リーマン仮説(リーマン予想)の証明 ver14.2



ver14の証明は今までとはかなり異なる発想で取り組んでいます。微分を使うのはやや不本意ですが、この際仕方ありません。論理的にはこれで証明になっていると思うのですが、どうでしょうか。間違いがあるなら遠慮なくご指摘いただけると幸いです。

以前の証明で用いた「第2部」は分割して「第2部」、「第3部」としました。今回おもに新しくしたのは以前の「第3部」ですが、新しい名称では「第5部」となっていますのでご注意下さい。以前の第2部の部分はほとんど修正してありません。特に b=0を除いて、0=<a<=1 以外のところに零点がないことの証明はうまくいっていると思います。これについてはすでに他の人が証明しているとのことですが、具体的証明方法が私のと同じなのかどうかは知りません。とにかく、私のような証明方法もあるということを認めていただければと思います。今回のver14証明の本体は第5部のところに載せてあります。すでにおつきあいいただいていた方は第4部と第5部を見ていただければと思います。






第1部      証明の概略   (このページの続きに載せてあります。)

第2部   k(1-s)/k(s)≠0 の証明
第3部   a>1、0>a での証明


第4部   実零線・虚零線と零点の数

第5部   k(s)を微分する

第6部   失敗したり、未完成に終わった証明の記録 (掲載予定)











第1部      証明の概略


■1の1■      初めに


リーマン仮説(予想)証明については、目くら蛇に怖じずの精神で頑張りましたが、やっぱり難しいですね。ver12までトライしましたが、ver番号を付けなかった失敗例もたくさんあるので、アイデアとしてはかなりの数をトライしたと思います。そのうちのひとつかふたつは今でもまだ有望だと思うのもありますが、ほとんどすべて失敗しました。しかし、最後の最後に、何とか証明に辿り着けたのはまったく幸運だったとしか言いようがありません。神に感謝。

以前書いた「証明の概略」はリーマン仮説をまだ良く知らない人のためにと思って作ったページですが、私自身がリーマン仮説についてよく判っていないことがだんだんわかってきました。(〜〜)ですから、ここでは説明というより雑談になるのですが、どこに問題があるかをなるべく明らかにしておきたいと思います。




■1の2■      リーマン仮説なのか、リーマン予想なのか?

日本では「リーマン予想」という言い方が普通ですが、英語では「Riemann Hypothesis」となっています。直訳すると「リーマン仮説」です。どこから「リーマン予想」という単語が生まれたのでしょうか。「予想」は英語で expectation, conjecture などで、数学としては相応しい単語ではありません。なので私としては「リーマン仮説」という言い方を使うことにしました。




■1の3■      リーマン仮説の定義


リーマン仮説が何であるかは自明であると思っていましたが、私の理解が少し違っていたかもしれません。おそらく「仮説」と言うか、「予想」と言うかで理解が異なるのでしょうが、ウィキペディアによると、「ζ(s) の自明でない零点 s は、全て実部が 1/2 の直線上に存在する。」と説明されていました。誰に教わったのか忘れましたが、私の理解では
「自明でない零点はa=0.5以外に存在しない。」というものです。同じことのように聞こえるかもしれませんが、証明の手順が異なります。

重要な相違点は、「a=0.5以外に存在しない」ことが証明されても、それがただちに「a=0.5上に存在する」証明にはならないことです。ひとつも存在しないかもしれないからです。

「a=0.5上にリーマン零点が無限に存在することはすでに証明されている」との指摘を受けています。その証明の中身はまだ知りませんが、そうなのかもしれないと思います。しかし、そのこととリーマン仮説の定義とは関係ありません。論理の手順として、不存在を証明しただけで証明が完成するか、それとも、不存在証明のあとに存在証明を付け加えるべきかと言うことです。存在証明はそれほど難しいことではないので、結局はほとんど同じことになるのですが、しかし、やはり定義としてはこのあたりのこともはっきりさせておかなければなりません。

定義は、真理問題ではないので、どちらが正しいと言うことではありません。どちらがより一般的かということなのでしょう。とするとウィキペディアの説明のほうが一般的となります。ただ、私としては、「a=0.5以外に零点はない」という理解で進んできたので、ver14の証明では不存在証明のほうに焦点を合わせています。そして不存在証明のあとで、付録のような形で存在証明を付け加えることで一般的理解に合わせておきました。というわけで、この証明の中では不存在証明をリーマン仮説証明と呼ぶ場合が多いことをご了承下さい。





■1の4■      ゼータ関数とは?

