リーマン仮説の証明   ver15 第6部





第6部      実零線・虚零線の矛盾点



■6の1■      零線図に生じる矛盾点


実零線・虚零線の図ではリーマン零点が綺麗にa=0.5上に並んでいるのが判ります。もし、この図の中にひとつでもa=0.5以外にリーマン零点があるとするなら、矛盾が生じます。それを以下の法則により証明してみます。

まず、証明の根拠としてつぎの4つの法則を使います。
1)零線は途切れたり、枝分かれすることはない
2)微分零線は実零線、虚零線の上下、左右の先端を通る(交わる)
3)実零線と虚零線が接しない(直交している)
4)特異点がない

これらの法則のいくつかはすでに第5部で証明済みですが、残りはここで証明します。ですから、これらの法則に反する作図は認められません。

実零線、虚零線の想定しうる形は、すでに第3部で分析していますが、それを再確認し、第4部で証明した法則も再確認し、その上で、想定しうる作図をすべて検討して、矛盾が生じることを示してみます。




■6の2■      実零線、虚零線の想定しうる形(再確認)


第3部ですでに確認したことですが、0=<a<=1 の間にある実零線は、実零線1を除き、すべて横U字形をしています。虚零線は、横一本線、および右横U字形をしています。しかし、証明としては、存在しないと証明できた形以外は、すべて可能なものとして作図しなければなりません。そういう「想定しうる」という範囲で考えると、実零線は、横U字形のほかに、輪になる可能性を持っています。それ以外はありません。虚零線は、先のふたつの形以外としては、左に膨らみを作る、左横U字形と輪になる可能性を否定できません。それ以外はありません。ゆえに、形として実零線は2個、虚零線は4個の可能性をもっています。そして、作図の場合は、これらのすべての組み合わせを検討し、そのすべてにおいて矛盾が生じることを示せばよいことになります。

しかし、その「すべて」ということがなかなか微妙なところで、どこまでがすべてと判定して良いのでしょうか。このあたりはいまだに曖昧なので困るのですが、今のところ、思いつくすべての事例ににおいて矛盾が生じていることは確かであり、それゆえ、リーマン零点がa=0.5以外のところに存在する可能性がないことが証明されています。





■6の3■      零線は、枝分かれや途切れることはない


k(s)、および、その微分式を図示することが可能です。立体図というのは書きにくいので、abz座標を縦か横かに切って、bz座標、az座標にして平面的に描きます。どこで切っても必ず実部線と虚部線を波として描くことが出来、しかも実部線も虚部線も連続した微分可能な線となります。また、それらを微分した式も再度微分可能で、それらは何度でも微分可能な構造になっています。なぜなら、三角関数を基本とする式だからです。 k(s)で微分不可の点はb=0のいくつかの点だけです。

nami56 の図
微分可能なので、図示するとき、その曲線が途中で枝分かれすることはありません。その理由は、もし枝分かれするような曲線なら、その枝分かれする点pにおいて微分できなくなるからです。また、途切れることもありません。途切れた点も微分できなくなるからです。

k_re(a,b)=0, k_im(a,b)=0 となる点を集めたものが実零線、虚零線です。これをab座標で描くことが出来ます。この実零線、虚零線も枝分かれしません。なぜなら、もし、実零線の上がマイナス、下がプラスだとしましょう。すると枝分かれしたあとに出来る新たな空間のプラス・マイナスが決まらなくなります。このようなことはあり得ません。虚零線でも、微分零線でも同じことです。すべての零線で枝分かれと言うことはあり得ないのです。

また、線が途切れてしまうこともありません。なぜなら、そのとぎれたところの直前では上か下がプラスで、その反対がマイナスになっているはずですが、途切れたところから先はプラスでも、マイナスでもないと言うことになってしまいます。そのようなことはあり得ません。

零線とは、実零線、虚零線、実部微分零線、虚部微分零線など、いろいろあります。また、零線だけではありません。k(s)内のすべての波や線、また平面までも途中で途切れることはありません。




