リーマン仮説の証明  ver15 第4部





第4部     零点図の構造



■4の1■      実零線・虚零線の図


k(s)はabz座標で表示することが出来、zが実部のz1、虚部がz2というふたつの値を取ると考えればよいことは第1部で説明してあります。k(s)は、実部と虚部がそれぞれ立体内の波を持つ平面として存在し、z1=0となる点が実部の零点、z2=0となるのが虚部の零点です。そのような零点はたくさんあり、それらをab座標の上で描くと線となって現れます。実部の線を実零線と呼び、青で示します。虚部の線を虚零線とし、赤で示すことにします。この青と赤の交点がリーマン零点となります。この図はすでに「第12の広場の付録4:リーマン仮説を納得する方法」のページに載せてありますが、重要なので再掲しておきます。

実零線の図


























虚零線の図



























実虚零線の図



























この図そのものが証明の材料を提供してくれますが、どの現象が証明の根拠となるかをここで確認します。




■4の2■      a=∞に実部零点はない。


図を見るだけでもa>1において実零線がないことは明らかですが、証明できるのは「a=∞に実部零点がないこと」、および「a>2に実部零点がないこと」です。a>2で証明できればa=∞の証明はいらないとも言えますが、a=∞は重要点なので、あえて載せておきます。

a=∞での証明方法ですが、実部式 k_re(a,b)=lim_[n→∞]zt_re(a,b,n)+ber_re(a,b,n) を使います。lim_[a→∞]k_re(a,b)=1 となり、零にはなりません。ゆえに零点はひとつも存在しないことになります。




■4の3■      a>2に実部零点はない。


a>2において実部零点がないことは証明できます。これについては既に■2の12■で証明済みですが、再述すると次のようになります。

a>1ではk(s)=lim_[n→∞]zt(s,n) が成り立つので、k_re(a,b)=lim_[n→∞]Σ_[r=1,∞]cos(b*ln(r))/r^a となります。

a=2 のとき Σ_[n=1,∞]1/n^2=1.6449... です。k_re(2,b)=Σ[n=1,∞]cos(b*ln(n))/n^2 の各項目すべては 1>=cos(b*ln(n)) なので、k_re(2,b)<1.6449 となります。 2-Σ_[n=1,∞]1/n^2 = (2-1.6449) であり、cos(b*ln(n))>=-1 なので、k_re(2,b)>(2-1.6449) が成り立ちます。これでk_re(2,b)≠0が証明できました。

a=4 のとき、k(4)=1.0823... なので、k_re(4,b)>(2-1.0823) となり、k_re(4,b)≠0 が証明できます。同じように2以上のすべての実数でk_re(a,b)≠0 を示すことが出来ます。




■4の4■      a=∞では虚部はすべて零である。


a=∞で虚部が零になることは式の内容から明らかです。a>1ではk(s)=lim_[n→∞]zt(s,n) が成り立ち、sin(b*ln(r))/r^a のrがr>=2で、aが→∞ですから、r^a→∞となります。sin(b*ln(n))は1と-1の間ですから、sin(b*ln(n))/r^a は零に近づき、a=∞では零となります。




■4の5■      a=∞の1歩手前での波の形


a=∞で虚部がすべて零だと波が無いことになり、虚零線も形が判らなくなります。それでは困るので、a=∞の一歩手前の姿を明らかにしておきます。

a=∞では実部は1,虚部は0となりますが、その一歩手前ではk(s)の式そのままですから、説明するまでもないことかもしれません。計算により作図すると、b軸で切った実部線、虚部線はcos曲線、sin曲線に近い形をしていることが判ります。ただ、値が、実部については1,虚部については0に極めて近い数字が出るので、かなり拡大しないとcos曲線、sin曲線であることが見えてきません。

hi_hx10_n8 の図
イメージとして捉えやすくするため、高さを拡大すると共に、実部から1を引いて虚部と重なるようにして、図示できるようにすると右図のようになります。