それから、結構大きな問題はゼータ関数の定義です。当初、私は単純にΣ1/n^rのことだと理解していましたが、何人かの人に指摘していただき、Σ_[n=1,∞]Σ1/n^r であることが判りました。単純な理解のほうが判りやすいとも思いますが、数学者の方々がそう理解しているなら仕方ありません。

しかし、問題はさらに続きます。このゼータ関数はリーマン零点を計算する式としてのゼータ関数ではないということです。リーマン零点はゼータ関数を解析接続して出来た式を零とする点ですが、ときには解析接続後の式をゼータ関数と呼ぶ場合があります。これは混乱の元です。解析接続前の式と後の式では内容が異なるのですから、同じ名前で呼ぶのは問題だと思います。私としては混乱を避けるために解析接続前の式をゼータ関数と呼び、後の式をk(s)と呼ぶことにしています。

もっとも、以上の説明はあとから付けたもので、私は解析接続の内容をまったく知りませんし、その結果の式が何であるかも知りません。ただ、私が別のテーマで研究していたk(x)がたまたま解析接続後の式と同じである可能性があるので、便宜上、上記のような説明をさせていただきました。間違いのない説明だと思いますが、保証の限りではありません。

k(s)を使ったリーマン零点の計算方法については別ページで説明してありますが、それは最初の頃に書いた説明なのでかなり素朴な内容になっています。判りにくいとの指摘も受けたので、なるべく判りやすくなることを願って、ここに再度解説をしておきます。




■1の5■    リーマンの零点の計算方法


k(x)を発見したきっかけは、ゼータ関数が正の実数のとき速やかに収束させるにはどうするかを研究したことです。Σ1/n^x=k(x) とすると、k(2)=1.64493、k(4)=1.08232 であることはすでに知られています。計算プログラムを作ってk(1.5)を計算したところ、x=10まで計算して1.99533 となり、なかなか収束してくれません。そこで収束の過程を調べたところ、
Σ1/n^x = k(x) - 1/(x-1)/n^(x-1) + 1/2/n^x - x/12/n^(x+1) + 0 + x*(x+1)*(x+2)/6!/n^(x+3) + 0 + .....
という式を見つけました。当時たまたまsu(r)という数列を研究していたのですが、上記の式をsu(r)で綺麗に表現できるのでとても嬉しく思いました。このsu(r)がベルヌーイ数とほとんど同じものなのですが、ベルヌーイ数を当時は知らなかったので第5の広場 2)のような説明になりました。

これをベルヌーイ数で表記すると以下のようになります。

Σ1/n^x = k(x) - B(0)/(x-1)/n^(x-1) - B(1)/n^x - B(2)*x/2!/n^(x+1) - 0 - B(4)*x*(x+1)*(x+2)/4!/n^(x+3) - 0 - .....

xが1以下やマイナスでもこの公式が使えるということに気がついたのは後のことですが、xが何であれ速やかに結果が出てきます。たとえば、k(0)=-0.5 、k(0.5)=-1.4603545088... となります。複素数は私の研究対象外だったのですが、あることがきっかけで複素数に拡大してみたところ、リーマン零点と同じ場所に零点が見つかりました。いくつもの零点が一致するのですから、複素数に拡張したk(s)こそ接続解析後の式そのものだと言って間違いないと思います。

s=a+bi としてk(s)を表記すると次のようになります。
Σ1/n^s = k(s) - 1/(s-1)/n^(s-1) + 1/2/n^s - s/12/n^(s+1) + 0 + s*(s+1)*(s+2)/6!/n^(s+3) + 0 + .....