■6の4■      実零線の上下の先端を微分零線が通る


実部式を微分した場合、aについてと、bについてのふたつになりますが、それぞれの微分式が実部式とどのような関係にあるかを確認しておきます。

kr_em5 の図
aについて微分した値とは、bを特定し、aのみを変数としたときに出来るaz座標図での傾きのことです。値が零とは傾きがない、つまり頂点か谷底かのいずれかということになります。ですから、微分式を零とする点を集めると、みな実部線がaについて山頂か、谷底の場所になっています。これを描くと微分式の零線図になります。

実部式を零とした点を集めると実零線になるのですが、a軸に平行な線で輪切りにした図(aZ座標)では、その実零線の零点が図の零点として現れます。もし、実零線零点がふたつあるなら、その間に必ず山か谷があるので、その頂点が微分線の零点となります。そして、実零線の零点が近づくに従い、微分線の零点も必ずその間にあるので、実零線の零点に挟まれる形になり、ふたつの実零点が重なるところでは、必ず微分線の零点も重なります。つまり、実零線の上下に膨れたところの先端を微分零線が必ず通過すると言うことです。

dk3 の図
以上のことは微分の本質からして当然のことなので、これで証明となっていますが、図でも同じことが言えるので、参考までに図を見ながら説明させていただきます。

右図は実零線と微分式k_re_a(a,b)の零線ですが、実零線が下に膨れた頂点のところを微分零線が通っています。    










■6の5■      実零線の左右の先端を微分零線が通る

kr_hj_a0 の図
bについて微分したときも同じことです。右図はa=0のときの実部線(青)とbについての微分線(赤)k_re_b(a,b) を重ねたものですが、実部の零点が実零線の通過点、頂点が微分線の零点となります。

aがプラス方向に動くと、実零線の幅が減少し、波の高さも低くなりますが、そのうちついに実部の零点がひとつになる場所があります。そこが実零線の左右の先端で、そこを微分零線(頂点の跡)が必ず通過しています。

左右の先端があるなら、そこは縦に切った線での分析からすると、ふたつの実零点が重なった場所なので、必ず微分零線が通りますし、実零線とbについての微分零線が交差しているなら、その点は必ず実零線の左右の膨らみの先端になっていなければなりません。 dk4 の図


そのことは、実際の作図においても確認できます。右図のa=0.5を虚零線が通過していますが、bについての微分零線 k_re_b(a,b) は、分析通りに実零線の左右の膨らみの先端を通過しています。










■6の6■      虚零線の左右、上下の先端を微分零線が通る


虚部式をaについて微分した場合と、bについて微分した場合も同じことです。虚部波にも零点があるので、その零点を集めてab座標に書き込むと虚零線が出来上がります。また、aについてと、bについてのそれぞれに波の頂点があるので、そこが微分係数零点になります。その零点を集めるとひとつの線になり、aについての微分零点を集めるとk_im_a(a,b)になり、bについての微分零点を集めるとk_im_b(a,b)という微分零線になります。

そして、k_im_a(a,b)は、虚零線の上下の膨らみの先端を通り、k_im_b(a,b)は左右の膨らみの先端を通ります。

また、図上で虚零線と微分零線が交差しているところがあったなら、その交点は、k_im_a(a,b)なら必ず虚零線の上下の膨らみの先端で、k_im_b(a,b)なら左右の膨らみの先端でなければなりません。これを参考までに図で説明しておきます。

im06 の図
右図はb=25あたりの実際の虚零線図ですが、虚零線が横U字形になって、左右の膨らみと、上下の膨らみを作っています。








■6の7■      実零線・虚零線と微分零線の関係


hj_hx01_n8 の図
実部波の山頂と谷底は傾きが零なので、微分係数も零となります。右図は実部が a=0.1 のとき、b=10から30までをbについて微分した図ですが、実部線(青)の山頂と谷底が綺麗に微分線(シアン)の零点になっています。

