必ず、a<0.5であるaにおいて、f(a,0,∞)<1となります。そして、f(a,0,∞)<1とは、f(a,rp/n,∞)<1ということになります。一方で、f(a,rp/n,∞)≠0でもあるので、a<0.5においては、零点がひとつも存在しないことが証明されました。







第2部の2の5    a>0.5において零点が存在しないことを証明します。
hk1(x) a=2.0 の図


さて、これで証明が終わったわけではありません。まだa>0.5が残っています。a>0.5ではhk1(x)の姿が変るので、別の論法を使って証明することになります。

なお、a>0.5では、hk1(x)の値が1に近いので、hk1(a+0i)で割る意味はなくなります。しかし、a<0.5との比較が必要なときもあるでしょうし、プログラムの変更も面倒です。それで、以下のhk1(x)の値は、a<0.5と同様、hk1(a+0i)で割ったものを使っています。

a>0.5においては、nを増大させるとしだいに波が消え、平らな形になります。しかも、実部と虚部の距離が離れ、交点が存在しなくなります。こうなると誰にでも零点が存在しないことが判るので証明は必要ないように思えるかもしれません。たしかにa>1.0では零点が存在しないことは明らかです。しかし、a=0.5近傍では、実部線と虚部線は近づいているし、nの値によっては交わることがあります。その場合にも零点がないことを示す必要があります。


そこでまずは、a<0.5で述べたhk1(x)の特徴のいくつかはa>0.5でも成り立つことを確認しておきます。波は消滅しても、上下の変動が消えるわけではありません。その変動はpを基準としてまったく同じ形で繰り返されます。また、実部はb=p/2で左右対称、虚部は左右と上下を反転させるともとの形に戻ります。これもa<0.5と同じです。 また、a=0.5近傍では実部線も虚部線もz=0の近くにあります。

ただ、そのあとの形は違います。nが増えると波頭が増えるのですが、aの増加とともに波頭が見えにくくなり、やがては消えてしまいます。また、虚部線はaが増加してもz=0あたりにありますが、実部線は、aの増加と共に1に向かって移動し、最終的には1に張り付いてしまいます。

ここでも実部線の中央の高さは波の影響を受けず、任意のaに対して一定の値に収束します。その値を求める数式がありますので紹介しておきます。

実部中央 (b=p/2) の高さをz(a)で表わします。(注   hk1(a+0i)で割った数値を使っています。)するとz(a)は以下のような式になります。a<0.5のときとよく似た式となっています。計算したプログラムはass009.javaです。

d=(√2-1)/(√2+1) とすると、 z(a) = 1 - √2(√2-1)/2^a + 2d/4^a - 2d(2√2+1)/8^a + 6d/16^a - 2d(4√2+1)/32^a + 14d/64^a - 2d(8√2+1)/128^a + 30d/256^a - 2d(16√2+1)/512^a + 62d/1024 - ...

この続きがどうなるかはお判りいただけると思います。

この式で計算すると、 lim[a→0.5]z(a)=0 となり、a=0.5で高さは無くなりますが、0.5でなければ必ず高さがある、つまりz=0ではないことを示しています。


■    実部の値はすべてプラスになる    の図


さて、実部の値はプラスになる場合が多く、なかなかz=0と交わりません。z=0と交わらなければ零点は存在しません。しかし、a=0.5の近傍では波の場所とnの値によっては交わる場合もあります。しかし、nを増加させるとその交点もすべて消えてしまうようなので、そのことを示すことが出来れば、証明が完了したことになります。

そこでまずは、どのような場合にz=0と交わるか、交わらないかを調べます。a) ひとつは、p/2の場所はnが偶数のとき、波頭のひとつになり、その高さは先の式で求めることが出来ます。その高さを基準として、その他の波底がどの高さにあり、プラスかマイナスかを調べてみます。もしマイナスのところがあるなら、そのあたりにz=0との交点が存在することになります。

b) もうひとつは、b=0を基準とする波底はしばしばマイナスの値をとり、z=0との交点が出現します。b=0を基準とする第2の波底も、第3の波底も、第1ほどではないにしても、マイナス値をとる場合があります。この場合、nの増加とともに次第に波底が上がり、ついにはプラスになるのですが、それを詳細に示すことにより、この場合にも交点が存在しないことを示すことが出来ます。