これをもとにしてどのようにリーマン零点を計算するか・・・ですが、k(s)の計算式は長いので、それを分割して Σ1/n^s部分をzt(s,n)、残りの部分をber(s,n)とします。つまり、k(s) = lim_[n→∞] { zt(s,n) + ber(s,n) } となります。

zt(s,n) = 1 + 1/2^s + 1/3^s + . . . + 1/n^s
ber(s,n) = Σ_[r=0,∞] B(r)*(s-1+r)!/r!/(s-1)!/n^(s-1)/n^r
となります。

n^s=n^a*n^bi です。n^bi = cos(b*ln(n)) + i * sin(b*ln(n)) です。1/n^bi は分子分母にcos(b*ln(n)) - i * sin(b*ln(n)) を掛けると分母が1となるので、1/n^bi = cos(b*ln(n)) - i * sin(b*ln(n)) となります。

ですから、zt(s,n)の実部は 1 + cos(b*ln(2))/2^a + cos(b*ln(3))/3^a + cos(b*ln(4))/4^a + ... + cos(b*ln(n))/n^a  となります。虚部は - { sin(b*ln(2))/2^a + sin(b*ln(3)))/3^a + . . . + sin(b*ln(n))/n^a } となります。

zt(s)の実部式をzt_re(a,b)、虚部式をzt_im(a,b) とします。すると以下のように表記できます。

zt_re(a,b,n) = 1 + cos(b*ln(2))/2^a + cos(b*ln(3))/3^a + cos(b*ln(4))/4^a + ... + cos(b*ln(n))/n^a  

zt_im(a,b,n) = - { sin(b*ln(2))/2^a + sin(b*ln(3)))/3^a + . . . + sin(b*ln(n))/n^a




■1の6■      ber(s,n) の計算方法

ber(s) = Σ_[r=0,∞] B(r)*(s-2+r)!/r!/(s-1)!/n^(s-1)/n^r
であることはすでに述べています。ベルヌーイ数も再掲しておくと、B(0)=1, B(1)=-1/2, B(2)=1/6, B(4)=-1/30, B(6)=1/42, B(8)=-1/30, B(10)=5/66, . . . ということで、詳しくは「ベルヌーイ数」を参照してください。

(s-2+r)!/(s-1)! を複素数として計算するのは面倒です。r=0のとき1/(s-1), r=1のとき1, r=2のときs, r=3のとき(s+1)*s, r=4のとき(s+2)*(s+1)*s, . . . と変化します。そこで計算がしやすいように、ra(r), rb(r)を定義することにします。

(s-2+r)*(s-2+r-1)*(s-2+r-2)*....*(s+1)*sの実部をra(r), 虚部をrb(r) と定義します。つまり、

(s-2+r)*(s-2+r-1)*(s-2+r-2)*....*(s+1)*s = ra(r)+rb(r)*i となります。

A=a-1, H=A^2+b^2 とすると、ra(0)=A/H, rb(0)=-b/H です。ra(1)=1, rb(1)=0 はすぐ判ります。r=2 から先は面倒な計算が必要になります。

そこで計算過程を明確にするためにka(n,r)を定義します。このka(n,r)は (n+1)*(n+2)*(n+3)* ... を展開するときに現れる係数です。

ka(0,0)=1,
ka(1,0)=1, ka(1,1)=1,
ka(2,0)=1, ka(2,1)=3, ka(2,2)=2,
ka(3,0)=1, ka(3,1)=6, ka(3,2)=11, ka(3,3)=6,
ka(4,0)=1, ka(4,1)=10, ka(4,2)=35, ka(4,3)=50, ka(4,4)=24,
以下略。
ka(n,r)は、ka(n,r) = n*ka(n-1,r-1) + ka(n-1,r) として計算することも出来ます。