虚部波についても同じことが言えます。虚部波の山頂と谷底が微分線の零点になります。

nami115 の図
実零線・虚零線図で説明すると、実零線の間を必ず kr_re_a(a,b)の零線と、k_re_b(a,b)の零線がそれぞれ一本通ります。実際の図ではあまりに実零線と微分零線が近接しているので、間を通っていることが明確になりません。そこで、視覚的に判りやすいように作図したものを載せておきます。シアンがaについて微分した式 k_re_a(a,b) の零線、緑がbについての微分した式 k_re_b(a,b) の零線です。それぞれ、上下の膨らみと左右の膨らみの先端を通過していることが判ります。

nami65 の図
実際には実零線の間に1本の微分零線しか通りませんが、証明の前提としては、奇数個の微分零線が通る可能性を排除できません。ですから、想定による作図の場合には奇数個の微分零線を描くことがあります。しかし、2本とか4本ということはあり得ません。右図のx1とx2の間に偶数個の頂点が来るような図を書くことは出来ないからです。山の次には必ず谷が来て、山の次が山ということはないからです。

下の図は実零線図で確認したものです。実際にこのような図が現れることはありませんが、理論上は奇数個の微分零線がある可能性はあり、それぞれ別の左右の膨らみの先端を通過しています。





■6の8■      膨らみの先端以外のところを通る可能性はない

nami43 の図
膨らみの先端以外の所を通ることはあるのでしょうか。膨らみ方が特殊な場合、もしくは、重根・接触のような場合はどうでしょうか。ひとつは右図のような場合です。

普通の微分零線は頂上か谷底を通ります。ですから、線の片方が上りなら、もう片方は下りになります。しかし、特殊な事例の場合は上りが一端傾きが零となり、それからさらに上りになるという具合に変化します。

このようなことが起こり得ないことは、次のような論理で証明できます。
nami64 の図
このような特殊な事例があったと仮定します。この特殊な零線は途中から普通の零線に変わることはありません。なぜなら、特殊な線から普通の線に変わる点をpとすると、その同じ側に上る線と下る線があることになります。実部が上っていて下がるところは頂点なので必ず微分零線が通ります。すると、pで零線が枝分かれすることになるります。しかし、零線が枝分かれすることはないので、特殊な零線は普通の零線に繋がることはありません。

この特殊零線が a=-∞ や a=∞ に繋がることはありません。なぜなら、すでに第4部で分析したように、 a=-∞ と a=∞ では、実部、虚部ともにsin・cos曲線になっていて、特殊な零線は存在しないからです。唯一、存在する可能性を否定できないのは、輪になっている場合です。特殊な零線同士が互いに繋がることは可能で、それが輪になることはあり得ます。しかし、そのようなことが起きたとしても、次に述べる事情により、その零線を微分零線が越えることは出来ません。


nami62a の図
そこで、そのようなありえないことが起きたと仮定します。その想定に基づいて作図すると右図のようになります。さて、実零線図とはz=0のときに切り取ったab座標図のことですが、z=0の近傍で切り取ることも可能です。するとその場合にも実零線と似た図が描かれます。ただ、先の図とまったく同じと言うことはあり得ません。波は動いているので、何らかの違いが生まれているはずです。その形は、なだらかな線に変わるか、でこぼこの線に変わるかのどちらです。

もし、その線がなだらかで先端がないとします。すると、そこを微分零線が通ることはありません。しかし、z=0からわずかに変化しただけなのに、突然あるものが無くなるというのは奇妙です。その場合は、z=0の近傍よりさらにz=0に近い点で確認できるはずで、どこかで突然無くなっていることは間違いありません。しかし、そのようなことが起きることはあり得ないので、結論としては、最初の前提、つまり、特殊な零線が存在しないことを示しています。

もし、でこぼこの線があるならどうでしょうか。この場合は、必ずふたつの先端があるはずです。その先端を必ず微分零線が通っています。ですから、線としては2本になります。この2本が突然1本になることも矛盾です。このような矛盾が生まれるのは、最初の前提があり得ないことを示しています。

右図で説明すると、第2図のような微分零線があったとします。それが変化して第3図になることはありますが、第1図に変化することはあり得ないということです。

このような矛盾が生じるので、特殊な零線を微分零線が通過することはあり得ないことが証明できました。




■6の9■      実零線と虚零線は直交している


これは事実なので、とても驚かされます。k(s)の特質には驚かされましたが、単にk(s)がということでなく、このような現象が複素関数全体にあることを第5部で指摘しておきましたが、考えられないことであるがゆえに、非常に重要であると言えます。(■4の21■)で取り上げたテーマですが、ここで再述します。)

br44 の図
さて、複素空間上の関数では、すべての点で一回り(360度)全体の微分係数(実部と虚部)が存在しています。そして、そのうちのひとつの角度の実部、虚部の微分係数が定まると、一回りの微分係数すべてが定まります。k(s)も例外ではありません。