零点はちょうどpi/2ln(2)=2.26618 の間隔で並んでいます。

この現象を証明の根拠として使うことはないので、sin.cosの形になることの証明は省略しますが、虚零線が等間隔に並ぶことは認めることが出来ます。





■4の6■      a=-∞では実零線と虚零線が交互に現れる


先に載せた実虚零線図を見ればすぐにわかることですが、a=-∞では実零線と虚零線が交互に現れます。これを以下のように証明してみます。証明だけでは判りにくいので、適宜説明も入れておきます。これで、a=-∞でのk(s)の形を完全に理解していただけることと思います。

kr_hx-10b の図
aを適当なマイナスの数にしてbz座標図を描こうとすると、変化が激しくて判りやすい図になりません。右図の場合、b=10からすでに波になっているのですが、見た目には平らになっています。そこで、適当な値をpとして、b^pで割って高さを調節し、波であることが目で判るようにします。




kr_hx-100b の図
a=-100で、高さを調節すると右図のようになります。実部の零点がx1,x2,x3...と並びます。その間に虚部の零点y1,y2,y3... があります。実部零点と虚部零点の間は等しく、等間隔に並んでいるように見えます。計算上もこの現象は確認できます。(y1-x1)/(x2-x1)を計算すると、予想通り0.5に近い数字が出てきます。a=-200ではさらに0.5に近い数字になります。ですから、a=-∞においては(y1-x1)/(x2-x1)が0.5になることは計算上は間違いなく成り立っています。

さて、これをどう証明するかです。これについてはけっこう手こずりましたが、次のような証明はどうでしょうか。



k(s)の実部式 k_re(a,b)と、虚部式 k_im(a,b)を再掲すると次のようになります。A=a-1, P=cos(b*ln(n)), Q=sin(b*ln(n)), H=A^2+b^2 を意味します。

k_re(a,b) = 1 + cos(b*ln(2))/2^a + cos(b*ln(3))/3^a + cos(b*ln(4))/4^a + ... + cos(b*ln(n))/n^a +
(A*P-b*Q)/n^A/H - P/2/n^a + B(2)*(P*ra(2)+Q*rb(2))/2!/n^2/n^A + B(4)*(P*ra(4)+Q*rb(4))/4!/n^4/n^A + ....

k_im(s) = - { sin(b*ln(2))/2^a + sin(b*ln(3))/3^a + ... + sin(b*ln(n))/n~a }
+ (-bP-AQ)/H/n^A + Q/2/n^a + B(2)*(P*rb(2)-Q*ra(2))/2!/n^2/n^A + B(4)*(P*rb(4)-Q*ra(4))/4!/n^4/n^A + ....

ra(r),rb(r) の意味については■1の6■を参照してください。

また、説明の中に微分式が登場します。これは第5部で紹介する内容を前提にしていますので、そちらを参照した上でお読み下さい。

a=-∞では実部零点と虚部零点が交互に並んでいます。ただし厳密に言うと、零点の場所は常に変動しているので収束する零点はありません。しかし、実零線・虚零線はa=-∞に向かって伸びています。それゆえ、a=-∞の直前には必ず実零点・虚零点があり、それが交互に並んでいます。この現象は実部式・虚部式とそれらを微分した式を比較することから証明できます。

実部式をbについて微分した式を k_re_b(a,b)とします。この式の内容については第5部を参照してください。これと虚部式 k_im(a,b) はよく似ています。各項に現れるsinの中身とr^aで割ること、B(r)以下の内容もよく似ています。零点図を描いても、両者が a<0 で近接していることは一目瞭然です。そのことを示す図は■5の3■に掲載しているので参照してください。シアン線と赤線が重なっている点に注目していただければと思います。




■4の7■      a=-∞で実零線と虚零線が交互に現れることの証明


さて、a=-∞において、両者は単に似ているということでなく、まったく一致することを式の内容から証明してみたいと思います。

k_re_b(a,b) と k_im(a,b) には、それぞれn→∞で消える項目が含まれています。B(2)以下がその部分です。また、k_re_b(a,b)の中の Q/n^A/H と 2b*(AP-bQ)/n^A/H^2 は a→-∞ で相対的に小さくなるので無視できます。それゆえ、両者を省いて整理した式を載せておきます。

lim_[a→-∞] kr_re_b(a,b) = - { ln(2)*sin(b*ln(2))/2^a + ln(3)*sin(b*ln(3))/3^a + . . . + ln(n)*sin(b*ln(n))/n^a } - ln(n)*(bP+AQ)/n^A/H + ln(n)*Q/2/n^a

lim_[a→-∞] k_im(a,b) = - { sin(b*ln(2))/2^a + sin(b*ln(3)))/3^a + . . . + sin(b*ln(n))/n^a } - (bP+AQ)/n^A/H + Q/2n^a

hj_hx-20b の図
両式の符号は一致していて、定数以外もすべて一致しています。また、定数部分もln(r)が掛けられているだけです。それゆえ、虚部式の値をf1とすると、実部をbで微分した式の値もf1*c というプラスの値を持つ数になり、波のサイクルを変化させる要因は皆無です。それゆえ、a→-∞では実部をbで微分した式の零点と虚部式の零点は常に完全に一致することになります。