たとえば、r=4のとき、

(a+bi)^3, (a+bi)^2, (a+bi), を展開し、次のようにka(n,r)を掛けて並べます。
ka(2,0) * { a^3+3a^2(bi)+3a(bi)^2+(bi)^3 }
ka(2,1) * { a^2+2a(bi)+(bi)^2 }
ka(2,2) * { a+(bi) }
この式の実部を総計したものがra(4) 虚部を計算するとrb(4) となります。
この場合、ka(2,0)=1,ka(2,1)=3,ka(2,1)=2, ですから、
ra(4)=a^3-3ab^2+3a^2-3b^2+2a, rb(4)=3a^2b+6ab+2b-b^3, となります。

r=5 ならば、
ka(3,0) * { a^4+4a^3(bi)+6a^2(bi)~2+4a(bi)~3+(bi)~4 }
ka(3,1) * { a^3+3a^2(bi)+3a(bi)^2+(bi)^3 }
ka(3,2) * { a^2+2a(bi)+(bi)^2 }
ka(3,3) * { a+(bi) }
この場合、ra(5)=a^4+6a^3-6a^2b^2+11a^2+6a-18ab^2+b^4-aab^2
rb(5)=4a^3b-4ab^3+18a^2b-6b^3+22ab+6b
となります。

r=6 ならば、
ka(4,0) * { a^5+5a^4(bi)+10a^3(bi)^2+10a^2(bi)^3+5a(bi)^4+(bi)^5 }
ka(4,1) * { a^4+4a^3(bi)+6a^2(bi)~2+4a(bi)~3+(bi)~4 }
ka(4,2) * { a^3+3a^2(bi)+3a(bi)^2+(bi)^3 }
ka(4,3) * { a^2+2a(bi)+(bi)^2 }
ka(4,4) * { a+(bi) }

ra(6)=a^5-10a^3b^2+5ab^4+10a^4-60a^2b^2+10b^4+35a^3-70ab^2+50a^2-50b^2+24a
rb(6)=5a^4b-10a^2b^3+b^5+40a^3b-40ab^3+105a^2b-35b^3+100ab+24b

以下、同じやり方でどこまでも計算できます。ただし計算時間が掛かるので、実際はプログラム化して処理します。


さて、以上のやり方で整理したber(s,n)のうち実部について纏めたものをber_re(a,b) とします。 P=cos(b*ln(n)), Q=sin(b*ln(n)), A=a-1, H=A^2+b^2 とすると次のように表記できます。

ber_re(a,b,n) = (A*P-b*Q)/n^A/H - P/2/n^a + B(2)*(P*a+Q*b)/2!/n^2/n^A + B(4)*{P*ra(4)+Q*rb(4)}/4!/n^4/n^A + B(6)*{P*ra(4)+Q*rb(6)}/6!/n^6/n^A +....

ber_re(a,b,n) = Σ_[r=0,∞] B(r) * (P*ra(r) + Q*rb(r)) /r!/n^r/n^A

虚部について纏めたものをber_im(a,b,n) とします。

ber_im(a,b,n) = (-b*P-A*Q)/n^A/H + Q/2n^a + B(2)*(P*b+Q*a)/2!/n^2/n^A + B(4)*(P*rb(4)+Q*ra(4))/4!/n^4/n^A + B(6)*(P*rb(6)+Q*ra(6))/6!/n^6/n^A + ....

ber_im(a,b,n) = Σ_[r=0,∞] B(r) * (P*rb(r) + Q*ra(r) /r!/n^r/n^A


ber(s,n)の計算式の中にベルヌーイ数が登場します。この数はあるところまでは収束します。しかし、そのうちに急激に増加し始め、ついには振動・発散してしまいます。ですから、これを全部計算すると結果が出ません。そこで、適当なところで計算をうち切って、zt(s,n)の計算結果と合計してk(s)の答えを得ます。「そんないい加減な・・・」と言われてしまうでしょうが、k(s)=lim_[n→∞] zt(s,n)+ber(s,n) の計算過程にあるn→∞でベルヌーイ数の振動・発散が吸収されるので、これで何ら問題なく正しい答えを得ることが出来るのです。

