リーマン仮説の証明   ver14 第5部




第5部      k(s) を微分する



■5の1■      実部線、虚部線とそのaについての微分線とbについての微分線


微分式が証明にどのように役立つかはあとに説明することにして、ここではまずその準備段階として実部式、虚部式、そして、それぞれをaについて微分した式、bについて微分した式、合計4つの式がどのようなものかを確認しておきます。この式の中身が証明の根拠として使われます。


実部式を再掲すると次のようになります。

P=cos(b*ln(n)), Q=sin(b*ln(n)), A=a-1, H=A^2+b^2, と表記します。

k_re(a,b) = 1 + cos(b*ln(2))/2^a + cos(b*ln(3))/3^a + cos(b*ln(4))/4^a + ... + cos(b*ln(n))/n^a +
(A*P-b*Q)/n^A/H - P/2/n^a + B(2)*(P*ra(2)+Q*rb(2))/2!/n^2/n^A + B(4)*(P*ra(4)+Q*rb(4))/4!/n^4/n^A + ....


B(0)=1, B(1)=-1/2, B(2)=1/6, B(4)=-1/30, B(6)=1/42, B(8)=-1/30, B(10)=5/66, B(12)=-691/2730, B(14)=7/6, B(16)=-3617/510, . . . . . . . . . . .

ra(2)=a, rb(2)=b
ra(4)=a^3-3ab^2+3a^2-3b^2+2a, rb(4)=3a^2b+6ab+2b-b^3
以下略。

その他のra(),rb() の計算については、別ページを参照してください。


虚部式を再掲しておきます。

k_im(a,b) = zt_im(a,b,n) +ber_im(a,b,n)

k_im(a,b) = - { sin(b*ln(2))/2^a + sin(b*ln(3)))/3^a + . . . + sin(b*ln(n))/n^a } + (-b*P-A*Q)/n^A/H + Q/2n^a + B(2)*(P*b-Q*a)/2!/n^2/n^A + B(4)*(P*rb(4)-Q*ra(4))/4!/n^4/n^A + B(6)*(P*rb(6)-Q*ra(6))/6!/n^6/n^A + ....



■5の2■      実部式をaについて微分


abZ座標の実部線を横に切るとbZ座標になります。この図にはaの変化に対応した波が現れます。その波の傾きを示すのがaについて微分した式となります。実部線の頂点や谷底が微分式の零となります。

この微分式は次のようになります。P,Q,b,n は定数扱いで、A,H,ra(),rb() に変数a が含まれています。便宜上、ra(), rb() を微分したものを ra_a(), rb_a() と表記することにします。

-ln(2)*cos(b*ln(2))/2^a - ln(3)*cos(b*ln(3))/3^a - ln(4)*cos(b*ln(4))/4^a - ... - ln(n)*cos(b*ln(n))/n^a +
P*{1-2*A^2/H-A*ln(n)}/n^A/H + b*Q/n^A/H*{2A/H+ln(n)} + ln(n)*P/2/n^a
-ln(n)*B(2)*(aP+bQ)/2!/n^2/n^A + P*B(2)/2!/n^2/n^A - ln(n)*B(4)*(P*ra(4)+Q*rb(4))/4!/n^4/n^A + B(4)/4!/n^4/n^A*{P*ra_a(4)+Q*rb_a(4)} + ....



em03 図
これをもとに計算プログラム(em001.java)を作り、任意の点で検算したところ、k(r)の傾きと一致したので、おそらくこれで正しいのでしょう。これで全体の零点図を作ってみました。

a=0上の緑の部分がマイナスのところ、つまり減少しつつある部分で、それ以外が増加しつつある部分です。オレンジの線が微分零を示していて、右方向に見て、減少しつつあるところから増加のところへ移行する場所が谷、増加から減少に変わるところが山を意味します。










■5の3■      実部式をbについて微分

実部式をbについて微分すると、次のようになります。ra(r)をbについて微分したものをra_b(r)とします。rb(r)をbについて微分してものをrb_b(r)とします。