このことは右図でもある程度確認できます。a=-20のときb=10から20までのbz図ですが、シアン線が実部をbで微分した値で、赤線が虚部の値です。どちらも同じリズムの波であり、ほとんど同じ場所で零になっています。a=-50, a=-100 とするとさらに零点が接近し、a=-∞では完全に一致するというわけです。

実部をbで微分した式の零点とは実部波の頂点を意味しています。a→-∞では実部の値は+-∞の間を振動するので頂点が零になることはありません。ゆえに、実部波の頂点は必ず実部零点と一致することはなく、必ず実部零点の間にひとつ、もしくは奇数個存在しています。とすると、実部波の頂点が虚部の零点と一致しているのですから、実部零点の間に虚部零点も必ず存在するこになります。


同じことが実部式 k_re(a,b) と虚部式をbについて微分した式 k_im_b(a,b) の間にも成り立ちます。n→∞でB(2)以下は零になるので式の比較の際には無視できます。また、k_im_b(a,b)に含まれる P/H/n^A と 2b*(bP+AQ)/H^2/n^A は a→-∞ で相対的に小さくなるので無視できます。それらを省いて整理した式を載せておきます。


lim_[a→-∞] k_im_b(a,b) = -ln(2)*cos(b*ln(2))/2^a - ln(3)*cos(b*ln(3))/3^a - ... - ln(n)*cos(b*ln(n))/n^a + ln(n)*(bQ-AP)/H/n^A + ln(n)*P/2n^a

lim_[a→-∞] k_re(a,b) = 1 + cos(b*ln(2))/2^a + cos(b*ln(3))/3^a + ... + cos(b*ln(n))/n^a + (AP-bQ)/n^A/H - P/2/n^a

両式を比較すると、実部式に1があること、また、それ以外の項目ですべて符号が逆になっていることが判ります。また、bについて微分した式にはln(r)という係数が掛けられています。それ以外はまったく同じ内容になっています。係数が掛けられただけで符号がすべて逆であるとは、1という誤差はあるものの、両式がプラス・マイナス全く逆に動くことを示しています。しかも、a→-∞では実部の値は無限大に近くなるので1という数は無視できるほど小さな値です。それゆえ、a=-∞の近傍では虚部式のbについての微分の零点は実部式の零点と近接し、a=-∞ではまったく一致していると見ることが出来ます。虚部式の微分の零点は虚部波の頂点を意味していて、その波は+-∞の間を振動する大きな値を取ります。それゆえ、波の頂点が零になることはなく、常に虚部式の零点の間に来ることになります。そしてそこに必ず実部零点があり、実零線が通ることになります。

a=-∞で、実部の零点の間にふたつ以上の虚部の零点がある場合は、その虚部の零点の間にも必ず実部の零点が存在しなければならなくなるので、結局、それぞれひとつの零点しか存在しないことになります。ゆえに、a=-∞では実部零点と虚部零点が交互に並んで存在することが証明できました。





■4の8■      a=-∞では実零線と虚零線は無限に存在する


さて、a=-∞で実零線と虚零線は交互に現れることが証明できました。この現象はb=∞に向かって限りなく続いています。これは当たり前のことですが、これも証明対象なので、証明としての論理を書いておきます。

実零線とは実零点が繋がった線であり、虚零線とは虚零点が繋がったものです。それゆえ、実零線、虚零線が存在するとは、そこに実零点、虚零点が存在することと同じ意味です。さて、仮定法の言い方になりますが、もし実零線と虚零線がこれ以上交互に現れないという限界点があったとします。最後に現れるのを実零線とするなら、その最後の実零線の終点をfとします。

nami80 の図
さて、その終点f上に虚部をbで微分した式の零点が来ていることはすでに証明してあります。bz座標ではその点の上部に必ず虚部波の頂点gがあるはずですから、その波は必ずfよりも大きいところ(つまり、fの右側)にも達しています。その虚部波が零になると、先の仮定法の前提に矛盾するので、虚部波は零になることはありません。また、もし頂点hとなる場所があるなら、そこが実部の零点となるので、そのような頂点hは存在しないはずです。残る可能性は零にならず、頂点にもならず、なだらかに無限へと繋がることです。すると虚部波はその到達点kでの微分係数が零になり、そこが実部波の零点mになります。しかし、零点mを作るためには実部波は必ずnという頂点を作らざるを得ず、nがあるということは、そこが実部をbについて微分した線の零点が発生し、そこに虚部の零点pがあることを意味しています。しかし、零点pは虚部波が零点を作らないと言う前提と矛盾するので、このような矛盾が生じることは最初の前提である「実零線に終点fが存在する」という命題があり得ないことを示しています。