計算精度が必要な場面では結構面倒な議論が必要になりますが、一般的にはrをどこで切っても結果に差はありません。私の場合はr=n*2あたりで切ることにしています。

これをもとにプログラムを作って計算したところ、実部の零点は、0.81954532942, 14.1347251421, 14.5179196271, 20.6540449693, 21.0220396387, 25,0108575801, 25.4915082146 と並んでいることが判りました。

虚部の零点を計算しましたが、3.43621822608, 9.66690805613, 14.1347251417, 17.8455995404, 21.0220396387, 23.1702827011, 25.0108575801, 27.6701822176, と並んでいました。同じ値のところがリーマン零点となります。





■1の7■      複素数における零点の法則

さて、リーマン仮説証明のためには複素数の性質や法則を知っておく必要があります。

複素数a+biが零であるとは、a=0 かつ b=0 ということです。そして、複素数zが零の時、任意の複素数x に対して、x*z=0 となり、x/z は計算不能となるのは実数の時と同じです。交換法則や結合法則も成り立ちます。そして、x*y=0 の時、 x=0 もしくはy=0 であることも実数と同じです。x≠0 かつ y≠0 のとき、x*y≠0 であることも実数と同じです。

また、(c+di)/(a+bi)において、a+bi=0なら、無限大になるというのが実数での結論ですが、複素数では、分子・分母に(a-bi)を掛けて、(c+di)*(a-bi)/(a^2+b^2)という形に導きます。分子は(ac+bd)+(ad-bc)*i となります。a+bi=0ですから、a=0, b=0 なので、分子も零となり、0/0という結論になります。ですから、必ずしも無限大になるとは限りません。

x^2も、実数ならば必ずプラスの値を取りますが、複素数ではx=a+bi ですから、x^2=(a^2-b^2)+2abi となり、マイナスになる可能性もあります。

なお、複素数の表記法ですが、a+bi のことを(a,b)と書くことも出来るとのことなので、適宜そのようにしたところもあるので、ご了解ください。




■1の8■      複素空間で複素数の動きを調べる

実数関数ではXY座標を使って関数の形を調べます。私もXY座標の威力に感心した人間のひとりで、これを発案したデカルトを深く尊敬しています。XY座標は、数学の本質を変えるものではありませんが、これにより数学を判りやすくすると言うことにおいて絶大な貢献をはたしました。数学史の本を開けてみると、このXY座標の発案についての記述があまりないのですが、これについては是非触れて欲しいと思います。

さて、XY座標と同じアイデアを複素数にも導入したいのですが、複素関数では、x、y のそれぞれにa, b という二つの要素があり、合計4つの要素を考えなければなりません。しかし、平面で使えるのは2つ、空間として捉えても3つしか扱えません。何かよい方法はないだろうかと模索しているのですが、なかなかこれと言ったものが見つかりません。やむを得ず、ここでは複素空間というアイデアを使うことにします。

複素空間は、XYZ座標と同じことですが、ただ、ふたつのXYZ座標を重ねて理解するという特徴があります。つまり、複素関数のxには(a1, b1)という要素があるので、a1をX軸、b1をY軸として、平面全体をa1+b1*i と対応させます。xが定まると、それに対応している平面上の点が定まることになります。さて、yにもふたつの要素があるので、(a2, b2) と表現します。このa2とb2をZで対応させます。つまり、yの実部であるa2を意味するZ座標と、虚部のb2を意味するZ座標のふたつを想定するのです。これで、複素数x, y がXYZ座標と対応関係を持つことができるようになります。

ひとつの関数にふたつの空間を想定するのはやや不便ですが、いまのところ仕方ありません。これを使って複素関数の姿をなんとか捉えてみたいと思います。

s=a+bi のaをX軸、bをY軸とするので、XY平面をab平面と呼ぶことがあります。また、Z軸にはz1,z2が対応していますが、単にzと表記する場合があることをご了解下さい。