-ln(2)*sin(b*ln(2))/2^a - ln(3)*sin(b*ln(3))/3^a - ln(4)*sin(b*ln(4))/4^a - ... - ln(n)*sin(b*ln(n))/n^a +
- (Q+ln(n)*bP+ln(n)*AQ)/n^A/H - 2b*(AP-bQ)/n^A/H^2 + ln(n)*Q/2/n^a
B(2)*(P*ra_b(2)+Q*rb_b(2))/2!/n^2/n^A + B(4)*(P*ra_a(4)+Q*rb_b(4))/4!/n^4/n^A + B(6)*(P*ra_a(6)+Q*rb_b(6))/6!/n^6/n^A + ....

ra_b(2)=0, rb_b(2)=1
ra_b(4)=-6ab-b6, rb_b(4)=3a^2+6a-3b^2+2
以下略。

以上の式を計算するプログラムとして hj001.java を用意しました。

hj05b の図
式の形からも判りますが、bについて微分した式は虚部の式と極めて近い関係にあります。これは図からも判ります。

右図の赤はa=0.5のときの虚部線ですが、青の微分線と同じようなところを通っています。これは何を意味するかと言うと、実部線を縦に割った線の山谷の頂点の場所が虚部線の零点に近いと言うことです。これは図からも確認できます。




ha2 の図

右図はbについての微分線の零点図ですが、虚部の零点図(先の図では赤)とよく似ていることを確認できます。















■5の4■      虚部式をaについて微分



虚部式 k_im(s) をaについて微分すると、次の式になります。ra(r)をaについて微分したものをra_a(r)とします。rb(r)をaについて微分してものをrb_a(r)とします。

ln(2)*sin(b*ln(2))/2^a+ln(3)*sin(b*ln(3))/3^a+...+ln(n)*sin(b*ln(n))/n^a
-Q/n^A/H+2A*P*b/n^A/H^2+P*b*ln(n)/n^A/H+2A^2*Q/n^A/H^2+A*Q*ln(n)/n^A/H-Q*ln(n)/2n^a+B(2)*(-ln(n)*(P*b+Q*a)+Q)/2!/n^2/n^A+B(4)*(-ln(n)*(P*rb(4)-Q*ra(4))+P*rb_a(4)-Q*ra_a(4))/4!/n^4/n^A+....


計算はim001.java




■5の5■      虚部式をbについて微分



虚部式をbについて微分すると、次の式になります。ra(r)をbについて微分したものをra_b(r)とします。rb(r)をbについて微分してものをrb_b(r)とします。

-ln(2)*cos(b*ln(2))/2^a - ln(3)*cos(b*ln(3))/3^a - ln(4)*cos(b*ln(4))/4^a - ... - ln(n)*cos(b*ln(n))/n^a +
+(-P+ln(n)*bQ-AP*ln(n)+2b(bP+AQ)/H)/H/n^A + ln(n)*P/2n^a + B(2)*(-ln(n)*Qb+P-aP)/2!/n^2/n^A+B(4)*(-ln(n)*(P*ra(4)+Q*rb(4))+(P*rb_b(4)-Q*ra_b(4)))/4!n^4/n^A+



これを計算する式としてin001.javaを作りました。




■5の6■      これらを分析すると


この6つの式を眺めると判りますが、互いによく似ています。特に実部をaについて微分した式と虚部をbについて微分した式、それと、実部をbについて微分した式と虚部をaについて微分した式はcos,sin部分がまったく一致してます。

em_in_a1 の図
どのくらい一致しているかをem(a,b)とin(a,b)で確認しておきます。右図はa=1のときの図ですが、あまりに綺麗に重なり、前の線が消えるのであえて少しずらしてあります。

ab座標の零点図をそれぞれ作ってみたところ、これもほとんど重なりました。それほど同じ値になるということですが、それを数値で確認すると次のようになります。

a=1, b=10 のときの値は、em(1,10)=-0.26227413...., in(1,10)=-0.26227420...
a=3, b=5 のときの値は、em(3,5)=4.9010703918E-2, in(3,5)=4.9010703851E-2

違いが出るのが小数点ー6桁以下なので見た目では区別出来ないことが判ります。

さて、以上の分析でしばらく証明作業を続けていたのですが、実部をbについて微分した式と虚部をaについて微分した式がまったく同じであることに気がついてからなのですが、こちらのほうも、もしかしたら同じかもしれないと思い、もっと精度を上げて計算してみました。すると、何とこちらもまったく同じ値になりました。また、式を整理すると結局は同じであり、em(a,b)-in(a,b)=0 であることが証明出来ました。式の整理の仕方は実部をbについて微分したときと同じなので、そちらを参照してください。