最後に現れるのが虚零線の終点fと仮定しても同じ結論になります。実零線を虚零線、虚零線を実零線に置き換えると同じ論理が可能になり、最後に同じ種類の矛盾が現れるので、最初の仮定である「虚零線の終点fが存在する」という命題があり得ないことを証明しています。

よって、最後に現れるのが実零線であれ、虚零線であれ、あり得ないことが証明され、それ以外の可能性がないのですから、a=-∞において、終点fなるものは存在せず、bの無限の彼方にまで無限に実零線、虚零線が存在することが証明されました。





■4の9■      a=-∞での波の運動の形


a=-∞で実部零点と虚部零点が無限に交互に現れることがこれではっきりしました。しかし、収束するわけではありません。収束しないのに値があるとはどういうことかをここで説明しておきます。

実部平面も虚部平面もa→-∞で振動・発散します。しかし、発散は1/n^a、振動はsin、cosで計算できます。ですから、発散の直前の形が常に一定の法則のもとにあることを示すことが出来ます。

つまり、絶対値の大きいマイナスにおいて、実部零点と虚部零点は定まり、等間隔で並びます。そして、図において少し左におけるaでも実部零点と虚部零点は等間隔に並んでいますが、少し上にずれたところにあります。もう少し左のaにおいても零点は等間隔ですが、つねに少しずつ上にずれます。ですから、収束はしません。しかし、等間隔であるという形は常に一定です。

ちょうど、b=0から始まって、sin曲線とcos曲線が上にずれながら運動していると考えると、イメージとして判りやすくなります。ただ、b=0の点については、上記の式では計算できません。別途 k(s)から計算すると、aが偶数のところで実部零点が発生し、偶数と偶数のあいだは波となっています。虚部線のb=0の零点の出発点はaが奇数のところからわずかにずれますが、a=-∞では奇数に収束し、そこからbのプラスに向けてsin曲線の形を取りながら運動します。実部はz=1を中心に振動し、虚部はz=0を中心に振動するので、a=-∞の手前では当然その零点は完全に等間隔というわけではありませんが、1/n^aですから、無限大の値になればなるほど等間隔に近づきます。

リーマン証明で使うのは「実部零点と虚部零点が無限に交互に現れる」ということだけなので、以上の現象についての証明は省きますが、事実を理解することは証明よりも大切なことなので、あえて書き留めておきます。

また、a=-∞では値が無限大になるので手こずりますが、1/k(s)を使うと極小になります。これは分析に便利かもしれません。将来の参考のため書き留めておきます。




■4の10■      a=-∞でのzt(s)の形


zt(s)とk(s)では動き方が異なるので、証明には使いませんが、参考になるところがあるのでzt(s)の形も検討しておきます。

a=-10のとき、zt(s)のbz座標は右図のようになります。この図はn=8のときのものです。

jk05 の図
波の高さはかなりありますが、全体的に同じリズムになっているのが判ります。nを増やすと波の間隔が狭くなります。実部波と虚部波の頂点のb座標の差をrとすると、波の間隔 r は r=pi/2/ln(n) に近づきます。つまり、rはnの増加につれて限りなく零に近づくと言うことです。zt(s)自体もnの増加と共に+−∞の間を振動するのでzt(s)はa<0で値を持ちません。nを特定したzt(s,n)でのみ値を持ちます。

さて、k(s)は lim_[n→∞]zt(s,n)+ber(s,n) ですが、lim_[n→∞]zt(s,n) が振動・発散するにも係わらず、ber(s,n)が付くと収束します。 そこが不思議なところです。しかも、k(s)の波の形とzt(s,n)の形はまったく異なっています。そこで、先ほどのjk05図と同じ条件でk(s)を計算した図と比べてみます。

高さの変動が激しいので図示しにくくなっていますが、高さもサイクルも違うことはすぐ判ります。また、この図の場合、n=8として計算してありますが、nを増やしても図としてはほとんど同じです。つまり、n=8程度ですでに収束していると言うことです。これもnの増加で図が大いに変化するz(s,n)とはっきり異なります。