実零線は、実部零点の集合ですが、その点での角度は通常、零ではありません。実部波の図を見ても判るように、零点部分は斜めになっていて角度を持っています。ただ、その波の高さが低くなり、頂点がz=0になるとき、頂点が平らなので微分零点となります。微分零なので微分零線が通ります。ここが実零線と微分零線の交点となります。この交点での実部の微分係数は零、虚部は判りませんが、実部が決まったので、その点でのθ+pi/2方向の虚部の微分係数が決まります。答えは零です。ただし、リーマン零点以外では虚部値が異なるので交差しません。誤解がないように再度説明しますが、実零線と微分零線の交点は零です。その点における虚部の値は、通常は零ではありません。ですから、リーマン零点にはなりません。しかし、それにも係わらず、その点での虚部のθ+pi/2の方向の微分係数は必ず零となっています。つまり、90度の角度をもって零となるということです。これが一般的に、どの点でも成り立っています。

実零線と虚零線が交わる点がリーマン零点ですが、そこでも上記の法則は成り立っています。その交点は通常、bについての微分零点ではありません。しかし、実零線の侵入角に直角の方向(θ方向)での微分係数は必ず零になります。すると、θ+pi/2 方向の虚部の微分係数が定まり、その値は常に先のθ方向の実部値と同じですから、答えは零です。リーマン零点では、その虚部波がたまたま零になっているので、それを図示すると、実零線と虚零線が直交することになります。

つまり、何度も言ってくどくなりますが、リーマン零点以外でも直交していると言うことです。ただ、そこは零点でないので図示されないだけのことです。しかも、これはk(s)だけでなく、すべての複素関数のすべての点で成り立つ法則であるということが非常に重要なのです。

従来の実零線・虚零線図は上下左右の縮尺が異なるので、直交していることが判りにくくなっていますが、右図は縮尺を同じにして描いたものです。a=0.5、b=14.134725で交差していますが、直角であることはお判りになるでしょうか。




■6の10■      実零線と虚零線が接することはない (別証明)


実零線と虚零線が必ず直交するのですから、接することはあり得ないのは当たり前のことです。ただ、別の証明も可能なので、ご紹介しておきます。

実零線と虚零線は独立しているのではなく、互いに影響しあっています。つまり、少しずれたところで、お互いに影響を与えながら進んでいます。

nami101 の図
さて、右図の場合、p1は実零線の上下の膨らみの頂点です。ここで虚零線が接触しています。仮定法の前提として、このようなことがあったと仮定します。すると、この場合の実部をaで微分した式の零線は上下の膨らみの頂点p1を通ります。この式と虚部をbで微分した式とはまったく同じなので、この式の零線は虚零線の左右の膨らみの頂点を通らなければなりません。いま虚零線上にあるp1を微分零線が通っているのですが、ここは実零線と虚零線が接触する点で、しかも実零線の傾きが零であり、それと接する虚零線の傾きも零となっています。傾きが零なのに左右の膨らみの頂点になることは矛盾です。それゆえ、このようなことは起きることはなく、このような矛盾を起こす原因となった最初の前提、つまり「実零線と虚零線が接触している」という仮定が起こり得ないことを示しています。

nami100 の図
右図では、実零線が斜めのある角度をもって傾いている線上の点p1で虚零線が接触しています。p1を基点とするすべての方向に傾き(微分係数)が存在していることはすでに第5部で説明したとおりです。

この場合、点p1において、実零線に直交する方向での実部の微分係数は零となります。一方で、この点p1において、虚零線も同じ角度で侵入してきているので、先ほどの実部と同じ角度の方向での虚部の微分係数も零となります。

さて、■5の10■で説明したように、斜めの線における微分係数は、ひとつが定まると他の微分係数も定まります。p1での微分係数が、実部が零、虚部も零だとすると、θ+pi/2の線上での微分係数が、実部はθ線上の虚部の傾きとマイナスを介して等しい、虚部はθ線上の実部と等しいのですから、θ+pi/2の線上の傾きは、実部も虚部も零となってしまいます。さらにpi/2をプラスした角度も同じで、結局、このp1の周りの微分係数は、実部も虚部も零と言うことになります。