■5の7■      これらを分析すると その2


実部をbについて微分した式 hj(a,b) と 虚部をaについて微分した式 im(a,b) もよく似ています。ただし、プラスとマイナスが異なります。これは大きな違いですが、零点の場所には違いがないという特徴があります。注目すべき相違点の場所を赤で示しておきます。それぞれ3カ所あります。


-ln(2)*sin(b*ln(2))/2^a - ln(3)*sin(b*ln(3))/3^a - ln(4)*sin(b*ln(4))/4^a - ... - ln(n)*sin(b*ln(n))/n^a +
- ( Q +bP*ln(n)+AQ*ln(n))/n^A/H - (2AbP-2b^2*Q)/n^A/H^2 + Q*ln(n)/2/n^a
+ B(2)*(P*ra_b(2) + Q*rb_b(2))/2!/n^2/n^A + B(4)*(P*ra_a(4) + Q*rb_b(4))/4!/n^4/n^A + ....

ln(2)*sin(b*ln(2))/2^a+ln(3)*sin(b*ln(3))/3^a+...+ln(n)*sin(b*ln(n))/n^a
- Q/n^A/H + (bP*ln(n)+AQ*ln(n))/n^A/H + (2AbP + 2A^2Q)/n^A/H^2 -Q*ln(n)/2/n^a
+ B(2)*(-ln(n)*(P*b + Q*a) + Q)/2!/n^2/n^A + B(4)*(-ln(n)*(P*rb(4) - Q*ra(4)) + P*rb_a(4) - Q*ra_a(4))/4!/n^4/n^A + ....

両者の図を描いたところ、非常によく似ています。また、数値の点でも非常に良い精度で一致します。あまりに似すぎているので、計算間違いだと思い何度も式を検討しましたが、間違いが見つかりません。だいぶ時間を使ったあとですが、ようやく両方の式が数値の点でも一致することが判りました。似ているのではありません。hj(a,b)+im(a,b)=0 なのです。

ベルヌーイ数部分はnの増加と共に零に近づくので無視できます。残りの式は整理してゆく過程ですべて消えてしまいました。まさかと思いましたが、実に見事です。こういうこともあるとは・・・、いまだに「本当なのか?」との疑いを払いきれずにいます。

hj(a,b)+im(a,b)=0 なら、図を描く必要さえなくなります。しかし、一応せっかくすでに作ってしまったので、その図を載せておきます。

hj_im_a1 の図
a=1のとき、b=0からb=20までの図です。青と赤はちょうど上下反対の形です。オレンジ線は赤*−1の図で、まったく青と重なるので、少しずらして表示してあります。b=5のとき、hj(1,5)=9.6791941E-2, im(1,5)=-9.6791941E-2 で、符号は逆ですが、数値は完全に一致しています。







■5の8■      微分式の零点図


さて、実部式を微分した場合、aについてとbについてのふたつになりますが、それぞれ実部式とどのような関係にあるかを確認しておきます。


kr_em5 の図
aについて微分した値とは、bを特定し、aのみを変数としたときに出来る図の傾きのことです。値が零とは傾きがない、つまり頂点か谷底かのいずれかであることになります。ですから、微分式を零とする点を集めてみると、みな実部線がaについて山頂か、谷底になっています。







dk3 の図
実零線の図で確認すると実零線が下か上に膨れたところで微分線が交わっています。














kr_hj_a0 の図
bについて微分したときも同じことです。右図はa=0のときの実部線(青)とbについての微分線(赤)を重ねたものですが、実部の頂点が微分線の零となります。











dk4 の図
また、実零線が左右に膨れた先端をbについての微分零線(hj線)が通ります。














■5の9■      k(s), および零線は枝分かれや途切れることはない。


あとの証明の根拠として使うので、ここでk(s)、および、その微分式を図示したときの特徴を確認しておきます。

k(s)、および、その微分式を図示することが可能です。立体図というのは書きにくいので、abz座標を縦か横かに切って、bz座標か、az座標にして平面的に描きます。どこで切っても必ず実部線と虚部線を描くことが出来、しかも実部線も虚部線も連続した微分可能な線となります。また、それらを微分した式も再度微分可能で、それらは何度でも微分可能な構造になっています。 k(s)で微分不可の点は(1,0)だけです。