■4の11■      b=∞、-∞ に実部線、虚零線が到達することはない


k(a+bi)=k(a-bi) であることは第1部で説明してあります。ab座標のb<0領域では、実部については、k_re(a+bi)=k_re(a-bi)で、虚部については k_im(a+bi)=-k_im(a-bi)となっています。零点部分は一致するので、b>0のみを分析すれば充分です。

b=∞はどうなっているかをk(s)の式から分析してみます。b=∞の一歩手前でbを確定させると、n→∞でk(s)は値を持ちます。k(s)は実部と虚部の波になっていて、bが大きいほど激しく上下しますが、その過程で零になることもあります。その零点を実零線、虚零線が通過します。ですから、bが無限大に近いところでも、必ず零点は存在し、実零線、虚零線が存在します。も存在します。しかし、b→∞で k(s)は変動を続けるので、b=∞での収束はありません。収束しないと、値もないので、零点もないということになります。ですから、実零線、虚零線がこの方向に抜けることはありません。

例外はa=∞におけるb=∞です。a=∞では虚部が零に収束します。それゆえ、ここでのb=∞は零となります。

b=-∞は b=∞と同じですから、この方向に実零線・虚零線が向かうことはありません。



nami79 の図
以上の証明で充分だと思いますが、やや簡略すぎるかとの思いが湧いてきたので、さらにもうひとつ別の証明を付け加えておきます。


すでにa=-∞のところで証明したように、a=-∞では実零線と虚零線が交互に無限の彼方まで存在しています。a=∞においては虚零線のみが無限の彼方まで存在しています。さて、aが有限のとき、b=∞がどのようになっているでしょうか。これを調べるためにまずは虚零線2を取り上げます。

虚零線2とはa=-∞から出て、a=0.5上でb=9.6669...を通り、a=∞へと抜ける一本の線です。a=0.5上で2番目に通過する線なので虚零線2と名付けることにしてあります。実部をbで微分した式の零線も虚零線2の近傍を通り一本の線となってa=∞に繋がっています。これは計算上のことですが、具体的に確認できるので証明の根拠として使うことが出来ます。

虚零線2に添って実部をbで微分した式の零線が走っていると言うことは、そこが実部波の頂点になっていることを意味しています。波の頂点とは、その両側が山になる、もしくは谷になっていることで、実部波のb軸に添って上方に目をやると、その頂点から下り坂になるか、上り坂になるかのいずれかということです。そして、下り坂であれ、上り坂であれ、この坂は必ず反転するわけで、その反転の場所が頂点となり、そこを微分した式の別の零線が走ることになります。そして、この別の零線の近傍を次の虚零線が必ず走ることになります。

さて、この別の零線と別の虚零線が一本の線ですべて繋がっていることは証明できません。むしろ繋がっていない反例が存在しています。虚零線6と虚零線7は繋がっていて横U字形を形成しています。これに連動する実部をbで微分した式の零線も同じくやや横にズレてはいますが、横U字形になっています。しかし、虚零線5に対しては、その上側に虚零線5か虚零線8が存在していて、別の虚零線が走っていることについては変わりはありません。    

つまり、下り坂であれ、上り坂であれ、波の頂点は必ず存在し、そこが微分零線の通り道であり、その近傍に虚零線が必ず存在することに変わりありません。そして、そこに虚零線があるなら、次の実部波がそこから始まり、次の頂点でまた別の虚零線が存在することになります。この論理は無限に可能なので、結局、b=∞に向けて虚零線が無限に存在していることになります。そして、それにそって実部の零点が存在しているのですから、実部波も無限に存在し、その波がもし零線を作るとするなら、その波に添った形になり、横に流れる線となり、b=∞に向けて収束することはないことが明らかとなります。

ゆえに、b=∞に繋がる実零線、虚零線は存在せず、そこに実零点も虚零点も存在しないことが証明されました。

b=∞に存在しないと言うことは、b=-∞におもいても存在しないことを示しています。

さて、これで縦に流れる実零線、虚零線を検討する必要はなくなりました。





■4の12■      a<0 では a=-2, -4, ... と零点が現れる。


b=0、かつ、aがマイナス部分の実部零点はすべてリーマン零点です。これは計算上そうなるということですが、リーマン仮説証明に直接使う根拠ではないので、この程度の説明にしておきます。a=-2,-4,... は虚零線の到達点ではありませんが、b=0ではすべて虚部は零なので、実部が零でさえあればすべてリーマン零点となります。

b=0に接近する虚零線の到着点は、a=-2.7172628,-4.936762108,-7.074597145,-9.170493162,...となります。b≒0で実零線と虚零線が交わるとか接することはありません。これも証明の根拠として使わないので、この程度の説明で終わりにします。

b=0と虚零線が交わる点は虚零線が交差する形になっていて、微分不可の特異点を形成しています。





■4の13■      a>0 では


さて、a>0 とは実数のk(x)を分析するのと同じことです。ですから、すでに確認されているように、a>0 には実部零点はなく、a=1以外には∞点もありません。虚部はすべて零となっています。ただし、実零線1が(1,0)に達しています。ここは特異点なのでこのような現象が起こりえるのですが、大変面白い現象だと言えます。つまり、零点がないにも係わらず零線が到達することがあり得ると言うことです。それ以外に実零線は交わりません。虚零線は理論上は何本でも可能ですが、実際にはひとつも到達していません。この点は特に証明に使わないので、この程度の説明で終わりにしておきます。