■1の9■      リーマン零点とは
a+biの図

さて、k(x)を複素数に拡大してk(s)とし、s=a+bi 、k(s)=z1+z2*i と理解します。k(s)が零となるのが零点ですから、z1=0 かつ z2=0 ということです。これを視覚的に理解するために、まずはXYz1座標においてz1=0となるようなa, b を探します。そのようなa, b をXY座標で表し、複素平面図を描いてみます。これを実零線と名付けます。また、XYz2座標でも同じようにz2=0となるような図を色を変えて描いてみます。これを虚零線と名付けます。

そのふたつを重ねたとき、その交点がz1=0, z2=0 となっているので、そこが零点であることが判ります。右図は、まだ未完成ですが、完成図が見たい方は「リーマン仮説を納得する方法」のページをご覧ください。完成図はあまりに線が多すぎるので、ここでは未完成の図のままにしておきます。この図を見ると、実部と虚部の交点がa=0.5の線上にあることが判ります。

零点は、b=0 つまり実数の線上にもあります。この零点のことを「自明の零点」と呼ぶそうです。英語では the trivial zeros となっていました。ずいぶんニュアンスが違いますね・・・・。それはそれとして、「自明でない零点(the non trivial zeros)はa=0.5以外に存在しない。」ということがリーマン仮説の内容ですから、それを証明することがここでの目標になります。

なお、複素数においては、実部が零となる点と虚部が零となる点があり、それらを零点と呼ぶこともありますが、この証明ではそれぞれ「実部の零点」、「虚部の零点」と呼び、どちらも零のところは「リーマンの零点」もしくは「零点」と呼んで区別しています。ただ、文脈上明らかなときは「実部のみの零点」を「零点」と呼ぶこともあるので、そのあたりは臨機応変に解釈していただければと思います。




■1の10■      k(s)=f(s)*g(s) となるf(s), g(s) を見つける

さて、リーマン仮説を証明するやり方として最初にトライした方法は、k(s)=f(s)*g(s) となる f(s), g(s) を見つけることです。これは結果的に失敗というか、作業の途中で諦めて、今回は別のやり方でトライしています。ただ、大変魅力的方法であることは変わりませんので、少しだけ紹介しておきます。

実数の場合、z≠0を証明するためには、z=x*y の式に於いて、x≠0 かつ y≠0 を証明することになります。これをそのまま関数に応用し、f(x)とg(x)がともに零とならないことが証明できれば、それがk(x)が零にならない証明となります。複素数関数でも同じことです。

そこで、k(s)=f(s)*g(s)となるf(s), g(s)を探したのですが、最初に見つけたのは、k(s)=zt(s-0.5)*hk(s) という式でした。

zt(s-0.5)=Σ(1/n^(s-0.5) で、 hk(s) = 1 + (√2-1)/2^s + (√3-1)/3^s - (√2-2)/4^s + (√5-1)/5^s + ... という式です。

これは、zt(s-0.5)も、hk(s)も綺麗な式に因数分解できるので、とても魅力的でしたが、証明としてはうまくいきませんでした。




■1の11■      k(1-x)/k(x) = x! *2*cos(pi*x/2) / { x*(2*pi)^x }

ここからが第2部となります。

そこで、さらに別の式を求めて彷徨ったのですが、k(s)=f(s)*g(s) の反省から、x<1 で収束する式を見つけなければならないことが判りました。そういう方針のもとに探していると、k(1-x)/k(x) = x! *2*cos(pi*x/2) / { x*(2*pi)^x } という式を見つけました。これは近似式ではなく、まったくのイークォルですから、複素数に拡張して使うことが出来ます。

k(1-s)/k(s) = s! *2*cos(pi*s/2) / { s*(2*pi)^s }  となります。ここに、s! という複素数階乗が登場しますが、これについては私自身の学びが足りないので、充分な説明は出来ません。ただ、k(s)は計算可能なので、s!は計算可能となります。ですから、この式を複素数階乗の定義として使うことが出来るはずです。これで今のところ矛盾無く計算できるので、この証明では一応、これが正しいとの前提で進めさせていただきます。