nami56 の図
そのような線なので、図示するとき、その曲線が途中で別々の方向へと枝分かれすることはありません。その理由は、もし枝分かれするような曲線なら、その枝分かれする点をpとします。そして、そのpにおいて微分します。すると、もし枝分かれすることがあるなら、そのpでは微分できません。なぜなら、枝分かれして傾きを特定できないからです。ところがk(s)、およびそれを微分した式のすべての点は連続していて、微分可能です。それゆえ、pのような点は存在しないということが証明できます。

k(s)=0 となる実零線、虚零線を描くことが出来ます。この実零線、虚零線も枝分かれしません。なぜなら、もし、実零線の右がプラスなら左はマイナスだったとしましょう。枝分かれする点があるなら、そこから分かれた線のひとつは当然右がプラスで左がマイナスです。もうひとつの線も右がプラスで左がマイナスです。ところが、ひとつの線ともうひとつの線の間はプラスでありマイナスであるということになります。これは矛盾です。実零線の右がマイナスで左がプラスのときも同じことです。また、これは虚零線でも微分線でも同じことです。すべて零線において成り立ちます。

また、枝分かれしないと言うことは、線が途中で無くなってしまうとか、途切れてしまうと言うこともありません。なぜなら、そのとぎれたところの直前では右か左がプラスで、その反対がマイナスになっているはずですが、途切れたところから先はプラスでもない、マイナスでもないと言うことになり、そのようなことはあり得ないので、零線が途中で途切れることもありません。




■5の10■      実零線・虚零線と微分零線の関係


hj_hx01_n8 の図
実部の波の山頂と谷底は傾きが零なので、微分係数も零となります。右図は実部を a=0.1 のとき、b=10から30までをbについて微分した図ですが、実部線(青)の山頂と谷底が綺麗に微分線(赤)の零点になっています。

虚部線についても同じことが言えます。虚部線の山頂と谷底が微分線の零点になります。

これを実零線・虚零線の図で確認すると、実部をaについて微分した式 em(a,b)の零線をemとすると、bを特定したときのa軸と実零線が2カ所で交わっているとき、そこが実部の零点なので、その間はプラスかマイナスかのいずれかであることは自明のことです。そして、その間のどこかに実部の頂点があるのですから、そこをem線が通ることになります。

nami65 の図
普通は1本だけですが、場合によっては複数の微分零線が通ります。ただ、その際、2本とか4本ということはありません。必ず奇数個の線になります。右図の例では3つの微分零点があるので、x1とx2の間に3本の微分零線が通ります。

実部をbについて微分した図と見なしてab平面図に予想される実零線と微分零線を描いてみます。計算上の実零線図には右図のような例はありませんが、理論上は3本の線が通る可能性はあります。しかし、2本の線が通ることはありません。









■5の11■      膨らみの先端以外のところを通る可能性

nami43 の図
膨らみの先端以外の所を通ることはあるのでしょうか。膨らみ方が特殊な場合、もしくは、重根・接触のような場合はどうでしょうか。ひとつは右図のような場合です。

普通の微分零線は頂上か谷底を通ります。ですから、線の片方が上りなら、もう片方は下りになります。しかし、特殊な事例の場合は上りが一端傾きが零となり、それからさらに上りになるという具合に変化します。





nami64 の図
このような特殊な事例があったとします。この特殊な微分零線は途中から普通の微分零線に変わることはありません。なぜなら、特殊な線から普通の線に変わる点をpとすると、その同じ側に上る線と下る線があることになります。実部が上っていて下がるところは頂点なので必ず微分零線が通ります。すると、pで微分零線が枝分かれすることになるります。しかし、微分零線が枝分かれすることはないので、そのような矛盾が起きるということは、最初の前提である「特殊な微分零線が途中で普通の微分零線に変わる」ことが起こり得ないことを示しています。