しかし、横U字形の左の膨らみの先端q1をbについての微分零線(シアン線)が走っています。また、p1を通るb軸に平行な直線L1があります。このL1上にはp1と、もうひとつ実部零点p2が存在しています。その間に微分零線が走っているので、p1とp2との間に微分零の点p3があることが判ります。そして、その点p3のbについての微分係数が零なのですから、p1のbについての微分係数は零にはなりません。なぜなら、微分零線がp1を通っていないからです。しかし、先の分析によると、p1の周りの微分係数はすべて零という結論が出ています。微分係数が零なのに、零でないというのは矛盾です。このような矛盾が起きるのは、最初に前提にした「実零線に、虚零線が接している」という命題があり得ないことを証明しています。




■6の11■      特異点は単独では存在しない


特異点(singularity)とは微分不可の点のことです。k(s)における特異点として(1,0)は良く知られています。それ以外にはありません。b=0上にはいくつもの零点がありますが、微分は可能です。無限点はありません。これは証明対象でないので、これ以上の説明はしませんが、b≠0において、特異点がないことは証明しておかなければなりません。そして、それはすでに ■2の13■で終わらせてあるので、ここで再述します。

k(1-s)/k(s)に、b≠0という条件で特異点がないことが証明されています。しかし、k(s)については、k(s)とk(1-s)が共に特異点である可能性を排除できないので、「特異点がない」とは断言できません。しかし、k(1-s)/k(s)≠0ではあるので、零点と同様、特異点も「ペアでしか存在しない」ことは証明できています。これを根拠として、ペアでない特異点は排除することが可能となったと理解して、証明を進めようと思います。




■6の12■      事例1


さて、これから具体的事例を挙げて、矛盾点を指摘してゆきたいと思います。事例1とは実零線が横U字形で、虚零線が横一本線のときです。a=0.5の両側にペアで存在するリーマン零点をx1,x3とします。その間の実零線とa=0.5との交点もまたリーマン零点になります。その点をx2とします。すると、実零線上にx1,x2,x3と並ぶことになります。そして、その点を虚零線も通過しています。

nami50 の図
これを図示すると右図のようになります。青が実零線、赤が虚零線、そして、実部式をbで微分した式の零線を緑で示してあります。先に証明したように、虚部式をaで微分した式も同じなので緑で示します。この微分零線は虚零線の上下の膨らみの頂点を通ります。この図ではp1を通ることになります。また、実零線の左右の膨らみの先端q1を通過します。

p2はx1とx3を結ぶ線上の点ですが、az平面を描いてみると、虚零線のふたつの零点の間には必ず傾きが零になる点が存在し、そこを微分零線が通ります。一方で、bz座標で考えると、a=0.5上の実零線は零点をふたつ持っていて、その間に必ず谷底があり、そこも必ず微分零線が通過します。

ですから、p1に向けて3方向から線が来ることになりますが、これがひとつの線として繋がることは不可能です。それゆえ、この図のような場合が起きることはありません。起きないことが起きるとは、最初に前提にした「リーマン零点がペアで存在する」という命題が起こり得ないことを証明しています。




■6の13■      事例2


上記の事例ではあまり使いませんでしたが、次のような論理も可能です。参考までに載せておきます。

nami59 の図
x1とx2の間にp1が来て、x2とx3の間にp2が来ると、p1q2p2を通る微分零線(緑線)と、q1を通る微分零線の2本が可能となり、これだと先に述べて種類の矛盾は無くなります。しかし、a=0.5を2本の微分零線が通過しています。微分零線が奇数であるのは許容されますが、偶数であることはありません。

a=0.5で縦に切ったbz座標で考えると、そこにはふたつの実部零点があります。横U字形の中はマイナスなので、零点の間はマイナスとなります。するとそのどこかに必ず谷底が存在し、そこを微分零線が通ることになります。2本の微分零線とはふたつの谷底という意味ですが、ふたつ谷底を作ると必ずひとつの山頂が出来るので、そこを微分零線が通り、合計3本の線になります。山頂を作らず谷底だけ、もしくは谷底を作らず山頂だけを作ろうとしても、それが不可能であることは自明のことです。

p1とa=-∞が繋がり、p2とq1が繋がると考えても矛盾はなくなります。しかし、この場合はa=0.5上に一本も微分零線が通らないことになります。a=0.5上に実部零点がふたつあるのに、その間に山か谷がないということはあり得ません。そして、山があるのに山頂がない、もしくは、谷があるのに谷底がないということはありえません。ですから、この場合も矛盾が生じます。