この式を使ってk(1-s)/k(s)≠0を証明することができます。途中で、マイナス階乗の公式などを使いますが、これについては「証明の第2部」を参照してください。




■1の12■      a>1 、0>a に零点がないことを証明します。

これが第3部となります。

さて、証明のひとつのステップとして、まずは a>1 、0>a に零点がないことを証明しておきます。これについては、k(s) = 2^s/(2^s-1) * 3^s/(3^s-1) * ..... という式を使います。これは良く知られた式とのことで、a>1 で成り立ちます。この右辺の項目のそれぞれが零にならないことはすぐに証明できます。次に複素数をベクトルとして捉え、複素数の絶対値がベクトルの長さになるので、それを考慮した上で、零にならない項目を無限に掛け合わせたとき、そのベクトルの長さが1以上なので、零にならないことが証明できます。

k(1-s)/k(s)≠0 ですから、a>1 で零にならなければ、a<0 にも零はありません。




■1の13■      k(1-s)=0 なら k(s)=0

さて、k(1-s)/k(s)≠0 が証明できたのですから、第一印象としては k(1-s)≠0 は当然の結論のように思えます。しかし、k(1-s)=0 かつ k(s)=0 のとき、0/0 が発生して、k(1-s)/k(s)≠0 であるにも関わらずk(1-s)=0, k(s)=0 が成り立つ可能性が生じます。ですから、リーマン仮説完全証明のためには、k(1-s)/k(s)≠0 を前提にして、さらに次の証明を付け加えなければなりません。

nami05 の図
しかし、そうは言うものの、k(1-s)/k(s)≠0 は非常に重要な証明の通過点です。これにより、リーマン零点が存在するなら、k(1-s)=0, k(s)=0 という形でしか存在し得ないことなるからです。つまり、a=0.5上にあるならk(1-s)=k(s)なので、零点はひとつですが、a=0.5上でなければ、「a=0.5の両側の等距離の所にペアで零点が発生すること」が明らかになりました。これは証明としては大進歩です。右図は、もしあったとしたらという仮定のもとで作った仮の図ですが、a=0.5を中心に左右等距離のところに零点が発生しています。このようなことが起こり得ないことをどうやって証明するかが次の課題となります。





■1の14■   実零線・虚零線と零点の数

ここからが証明の第4部となります。

ここではab平面上の実零線・虚零線の形を分析します。この分析結果を用いて、第5部の証明へと移るので、ここは非常に重要です。

また、実虚線、虚実線を定義して、その線を分析します。実虚線とは実零線の上の虚部の値のことです。実零線上の実部は零ですが、虚部は別の値をとっています。この値をzとして、az座標にしたものが実零線上の虚部ということで、実虚線と呼ぶことにします。虚実線とは、虚零線上の実部の値をzとして、それをaz座標に表したものです。

当初はこの実虚線と虚実線が証明の重要な手段となるはずだったのですが、ver14の証明では参考になる程度の重要性で終わってしまいました。これは少し残念なことですが、将来また重要になるかもしれないので、載せておきます。

この実虚線と虚実線の図を使って、零点の数がふたつではなく3つでなければならないことを証明できます。つまり、k(1-s)/k(s)≠0 なので、零点の数はふたつになりますが、実虚線と虚実線の分析から、「ふたつということはあり得ず、3つ、もしくは奇数個存在する」ことを示すことが出来ます。

とは言うものの、特殊なケースとしては零点の数がふたつの可能性を排除することは出来ませんでした。結果として「零点の数が3つである」ことを一般的命題としては述べることが出来なくなりました。しかし、普通の条件下では「零点の数は3つ、もしくは奇数個」でなければならないので、適宜条件を確認した上で使っています。