以上の方針のもとに、a)とb)を具体的数値をあげて説明してみます。

波底を計算するためにはb=0からb=pの間にあるrp/n線を基準とします。その線より右にある波底の値を求め、それとp/2のときの高さとの比をz(rp/n)とします。


ass10  図

右の図はa=0.51のとき、nによって波底の値がどのように変化するかを示した図ですが、z(p/2)に対する比としては徐々に増加して、最終的には1に張り付いてしまいます。
z(p/2)は0.5の直前までz=0にはなりませんから、a=0.51ではb=0の近傍を除いて、すべての波底はマイナスにならないことが判ります。

a=0.501のときも同じで、p/2の高さとの比は、nの増加とともに増加し、b=0の近傍を除いて、0やマイナスになりません。ですから、z(p/2)が零にならないのですから、その他のrp/nの波底もマイナスになることはなく、z=0との交点が生じることもなく、零点が存在することもありません。



■    b=0を基準とした波底       の図


さて、以上のことから、b=0を除いたrp/nの波では零点が存在しませんが、b=0を基準とした場合も零点が存在しないことを証明します。

b=0を基準とした実部の波底は、a=0.5近傍ではだいたいマイナス値になっています。これは実部がb=0近傍で必ずz=0と交わることを意味しています。しかし、この交点は、nの増加とともに波底が上昇するので、ついには消滅してしまいます。





ass033  図
そのことを明らかにするために、nを固定して、a=4.9からa=5.3あたりまでの間で、第1波底がどこでz=0と接しているかを調べてみます。右の図は、n=32、n=64、n=128のそれぞれの場合、aに対して波底の高さがどのようになるかを計算した結果です。aが増加するとともに波底も一貫して上昇しているのが判ります。n=32のとき、z=0と接するかたちになるのはa=0.52620579です。n=64のとき、z=0と接するのは0.52016589です。それより右の値では波底の高さはプラスとなり、交点は存在しないことになります。

注   この図は、グラフが同じ図の中に入るよう、値をnで割った数値を使っていますが、z=0との交点に変動はありません。交点は太丸で示されていますが、これがnの増加とともに0.5に近づいているのが判ります。計算はass013.javaを使いました。

n= a= 極限値
8
16
32 0.52620579
64 0.52016589 0.489233241
128 0.51237364 0.464820085
256 0.50686057 0.467778627
512 0.50361529 0.477398353
1024 0.50185632 0.485902088
2048 0.50094066 0.491725897


z=0と接するときのaの値をf(n)で表します。このaを計算で求めると右図のような結果となりました。 これにより、nの増加につれてaは0.5に近づくことが判ります。0.5が極限値ということは、その値が零ですから、 0.5よりも大きいaの値においては、その第1の波底は必ずプラスの値を取ることになります。プラスとは交点が存在しないことを意味していて、交点がなければ零点も存在しないことになります。

第2の波底に対しても同じ計算をすることができます。nを固定したとき、a=0.49からa=0.53あたりまでの任意のaに対して、第2の波底の高さを計算します。すると、aの増加とともにその高さが次第に上昇していることが判ります。そして、それがプラスに転じる場所をf(n)とします。第1の波底についてやったのと同じ計算ですが、その結果は次のようになりました。

f(32)=0.50092601;
f(64)=0.5133027;
f(128)=0.5118745;
f(256)=0.50778027;
f(512)=0.50446361;


ここでもnが大きくなると0.5に近づくことが判ります。

第3の波底についても同じ結果が出ています。結局、b=0の近傍でもnの増加とともに交点は消滅し、零点が存在することがありえないことが証明されました。


以上を纏めると、a>0.5においては、nが極大化するとすべての波底がプラスになり、交点が消滅し、それゆえ零点も存在しないことになります。

a=0.5においては、b=0で零点が存在するように見えますが、これは証明の対象外なので、ここではその可能性に言及するだけにしておきます。




■    補足: hk1(a+0i)で割らなかった場合

以上の証明ではhk1(a+0i)で割った値をもとに分析し、説明したのですが、割らずに観察すると少し違ったhk1(x)の姿が見えてきます。証明の是非には関係しませんが、hk1(x)理解のためには重要なことなので、ここで補足しておきます。

hk1(a+0i)で割らないときの値は、巨大になるのでイメージとしては捕まえにくくなりますが、hk1(a+0i)で割ったときと本質的には何も違いがありません。hk1(a+0i)で割ったときの分析に使った図を、縦方向にhk1(a+0i)倍すればよいだけのことです。符号は同じですから、何の違いもありません。

asj0.5_8の図
とは言うものの、a=0.5の近傍では、割らなくても値はある程度の範囲内に収まりますし、一番大きな問題は実部波の振動の基準線が割った場合と、割らなかった場合で異なることです。証明には関係ないとしても、hk(x)理解には関係しますから、そのことを無視した証明は誤解を与える危険性があります。ですから、割らない場合でも上記の証明で差し支えないことを、a=0.5の近傍を材料に再度説明しておきます。

nと波頭の数の関係、繰り返しの基準点であるpについては、割った場合とまったく同じです。異なるのは縦軸、つまりz軸の値なので、波の高さに関係するところでは修正が必要になります。