■4の14■      零点の数は?


k(1-s)とk(s)がともに零と言うことは、b軸に平行な線上に零点がふたつあることを意味しています。しかし、実零線と虚零線の形を分析すると、ごく普通の実零線・虚零線ならリーマン零点の数がふたつということはあり得ず、3つ、もしくは奇数個存在しなければならないことが判ります。ver12以前の証明では、この零点の数を3つとした上でリーマン仮説証明を完成させようと計画していたので、零点の数が非常に重要なテーマとなっていましたが、特殊な事例として零点がふたつである可能性を排除する証明がなかなかうまくいかないので、ver14以降ではこのテーマは割愛することにしました。

零点の数を3つとする論理は個人的にはとても面白いと思うので、その証明を諦めるつもりはありませんが、それはまたいずれということにさせていただきます。ver14以降の証明では、零点の数はふたつのときもあり、3つのときもあり、4つのときもあるという前提になっています。零点の数に関心のある方はver14に保存されている第4部の2、もしくはver12以前の証明を参照してください。




■4の15■      実零線は必ず横U字形となる


さて、実零線の形ですが、a=-∞から出ていることは証明できました。a=∞にはありません。実零線は線分ではないので、必ず無限の彼方に繋がらなければなりません。では、どこに繋がっているのでしょうか。b<0に実部の零点があるので、一部はそこに繋がっています。しかし、残りの実零線はa=-∞に戻る形になり、結果的に横U字形となります。

これらの横U字形は互いに重なり合うことなく綺麗に並んでいます。決して重ならないことはのちほど証明しますが、第5部の事例分析では、イメージ的に判りやすくするために、あえて重なった事例も扱っていますが、可能性があるという意味ではありません。入れ子のような形にならない証明はまだ出来ていないので、これは分析の際に必ず取り上げる予定です。

これらの横U字形はすべて右肩下がりになっています。これは、a→-∞で常に新たな実零線が発生し、それが一定の間隔で北上しているので、以前にあった実零線を上に押し上げる形になっています。つまり、a→0という運動方向で考えると下方へ動いている、つまり、右肩下がりということになります。

また、右に膨らむ横U字形ですから、右に膨らむ先端が存在し、そこはbについて微分した式の零点となっています。先端が微分零であることは、実零線の本質からして当然のことですが、bz座標で実部波を描いてみれば判ります。そこには実部が零の点と、マイナスの点、プラスの点などが描かれていますが、それらは波の形をした一本の線として表わされます。その波の上下の頂点が微分零点です。次に、b座標を実零線の先端に近い方向に少しずらします。すると、そのbz座標にも波が現れ、先の図と似た波が現れますが、少し幅が狭くなっているはずです。そして、そこにも波の頂点があるので、そこが微分零の点となります。次にまた同じ方向にずらした図を考えます。すると、そのbz座標にはまた似たような波が現れ、幅がさらに狭くなります。これを繰り返してゆくと、次第に実零線の先端に近づき、実零点から隣の実零点までの幅が極めて狭い図が現れます。しかし、そこにも必ず波の頂点、つまり、微分零点が存在しています。ですから、bz座標で区切ったときの先端は必ず波の頂点と重なり、微分零点と重なります。先端が微分零点とは、微分零点を集めた微分零線が必ずそこを通ることを意味しています。

実零線の形としては横一本線となることはありません。また、縦の線もありません。縦から横へ流れる線もありません。横から縦という形は、a<0 ではありますが、a>0 では必ず横U字形になります。これは証明しておかなければなりません。




■4の16■      実零線が横から縦に流れることはない

nami109 の図
実零線は a=-∞から右肩下がりに降りてきますが、それがb<0の実零線と繋がるとき、横から縦に流れる形になります。右図はそれを図にしたものです。この場合、?マークを付けた線が気になりますが、そのような線がないと想定することも可能です。つまり、L1の次の実零線がL2で、そのL2がa=0を越えたあとで下に降りてきて、b<0のa=-∞に繋がることが可能性としてはまだ残っています。そこで、以下のような論法で、このような下に向かって縦に流れることがないことを証明しておきます。