実零線の左右の膨らみの先端を、bについて微分したhj線が通ります。このhj線についてもem線と同じ分析が可能です。hj(a,b)=0 の点は実部の山頂と谷底を示していますが、特殊な事例として傾きが零であるだけで、山頂でも谷底でもない場合があることを排除できません。ただ、この場合もem線の時と同様、特殊な微分零線は普通の微分零線に繋がることはありません。




■5の12■      分析の範囲


さて、実零線・虚零線図を使って矛盾が生じることを示す予定ですが、ここで念頭に置くのは実際の実零線図ではなく、あらゆる可能な実零線・虚零線図です。そこですでに証明したり、説明してあることですが、再度、何が確定しているかを再確認しておきます。

a=∞には虚部の零点しかありません。a=-∞では実部の零点と虚部の零点が交互に現れます。b=∞には実部・虚部の零点はありません。b=0でa>0には、特異点であるa=1を除いて零点はありません。b<0はb>0とまったく同じなので、考察の対象から外してありますが、b>0で成り立てばb<0でも成り立ちます。これについては第1部ですでに説明してあるとおりです。

a=-∞の実部零点から出た実零線はa=0のb軸に到達するか、a<0のb=0に到達するかのいずれかです。今、a=0の線と交わる実零線のみを分析しているので、b=0に到達する実零線は無視することができます。a=0と交わった後の実零線はa=∞に行くことがなく、b=∞やb=0にも行かないので、a=-∞から出た他の実零線と繋がってひとつの線となります。この場合の実零線の形は、Uの字が横になった形なので横U字形と称することにします。

それ以外の実零線は計算上はないのですが、理論的には、どこにも繋がらない輪になる実零線を排除できません。それゆえ、閉鎖空間を作る輪になる実零線も適宜考察の対象に含めます。

虚零線は、a=∞からa=-∞まで繋がった一本の線として存在しています。b=∞に向かうことはありません。また、実際は a>0のb=0と交わることはありませんが、この証明はまだ思いつかないので、ここでは、そのような場合があったとしても差し支えないように考察してゆきます。

また、虚零線がa=-∞から出てきた他の虚零線と繋がって一本の線になることもあります。この場合、形としては実零線と同様に横U字形となります。

虚零線もa=-∞にもa=∞にも繋がらない輪になる場合が想定できます。これも適宜考察の対象に含めます。

以上の場合をすべて分析して、そのすべてに渡って矛盾が確認できれば、リーマン仮説証明は完成したことになります。




■5の13■      どこに矛盾が生じるか


さて、典型的事例から順次特殊な事例へと分析してゆきます。まずは横U字形の実零線の下側に虚零線が交わって3つのリーマン零点を作っている場合です。
a=0.5の両側にペアで存在するリーマン零点をx1,x3とします。その間の実零線とa=0.5との交点もまたリーマン零点であることはすでに証明してありますが、その点をx2とします。すると、実零線上にx1,x2,x3と並ぶことになります。そして、その点を虚零線も通過しています。

nami50 の図
これを図示すると右図のようになります。青が実零線、赤が虚零線、そして、実部式をbで微分したのがhj(a,b)です。虚部式をaで微分したのがim(a,b)です。それぞれの零線をhj, im とします。先に示したようにhj(a,b)=im(a,b) なので、hjとimは同じ線を意味しています。これを緑で示します。im線は虚零線の上下の膨らみの頂点を通ります。この図ではp1を通ることになります。hj線は実零線の左右の膨らみの先端q1を通過します。

p2はx1とx3を結ぶ線上の点ですが、az平面を描いてみると、虚零線のふたつの零点の間には必ず傾きが零になる点が存在し、そこをim線が通ります。一方で、bz座標で考えると、a=0.5上の実零線は零点をふたつ持っていて、その間に必ず谷底があり、そこをhj線が通過しています。

ですから、p1に向けて3方向から線が来ることになりますが、これがひとつの線として繋がることは不可能です。それゆえ、この図のような場合が起きることはありません。




nami55 の図
上記の矛盾が起きないような事例として右図のような場合が考えられます。x1,x2,x3は同じですが、x2とx3の間にp1,p2が発生している場合です。これだとq1からの線がp2を通り、そのままp1に繋がります。ここに矛盾はありません。

しかし、虚零線がx1を通過した後x2に到達するためには一度p3の点を作らざるを得ず、p3があるなら、そこをim線が通ることになります。この線はhj線と同じなので、どこかでhj線と繋がらなければなりませんが、hj線はa=-∞まで続くので、繋がる場所がありません。