■1の15■   k(s)を微分する

これからが第5部となります。

k(s)の実部は k_re(a,b,n)、虚部は k_im(a,b,n) と表記しますが、これをそれぞれaについてと、bについて微分します。

k_re(a,b,n)をaについて微分した式をem(a,b,n)とします。bについて微分した式をhj(a,b,n)とします。

k_im(a,b,n)をaについて微分した式をim(a,b,n)とします。bについて微分した式をin(a,b,n)とします。

これらをプログラム化して計算し、式を分析したところ、何と! n→∞ において em(a,b)=in(a,b)、hj(a,b)=im(a,b) であることが判りました。 ヽ(゚Д゚)ノ !!  「こういうことがあるのか」と驚かされる結論ですが、式の内容からも証明できます。

さて、微分とはXY座標においては傾きを求めることですから、微分式=0とすると、そこが前の式の頂点を示すことになります。ですから、aについて微分した式の零線は元の式のを上下に膨れた頂点を必ず通ることを意味し、bについて微分した式の零線は左右に膨れた頂点を通ることを意味しています。作図してみると、まさにこのことを目で確かめることが出来ます。

k_re(a,b)とk_im(a,b)の場合、em(a,b)とin(a,b)がまったく同じ式なので、この零線は実零線の上下の頂点を通過するだけでなく、虚零線の左右の頂点も通過しています。これは図でも確認できます。同じように、hj(a,b)とim(a,b)の式は同じなので、この零線は実零線の左右の頂点を通過し、かつ、虚零線の上下の頂点を通過することになります。

証明としては、虚零線に左右の頂点がない場合があるので、hj線を分析の手段として取り上げます。虚零線の上下の頂点をp1とします。ここをim線、つまりhj線が通ることになります。また、実零線の左向きの頂点をq1とします。ここをhj線が通ります。また、実零線は常に横U字形になっているので、それをb座標にそって輪切りにするとき、そこに必ず頂点があらわれます。その頂点を必ず微分線が通っています。その通過点のひとつをp3とします。




■1の16■   もし、リーマン零点がふたつあるなら。

さて、k(1-s)/k(s)≠0 ですから、k(1-s)=0なら必ずk(s)=0でなければなりません。これはa=0.5から等距離のところがリーマン零点となることを意味しています。そこを実零線も虚零線も通るわけですから、それぞれに頂点が必ず発生します。頂点があるならそこを微分した線の零線が通過しているはずであり、それがまた別の頂点を通過していることになります。これは作図上、いろいろなケースがあるので、証明の本体に説明は譲りますが、すべてのありえるケースにおいて矛盾が生じることを証明できます。ですから、このような頂点が発生するという前提が間違っていることになります。頂点が発生しないと言うことは、その前提になっているリーマン零点がふたつ発生することがありえないことを示しています。リーマン零点がふたつ発生しないと言うことは、「 k(1-s)=0なら必ずk(s)=0 」ということがありえないことを意味しているので、これでリーマン零点がa=0.5上にしか存在し得ないことが証明できることになります。

この説明で少しは納得した人や、関心のある方は証明の本体をご覧下さい。質問や疑問点、間違い箇所の指摘は大歓迎ですので、遠慮なく下記のアドレスにメールをいただければと思います。

間違った証明を何度も載せたので、もう信用度はかなり落ちていることと思いますが、(TT) 寛容にお付き合いいただければと思います。




証明の第2部、第3部

証明の第4部

証明の第5部





■     履歴

08/06/27 にver14.0 をアップ
08/10/31 にver14.1 をアップ。第2部の1に短い補足を加えました。
08/11/25 にver14.2 をアップ。第1部の15を書き直し、16を付け加えました。
08/11/27 に結構重大な欠陥を見つけました。実零線・虚零線の組み合わせでまだ検討していない形がありました。その場合も矛盾が起きることを証明しなければなりません。なんとか証明できると良いのですが・・・。請うご期待。一応、今までの証明は無修正で、そのままにしてありますが、不充分な点があることはご了解下さい。
08/12/21    FC2HPに載せるために全体的に整形しました。内容は変わりありません。




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