まず、a→0の方向で見る限り、すべての実零線が右肩下がりになっています。これは先に証明してあるので、これを大前提としておきます。その中のひとつがa=0を越えたところで別の実零線と繋がることなく下に降り続けたとすると、やがてはb=0かa=0の線とぶつかるはずです。

この場合、a>1でb=0と交差することはありません。なぜなら、b=0は虚零線0が通っている場所であり、そこを実零線が通過すると、その交点は必ずリーマン零点となります。ところが、a>1にリーマン零点が存在しないことはすでに第2部で証明されているからです。

a>-2.7172628でb=0と交差することもありません。なぜなら、a=-2.7172628に虚零線のb=0との交点があり、その虚零線はa=0と接することなく、a=-∞の方向に伸びているからです。下に降りてきた実零線がこの点より左に来るなら、その前に必ず虚零線と通過することになり、通過するとは、その交点が必ずリーマン零点とならざるを得まぜん。しかし、a>0にリーマン零点が存在しないことはすでに第2部で証明されているからです。

ですから、下に降りてきた実零線の通過できる点はa=-2.7172628とa=1の間のみとなります。

しかし、この範囲は有限なので、計算によって確認することが出来ます。この範囲にはすでにa=1とa=-2を結ぶ実零線がありますが、それと交差する実零線はなく、またb=0と交わる実零線も存在していません。ということは、一端下に降りてきた実零線は必ずa=-∞の方向へと戻る以外にないことになります。a=-∞に戻ると言うことは横U字形になることを意味しています。

それゆえ、下に降りてきた実零線でa=0を越えるものはすべて横U字形となることが証明できました。

ちなみに、a=1とa=-2を結ぶ実零線はa=0と交わる最初の実零線ですが、これはa=-∞から降りてきたものではないので、ここでの分析の対象ではありません。輪になることの実例として分析されます。また、(1,0)で虚零線と交わっていますが、a=1の点はリーマン零点になりません。なぜなら、ここは微分不可の特異点で、実部は∞、虚部は零となっています。それゆえ、「実零線がこの点に到達している」というわけではなく、「到達する直前で止まっている」と考えるべきところです。




■4の17■      横U字形が重ならないことの証明


nami98b の図
a=-∞から出てた実零線は必ず隣の実零線と手を結んで横U字形になりますが、ひとつ先の実零線と繋がり、隣の実零線と交差することはありません。なぜなら、交差すると言うことは、その点上にふたつの微分係数があるということで、そこが微分不可、つまり特異点であることを示します。ところがk(s)上にはb=0上、もしくは、k(1-s)=k(s)の点にしか特異点が存在しないことが証明されています。(第3部参照のこと) もし、実零線が重なるという特異点があるとするなら、リーマン零点同様、それがa=0.5の反対側にもなければなりません。ところが、2点で交差すると、横U字形が一部重なるとは言え、いわゆる重なる形にはなりません。ゆえに、1点で交差することはないことが証明できました。

2点で交差する場合、横U字形が入れ子の形になる場合は、別途、矛盾分析の対象として検討します。

なお、虚零線についても同じ証明が可能であることをここで確認しておきます。虚零線が交差する場合、その点は特異点となります。それゆえ、k(s)においては、b=0上、もしくは k(s)=k(1-s) としてしか存在しません。




■4の18■      実零線が輪になる


実零線が輪の形になることは、排除できません。・・・というか、実例まで存在します。a=1から出た実零線が輪になっています。それ以外、作図可能な範囲で実零線が輪になることはありません。しかし、作図範囲を超えたところで輪にならないと、どうして断言できるでしょうか。

k_re(a,b)の波にはリズムがあり、輪になるということは、そのリズムが崩れることなので、「実際はない」と常識的には言い切れますが、証明としては存在しないことの理屈が必要です。残念ながら今のところ、その理屈が見つからないので、のちの矛盾分析の対象として、実零線が輪になる可能性も取り上げます。




■4の19■      虚零線の形


虚零線の形は実零線よりもたくさんの可能性があります。a=∞にも繋がり、a=0にも繋がる可能性を持っているからです。

もっとも、普通なのは横一本線の虚零線です。これは、a=0と交差する虚零線を下から番号を付けたとき、虚零線2、3,4,5と、すべて横一本線になっていることが確認できます。虚零線8も横一本線です。ですから、ほとんどが横一本線なのです。a>0 で右肩下がりなのは実零線と同じで、あとはだいたい水平ですが、細部では上下に歪むところがあります。矛盾分析として考察するときは、a=-∞からa=∞に繋がっていればよいのであって、あらゆる歪みを排除することなく分析対象に加えることになります。