このような矛盾が起きると言うことは、最初に仮定していたx1,x2,x3,p1,p2の点があるという前提が起こり得ないことを示しています。



nami66a の図
もう少し素直に考えると右図のようになります。この事例ではx1とx2の間にp1があり、x2とx3の間にp2があります。q1を通過した緑線はp2を経由してp1を通り、L1上の谷底を示すhj線に繋がります。このように考えると矛盾は生じません。

しかし、a=0.5上にもふたつの実部零点が存在しています。零点の間は山か谷になっているわけで、そうするとそこには必ず山頂か谷底があるはずで、そこを微分零線が通ることになります。しかし、その線はp2にも繋がることは出来ず、L1上の線にも繋がることはできません。すでにq1,p2,p1と繋がった線があるからです。しかし、このような微分線が途中で途切れることはなく、また枝分かれすることもないので、このような矛盾が生じる事例は存在しないという結論になります。




■5の14■      実零線の上側に零点が発生したとき

nami57 の図

実零線の上側に零点が発生したらどうでしょうか。a=0.5から等距離の零点をx1,x3とし、a=0.5上の零点をx2とします。そこを虚零線が通ることになります。虚零線の上側の出っ張りの先端p1をim線(グリーン)が通ります。また、実零線の左の先端q1をhj線が通ります。また、L1線で縦に切ったbz平面図に実部の零点がふたつあるので、その間を必ずhj線が通らなければなりません。これらの3本の線が中央で出逢うのですが、どうやってもひとつの線になることは出来ません。ですから、最初の前提であったx1,x2,x3 の点が並ぶという事例がこの条件下では存在しないことを示しています。




nami58 の図
p1付近にp2のような凹みがあれば、p1を通るim線は実零線と交わることなく外に出てゆき、矛盾は無くなります。しかし、新たにp3のような膨らみの頂点が実零線の内側に生じるので、やはり矛盾が生じます。









nami59 の図
x1とx2の間にp1が来て、x2とx3の間にp2が来るときには先に述べた種類の矛盾は無くなります。しかし、a=0.5を2本のim線が通過しています。微分零線が奇数であるのは許容されますが、偶数であることはありません。

a=0.5で縦に切ったbz座標で考えると、そこにはふたつの実部零点があります。横U字形の間はマイナスなので、零点の間はマイナスとなっているはずです。するとそのどこかに必ず谷底が存在し、そこをim線が通ることになります。2本のim線とはふたつの谷底という意味ですが、ふたつ谷底を作ると必ずひとつの山頂が出来るので、そこをim線が通り、合計3本の線になります。山頂を作らず谷底だけ、もしくは谷底を作らず山頂だけを作ろうとしても、それが不可能であることは自明のことです。

p1とa=-∞が繋がり、p2とq1が繋がると考えても矛盾はなくなります。しかし、この場合はa=0.5上に一本もim線が通らないことになります。a=0.5上に実部零点がふたつあるのに、その間に山か谷がないということはあり得ません。そして、山があるのに山頂がない、もしくは、谷があるのに谷底がないということはありえません。ですから、この場合も矛盾が生じます。

このように矛盾が生じるということは、最初の前提であるx1,p1,x2,p2,x3と並ぶケースが存在しないことを意味しています。





■5の15■      実零線が輪になっているとき


nami25 の図
実零線が輪になることは計算して作った実零線図上には見つかりません。しかし、無いということを証明するのは容易ではないので、この証明(ver14)では、輪があったとしても矛盾が生じることを示すことにしたいと思います。