右図を見ていただければ判りますが、実部波の振動の基準線が、割らなかった場合では1であるのに対し、割った場合は小さくなっています。しかし、図としてはよく似ています。




asj0.5_16の図
n=16のとき、割った場合は波の基準線がより零に近づき、高さも零に近づくのに対し、割らなかった場合は基準線が1のまま、高さも維持されたままです。

n=32では、n=64では・・・、と説明したいのですが、スペースの関係上やむを得ず省略します。nが大きくなると、基準線が1のまま波のうねりが高くなって、すべてのrp/nの波底がマイナス、もしくはz=0と接触するようになります。


ですから、割った値で分析したとき、z=0と交わると判断されるときは、割って無くても同じくz=0と交わっているのであって、割った値で交わらないときは、割ってない値でも交わっていません。

また、横軸の値は同じですから、z=0と交わる場合、その実部交点x1,x2と、虚部交点y1の値の比、つまり (y1-x1)/(x2-x1)の値はまったく同じとなります。

それゆえ、hk1(a+0i)で割った値での先の分析と証明は、そのままhk1(x)の証明として受け入れて差し支えないことが判ります。







第2部の2の6    hk2(x)の証明


さて、以上でhk1(x)の証明は終わりました。結構時間がかかりましたが、予想通りの結果を得ることが出来て満足しています。 あとは、その延長ですから、同じやり方を適用すればよいことになります。ただ、計算に時間がかかるのと、hk1(x)と同じ結果になることが明らかなので、ここでひとまずこの証明を公表することにし、近いうちにhk2(x)とそれに続く部分の計算結果を追加することにします。

一応、計算結果以外の説明を載せておきます。

hk2(x)とは、
hk2(x) = 1 + (√3-1)/3^x - (√3-3)/9^x + 3(√3-1)/27^x - 3(√3-3)/81^x + 9(√3-1)/243^x - 9(√3-3)/729^x ...
のことです。この式も値が大きくなるので図を書くことが出来ません。ゆえに、hk1(x)でやったように、 hk2(a+0i)で割ることにより、値を1以内の数にして、観察しやすくします。その上で、a<0.5とa>0.5と分けて、それぞれ別々に証明することになります。

au0.0_4c の図












■    a<0.5のとき

p=5.71920173476025 という点がhk1(x)と異なりますが、形は同じです。b=0からb=pまでがひとつの単位で、波が繰り返されます。実部は左右対称、虚部は上下、左右を反転させるともとに形になります。これはhk1(x)のときと同じです。

そして、hk2(x)においても、実部波と虚部波はリズムよくずれていて、それは実部とz=0の交点の間に虚部の交点が来る形になっています。これはa<0.5のほとんどの波において成り立つ特徴で、特にnが∞のとき、つまりhk2(x)においては完全に真ん中に来ています。これを示せば、零点が存在しないことの証明となります。


au02_16 の図
ただし、これをそのまま証明するのは時間がかかります。当面必要なのは、零点が存在しないことですから、実部波の真ん中に虚部波が来ることの証明ではなく、以下の方針のもとで証明してみることにします。

右図で実部と虚部がz=0と交差していますが、実部線とz=0の交点をx1, x2 とします。虚部線とz=0の交点をy1とします。 (y1-x1)/(x2-x1)を計算し、それがaとrp/nとnに対してどのような値を取るかを調べます。rp/nとはb=r*p/nの線を基準として、その右側に生じる実部の下向きの波に対して、(y1-x1)/(x2-x1)を計算したことを示しています。結果の値はf(a,rp/n,n)で示します。

そして、f(a,rp/n,∞)=1, もしくは f(a,rp/n,∞)=0 であるなら零点が存在することになるので、逆にf(a,rp/n,∞)≠1 かつ f(a,rp/n,∞)≠0 であることを示せばよいことになります。


■    hk2(x)において、a>0.5に零点が存在しないことの証明

a>0.5もhk1(x)と同じです。つまり、a>0.5では実部線とz=0が交わらないので、零点存在の可能性はありません。そのことは、a=0.5近傍を除いて、図を見てもわかる程度ですが、a=0.5近傍ではnの値によっては交わることもあるので、しっかりした証明が必要となります。証明の方法は、a=0.5の近傍でもnを増加させるとz=0との交点が消滅することを示すことです。ここで注目するのはおもに実部線だけです。






第3部    結論、および、まとめ


以上のことから、zeta(x-0.5), hk(x)のどちらもa=0.5、b=0以外には零点が存在しないことが証明できました。 k(x) = zeta(x-0.5) * hk(x) ですから、k(x)もa=0.5, b=0 以外には零点が存在しないことになります。

証明終わり。







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