虚零線6と7は繋がっていて横U字形となっています。このような虚零線の横U字形もときどき存在します。それゆえ、これも分析対象に含めます。

b=∞に繋がる虚零線はありません。a=-∞を出て、a>0でb=0に繋がる虚零線は分析対象から外れます。リーマン零点が a<0 にしかないことが証明されているからです。実零線同様、輪になる可能性を排除出来ないので、これを矛盾分析対象に含めます。また、実際にはありませんが、a=∞から出た虚零線が隣の虚零線と繋がり、左に膨れた横U字形を作ることも想定可能です。この形になることがないと証明できなかったので、これも矛盾分析に含めます。

a=∞を出て、b=0に繋がる可能性もあります。これは実例がひとつ存在しています。虚零線1がそうです。ただ、このような虚零線は1だけであって、それ以外は存在しないので、分析対象からは外れます。

a=∞からb=0に繋がる虚零線がないことは証明できます。もしそのような虚零線が存在したとすると、それは虚零線1の下にあるか上にあるかのどちらかであって、虚零線1と交差することはありません。なぜなら、交差したら、そこは特異点となり、a=0.5の反対側にも同じ点が存在しなければならなくなるからです。

虚零線1の下側にある虚零線については、これがたとえ存在したとしても、a<0>1 の範囲にないので、リーマン零点の不存在証明としては、無視して良い虚零線になります。また、上側の虚零線については、もしあったとすると必ず他の虚零線と交差することになるか、a=0と交差するかのいずれかになります。交差する場合は、その点が特異点となり、a=0.5の反対側にも同じ点が存在しなければならなくなり、そのような点がないのですから、交差することがないことが証明できます。また、a=0と交わるという可能性は、実際、虚零線1と虚零線2の間にひとつも虚零線がないのですから、有限の範囲での不存在は計算、および視覚的に確認できます。

ゆえに、a=-∞を出てb=0に繋がる虚零線は虚零線1のみであることが証明できました。




■4の20■      実零線と虚零線が接触することはない


実零線と虚零線が交差すると、そこはリーマン零点となりますが、接触するだけで、反対側に抜けなくてもリーマン零点になります。しかし、実際上はそのような接触事例はないことをここで説明します。その証明については、第5部の内容と直結しているので、第5部が終わったあとで証明することにします。また、これについては、次の■4の19■の方が重要なので、そちらを参照してください。

ここではやや簡略に説明しておきます。実零線が水平になる点で虚零線が接触する場合があると想定します。すると、その虚零線は必ず水平になります。それ以外は考えられません。ところが、この点は実零線の上下の膨らみの先端であり、ここをaについての微分零線が通っています。そして、この微分線は虚部をbについて微分した零線でもあります。bについて微分するとは、縦に微分すると言うことであり、その微分係数が零とは虚零線が垂直になっていることを示しています。水平な線が垂直でもあるということはあり得ません。それゆえ、最初に想定した「水平に接触する」ということがありえないことが証明できました。

水平でない場合は、証明が面倒なので第5部に委ねますが、実部と虚部の傾きはどの点においても必ずpi/2のズレがあるので、同じ傾きになることはあり得ません。つまり接触することはないのです。このpi/2のズレは非常に重要な現象なので、第5部で全容を解明する予定です。




■4の21■      実零線と虚零線は直交している


さて、「実零線と虚零線は常に直角で交わる」という命題については、微分係数決定の法則を使うので、第5部と第6部で証明します。ここでは大まかな説明だけになりますが、おそらく多くの人は、「直交する」と言われても信じられないのではないでしょうか。実零線・虚零線図を見ても直交してないからです。その理由は上下の単位と左右の単位が異なって作図しているからです。縮尺を同じにして描いてみると直交していることが判ります。
br44 の図

右図は最初のリーマン零点を作る実零線と虚零線が交差する場面を拡大した図です。上下左右同じ縮尺なので、綺麗に直交していることが判るのではないでしょうか。他の零点はまだ調べていませんが、間違いなく直交しています。・・・と言うか、直交しているはずです。その証明については、第5部を参照してください。

ということで、実零線と虚零線が直交しないような作図はすべて矛盾分析の対象からはずして良いのですが、すでに作ってしまった図も多く、いまさら修正している余裕はないので、そのままにしてあります。また、必ず直交するのですから、接触する事例もあり得ないことは当然です。これも、すでに作図してしまったので、そのままにしてあります。ご容赦、ご了解をお願いいたします。 (´д`)








証明の第1部

証明の第2部、第3部

証明の第5部

証明の第6部





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