このように矛盾が生じるということは、最初の前提であるx1,x2,x3と並ぶリーマン零点が存在しないことを意味しています。





■6の14■      事例3

nami66b の図
事例2は実零線が横U字形で、虚零線が右横U字形のみのときです。この事例ではx1とx2の間にp1があり、x2とx3の間にp2があります。q1を通過した微分零線(緑)はp2を経由してp1に向かいますが、間に実零線の左右の膨らみがないので通り抜け出来ません。微分零線が途中で消えるというのはあり得ないことで、矛盾です。

また、微分零線は必ずp1を通りますが、それが北上したとき実零線とぶつかります。しかし、この実零線にも左右の膨らみはないので通過できず、矛盾が生じます。

また、それを通過したとすると、そこに微分零線がなければならず、それがさらに北上してゆきます。そこには右からはq1を通る微分零線、左からはq2を通る微分零線が集まりますが、これら3本の線分がひとつの線になることは不可能です。これも矛盾です。

このような矛盾が生じるということは、最初に仮定した「リーマン零点がペアで存在する」という命題が成り立たないことを証明しています。





■6の15■      事例4

nami33 の図
この事例では、p2から微分零線が南下しますが、そこに虚零線があるので、通り抜けられないと言う矛盾が生じます。







■6の16■      事例5

nami87 の図
事例3は、実零線が横U字形で、虚零線が左横U字形のときです。

この場合は実部をbで微分した式の零線がq1,q2を通っています。また、虚部をaで微分した式の零線もp1,p2を通過しています。これらがひとつの線に繋がることは不可能なので、最初の前提が間違っていることが証明されています。

また、実部横U字形の内部にはa=-∞から繋がっている虚零線が必ず存在しています。もし、虚零線の左横U字形がリーマン零点を通るなら、a=-∞からの虚零線が通るべき点が無くなってしまいます。これも矛盾です。




■6の17■      事例6

nami90 の図
事例4は、実零線が横U字形で、虚零線が輪のときです。この場合も微分零線が通るべき道がいくつか発生します。実零線の右の膨らみの頂点をq1とします。L1線上に実零点がふたつあるので、その間に必ず頂点があり、そこが微分の零点になります。それをq2とします。また、虚部をaで微分したときの零線がp1を通ります。すると実零線内部に3つの線分が発生し、これをひとつに繋ぐことは不可能になります。

また、実零線の横U字形の内部には必ず虚零線が走っています。それが実零線と交わる場所がリーマン零点となりますが、それを考慮すると作図が出来なくなります。接触する形があり得ないことは証明済みです。このような矛盾点が生じるのは最初の前提が成り立たないからです。





■6の18■      事例7

nami95 の図
実零線が輪、虚零線が横一本線の事例を検討します。この場合、実部をaについて微分した式の零線がp1とp2を通ることになりますが、その間に虚零線があるので、それを通り越すことが出来ず繋がらなくなります。






■6の19■      事例8


事例6は実零線が輪、虚零線が右横U字形のときです。これについては、事例5の虚零線が左に伸びただけで、矛盾の起こり方は同じです。

nami103a の図
ただ、輪の外に横U字形が来る場合はどうなるでしょうか。この場合は第3のリーマン零点として、a=0.5上のx3が必要になります。虚零線はx1,x3を通り、x2へ抜けています。この時、実部をaで微分した式の零線が輪の内部を走っていて、その頂点がq1とq2です。この微分零線は必ず虚零線を通過しなければなりません。しかし、ここに虚零線の左右の先端がありません。それゆえ、矛盾が生じます。