右図のような輪があったとします。他の実零線はみな無限点に繋がっていますが、これは自分自身に繋がることにより閉鎖空間を作ります。そこにリーマン零点があるなら必ずa=0.5の両側にペアで存在していなければなりません。そこを虚零線も通過することになります。このような場合のリーマン零点はふたつか偶数であって、奇数になることはありません。a=0.5上で輪の輪郭と接触するだけのリーマン零点があるとするなら、数としてはひとつですが、これは普通のリーマン零点で、不存在証明の対象外となるので省きます。




nami42 の図
さて、右図のような場合があったとします。x1,x2はa=0.5から等距離のところにあります。そこを虚零線が通っています。p1,p3は実零線の左右の膨らみの先端です。そこを微分零線(hj線)が通ります。虚零線の下に膨れた先端をp2とします。ここを虚部をaで微分したim(a,b)の零線が通ります。hj(a,b)=im(a,b) なので、これらの3者はひとつの線として繋がらなければなりません。しかし、それが不可能であるということは、最初の前提である「閉鎖空間にリーマン零点が存在する」という命題が成り立たないことを示しています。


nami26 の図
閉鎖空間が実零線の横U字形の中にあるときも同じです。実零線のリーマン零点をx1,x3とすると、そこを虚零線が通り、a=0.5上の実零線との交点x2を通って外に出ます。実零線の左右の膨らみの先端p1,p3とします。虚零線の上下の膨らみの先をp2とします。a=-∞から繋がっている微分零線はp1を通って閉鎖空間の中に入ります。虚零線をaで微分したim線がp2を通過します。実部の左の膨らみの先であるq1を通り、p3を通過した線も閉鎖空間に入ります。結局、3本の線が閉鎖空間にあるのですが、これをひとつの線として繋ぐことは不可能です。それゆえ、このような矛盾を起こす最初の前提である「実零線の横U字形の中に閉鎖空間がある」という前提が成り立たないことを示しています。


nami54 の図
実零線の輪と虚零線の輪が重なることも考えられます。その場合が右図ですが、ここでも実零線の左右の膨らみの先端をp1,p2として、虚零線の上下の膨らみの先端をp3,p4とします。するとp3,p4を通ったim線が閉鎖空間の中に入り込みます。また、p1,p2を通るhj線があります。hj(a,b)=im(a,b)なので、これらはひとつの線であり、ひとつに繋がらなければなりません。しかし、3本の線がこのように集まる場合は、ひとつになることは不可能です。このような不可能の結論になるのは最初の前提が間違っていたからであり、実零線と虚零線が輪になって重なることがないことが示されています。





■5の16■      結論


さて、以上で実零線・虚零線のすべての場合の検討が終わりました。それらすべてで矛盾が生じるとは、リーマン零点がペアで存在するという仮定法の前提が成立しないことを示しています。ゆえにa=0.5を除いて、0=<a<=1 の全領域でリーマン零点が存在しないことが証明されました。

0=<a<=1 ということは、すでにa>1, a<0 で証明されているので、a=0.5を除いて、aの全領域でリーマン零点が存在しないことが示されたと言うことです。



■5の17■      a=0.5上にリーマン零点が存在することの証明


さて、以上のことで、私の定義によるリーマン仮説証明は終わりですが、一般的理解のリーマン仮説定義では、これにさらに「a=0.5上にリーマン零点が存在する」ことを証明しなければなりません。「存在する」とは、ひとつでも存在すればよいのですから、a=0.5上に最初に登場するa=0.5,b=14.13472514...がリーマン零点であることを証明します。

b=14.1347の近傍を通るのは虚実線3です。これはa=0でマイナスでa=1でプラスになっています。ですから、その間で必ずz=0を通過しなければなりません。その通過点は実部が零、虚部の零の点なのでリーマン零点となります。そのリーマン零点がa=0.5以外にないということが先ほど証明されたので、リーマン零点があるということはa=0.5上にあるということを意味しています。

計算上もそれを裏付けます。実部の零点を算出するとa=0.5,b=14.1347251421...、虚部の零点を算出するとa=0.5,b=14.1347251417...となります。誤差が出ているようなので、さらに精度を上げると、ますます一致桁が増えます。ですから、計算上も問題なく成り立っていることが判ります。

それゆえ、a=0.5,b=14.13472の近傍に必ずリーマン零点がひとつ存在することが証明されました。他のリーマン零点がもしあるとするなら、同じ論理でa=0.5上に存在しなければならなくなります。

それゆえ、b=0上にないリーマン零点(非自明の零点)は全て実部が0.5の直線上に並ぶことが証明されました。












証明の第1部

証明の第2部、第3部

証明の第4部




表紙に戻る

ご感想、ご質問、その他のご意見は、Mailのアドレス (hirokuro@kana.club.ne.jp)へお願いします。
メール アイコン


   


inserted by FC2 system