■6の20■      事例9

nami54 の図
事例8は、実零線が輪で、虚零線も輪になっているときです。この場合、実零線の左右の膨らみの先端をp1,p2として、虚零線の上下の膨らみの先端をp3,p4とします。するとp3,p4を通ったim線が閉鎖空間の中に入り込みます。また、p1,p2を通るhj線があります。hj(a,b)=im(a,b)なので、これらはひとつの線であり、ひとつに繋がらなければなりません。しかし、3本の線がこのように集まる場合は、ひとつになることは不可能です。このような不可能の結論になるのは最初の前提が間違っていたからであり、実零線と虚零線が輪になって重なることがないことが示されています




■6の21■      事例10

nami96 の図
事例9は、実零線が輪で、虚零線が横1本線と左横U字形のときです。この場合、リーマン零点が4つになり、横1本線が作るのがx1, x3、左横U字形が作るのがx2, x4 です。実零線の上下の先端がp1,p2とします。p1を通った微分零線はp2へ抜けてゆきます。この間に虚零線がないので、問題なく南下できて矛盾は何も生じません。しかし、虚零線の左右の膨らみがあるので、その先端p3,p4を通る微分零線があります。これがどこかに繋がらなければならないので、結局、p1とp4, p2とp3、もしくは、p1とp3、p2とp4と繋がる以外にあり得ません。しかし、p3, p4を通り抜けたあとにまた実零線があり、ここに上下の先端がないので、通り抜けられず、線が繋がりません。これは矛盾です。

このような不可能の結論になるのは最初の前提が間違っていたからであり、実零線と虚零線が輪になって重なることがないことが示されています

nami96b の図
ただし、右図のように虚零線に左右の膨らみの無い場合には矛盾はなくなります。この場合は、微分零線による分析では矛盾が生じないので、実零線と虚零線が直交するという法則を使います。右図の場合、実零線と虚零線が直交してないので矛盾がないのですが、直交すると上下・左右の膨らみが生じて、その先端を微分零線が通らなければならなくなります。

虚零線がx1と直交するなら、明らかに上側の膨らみが生じます。また、x3と直交するなら、明らかに右側に膨らみを生じさせます。必ず膨らみが生じるので、その先端を通る微分零線があり、その微分零線が実零線を通り抜けられなくなるので、すべての場合に矛盾が生じます。このような矛盾が起きるのは、最初の前提が間違っていたことを示しています。




■6の22■      事例11

nami98 の図
事例10では、実零線同士が交差しています。この場合、その交点が特異点となり、a=0.5の反対側にも特異点が存在しなければならなくなります。ところがこの図では反対側に実零線はないので、矛盾となります。

また、点p1から出ている虚零線の行き場が無くなっています。

これらの矛盾が生じるのは、最初に仮定した「リーマン零点がペアで存在する」という命題が成り立たないことを示しています。




■6の23■      事例12

nami72 の図
実零線どうしが交差する場合は、その交点が特異点となるので、a=0.5の反対側にペアとなる特異点が必要になりますが、それがないときは矛盾となります。

実零線内部の虚零線が、この事例の場合はx3,x4を通るので、問題はありません。しかし、q1を通る微分零線はq2も通りますが、そのあと北上し、虚零線とぶつかります。しかし、ここに虚零線の左右の膨らみがないので、通過できません。これも矛盾となります。このような矛盾を生じさせる最初の前提は成り立ちません。




■6の24■      事例13

nami93 の図
事例11では、x1とx2を別々の実零線が通過しています。この場合、q1,q2,q3を通る微分零線と、p1から北上する微分零線がひとつになることができないという矛盾が生じます。

また、x2で実零線と虚零線が接していますが、実零線と虚零線は接触することはありません。必ず直交します。

また、もし、虚零線が輪の中を通過するなら、リーマン零点がひとつ増えてしまい、k(s)=k(1-s)を成り立たせることが出来なくなります。

このような矛盾が生じるのは、この事例があり得ないことを証明しています。




■6の25■      事例14

nami99b の図
この事例では、p1からの虚零線がx1,x2を通ってリーマン零点を作っています。p2とp3を結ぶ虚零線は零点を作ることなく、互いに繋がりますが、p1からの虚零線と交差するとき、そこが特異点となります。特異点なら、a=0.5の反対側にも同じ点がなければなりませんが、この図ではそのような点は不可能です。それゆえ、この作図は成り立ちません。




■6の26■      結論


さて、以上で実零線・虚零線のすべての場合の検討が終わりました。それらすべてで矛盾が生じるとは、「リーマン零点がペアで存在する」という仮定法の前提が成立しないことを示しています。ゆえにa=0.5を除いて、0=<a<=1 の全領域でリーマン零点が存在しないことが証明されました。

0=<a<=1 ということは、すでにa>1, a<0 で証明されているので、b=0とa=0.5を除いて、aの全領域でリーマン零点が存在しないことが証明できたと言うことです。




■6の27■      a=0.5上にリーマン零点が存在することの証明


さて、以上で「リーマン零点不存在証明」は完成しました。しかし、一般的理解では、「a=0.5上にしかリーマン零点が存在しない」ということなので、a=0.5上にもリーマン零点が存在する証明を付け加えて、一般的理解にも配慮することにしました。「a=0.5上に存在する」とは、ひとつでも存在すればよいのですから、a=0.5上に最初に登場するa=0.5,b=14.13472514...がリーマン零点であることを証明します。

b=14.1347の近傍を通るのは実零線2です。この線がa>0.5にも存在することは計算によって確かめられます。この実零線の内部の実部値がマイナスで、外がプラスであることは計算で確かめられます。そして、この実零線の内部を虚零線が通っていることはすでに証明されています。b=14.1437近辺を通るのは虚零線3です。この虚零線と実零線がa<0で交わることがないことも■第3部■で証明してあります。この虚零線は実零線の外に繋がっていることは計算により確かめられます。さて、虚零線が実零線の内部から外部へと繋がるためには必ず実零線と交差しなければなりません。そして、その交点は必ず存在し、その点は必ずリーマン零点となります。今、「不存在証明」により、a=0.5以外にリーマン零点が存在しないことが証明されています。ということは、存在するリーマン零点は、必ずa=0.5上でなければならなくなります。以上で証明終わり。

計算によりそれを裏付けることができます。実部の零点を算出するとa=0.5,b=14.1347251421...、虚部の零点を算出するとa=0.5,b=14.1347251417...となります。誤差が出ているようなので、さらに精度を上げると、ますます一致桁が増えます。ですから、計算上も問題なく成り立っていることが判ります。




■6の28■      付録 (リーマン零点がa=0.5上に無限個存在することの証明)


さて、補足になるか、蛇足になるか判りませんが、「a=0.5上にリーマン零点は無限に存在する」ことはすでに証明されているそうです。その証明法をまだ見たことはありませんが、私なりにこの証明にもチャレンジしてみました。

まず、a=-∞において実零線と虚零線が交互に並んで、無限に存在していることは証明されています。■4の8■を参照してください。これらがa=0に向けて実零線、虚零線として伸びてきているわけですが、実零線はa=∞に到達しないことも証明されています。また、b=+-∞にも到達しません。とすると、-∞から出た実零線は必ず元に戻らざるを得ず、必ず横U字形になります。

虚零線はa=∞に到達するものがたくさんありますが、元に戻り、横U字形になる場合もあります。しかし、いずれにせよ、実零線の横U字形の内部で元に戻ることはありません。なぜなら、a=-∞において、実零線と虚零線は交互に並んでいるからです。

ゆえに、虚零線がa=∞に到達するか、別の虚零線と繋がるかするときには、実零線の外に出なければならず、その際、必ず実零線との交わることになります。そのときできる交点はリーマン零点です。

さて、■4の8■で、a=-∞において、実零線と虚零線が交互に無限に存在することは証明されています。この無限個の実零線と虚零線は必ずリーマン零点を形成するのですから、作られるリーマン零点の数は無限個ということになります。今、先ほどですが、リーマン零点があるなら、それはa=0.5上に存在することが証明できました。ゆえに、リーマン零点はa=0.5上に無限に存在することになります。









証明の第1部

証明の第2部、第3部

証明の第4部

証明の第5部

証明の第6部





表紙に戻る

ご感想、ご質問、その他のご意見は、Mailのアドレス (hirokuro@kana.club.ne.jp)へお願いします。
メール アイコン


   


inserted by FC2 system