リーマン仮説の証明   ver20 第5部





第5部      k(s) を微分する



■5の1■      aについての微分式と、bについての微分式


微分式が証明にどのように役立つかはあとに説明することにして、ここではまずその準備段階として実部式、虚部式、そして、それぞれをaについて微分した式、bについて微分した式、合計4つの式がどのようなものかを確認しておきます。この式の中身が証明の根拠として使われます。


実部式を再掲すると次のようになります。

P=cos(b*ln(n)),  Q=sin(b*ln(n)),  A=a-1,  H=A^2+b^2,  と表記します。

k_re(a,b) = lim[n→∞] zt_re(a,b,n) +ber_re(a,b,n)

k_re(a,b) = 1 + cos(b*ln(2))/2^a + cos(b*ln(3))/3^a + cos(b*ln(4))/4^a + ... + cos(b*ln(n))/n^a +
(A*P-b*Q)/n^A/H - P/2/n^a + B(2)*(P*ra(2)+Q*rb(2))/2!/n^2/n^A + B(4)*(P*ra(4)+Q*rb(4))/4!/n^4/n^A + ....


B(0)=1, B(1)=-1/2, B(2)=1/6, B(4)=-1/30, B(6)=1/42, B(8)=-1/30, B(10)=5/66, B(12)=-691/2730, B(14)=7/6, B(16)=-3617/510, . . . . . . . . . . .

ra(2)=a, rb(2)=b
ra(4)=a^3-3ab^2+3a^2-3b^2+2a, rb(4)=3a^2b+6ab+2b-b^3
以下略。

その他のra(), rb() の計算については、別ページ(■1の6■)を参照してください。


虚部式を再掲しておきます。

k_im(a,b) = lim[n→∞] zt_im(a,b,n) +ber_im(a,b,n)

k_im(a,b) = - { sin(b*ln(2))/2^a + sin(b*ln(3)))/3^a + . . . + sin(b*ln(n))/n^a } +
(-b*P-A*Q)/n^A/H + Q/2n^a + B(2)*(P*b-Q*a)/2!/n^2/n^A + B(4)*(P*rb(4)-Q*ra(4))/4!/n^4/n^A + B(6)*(P*rb(6)-Q*ra(6))/6!/n^6/n^A + ....






■5の2■      実部式をaについて微分


abz座標の実部線を横に切るとaz座標になります。この図にはaの変化に対応した波が現れます。その波の傾きを示すのがaについて微分した式となります。実部線の山頂や谷底が微分式の零となります。

この微分式をk_re_a(a,b)と名付けます。式の中身は次のようなものです。P,Q,b,n は定数扱いで、A,H,ra(),rb() に変数a が含まれています。便宜上、ra(), rb() を微分したものを ra_a(), rb_a() と表記することにします。計算プログラムはem001.javaです。

k_re_a(a,b) = - ln(2)*cos(b*ln(2))/2^a - ln(3)*cos(b*ln(3))/3^a - ln(4)*cos(b*ln(4))/4^a - ... - ln(n)*cos(b*ln(n))/n^a +
P * {1-2*A^2/H-A*ln(n)} /n^A/H + b * Q * {2A/H+ln(n)} /n^A/H + ln(n)*P/2/n^a
- ln(n)*B(2)*(aP+bQ)/2!/n^2/n^A + P*B(2)/2!/n^2/n^A - ln(n) * B(4) * (P*ra(4)+Q*rb(4)) /4!/n^4/n^A + B(4)/4!/n^4/n^A * {P*ra_a(4)+Q*rb_a(4)} + ....

ra_a(2)=1, rb_a(2)=0,
ra_a(4)=3a^2-3b^2+6a+2, rb_a(4)=6ab+6b  です。



em03 図
これをもとに零点図を作ってみました。

a=0上の緑の部分がマイナスのところ、つまりk_re(a,b)が減少しつつある部分で、それ以外が増加しつつある部分です。オレンジの線が微分零を示していて、右方向に見て、減少しつつあるところから増加のところへ移行する場所が谷、増加から減少に変わるところが山を意味します。












■5の3■      実部式をbについて微分


実部式をbについて微分したものをk_re_b(a,b)とします。ra(r)をbについて微分したものをra_b(r)とします。rb(r)をbについて微分してものをrb_b(r)とします。計算プログラムはhj001.javaです。


k_re_b(a,b) = -ln(2)*sin(b*ln(2))/2^a - ln(3)*sin(b*ln(3))/3^a - ln(4)*sin(b*ln(4))/4^a - ... - ln(n)*sin(b*ln(n))/n^a +
- (Q+ln(n)*bP+ln(n)*AQ)/n^A/H - 2b*(AP-bQ)/n^A/H^2 + ln(n)*Q/2/n^a+

B(2)*(P*ra_b(2)+Q*rb_b(2)+ln(n)*(-Q*ra(2)+P*rb(2)))/2!/n^2/n^A + B(4)*(P*ra_b(4)+Q*rb_b(4)+ln(n)*(-Q*ra(4)+P*rb(4)))/4!/n^4/n^A + ....



ra_b(2)=0, rb_b(2)=1
ra_b(4)=-6ab-b6, rb_b(4)=3a^2+6a-3b^2+2
以下略。



hj05b の図
式の形からも判りますが、bについて微分した式は虚部の式と極めて近い関係にあります。これは図からも確認できます。

右図の赤はa=0.5のときの虚部線ですが、青の微分線と同じようなところを通っています。これは何を意味するかと言うと、実部線を縦に割った線の山谷の頂点の場所が虚部線の零点に近いと言うことです。これは図からも確認できます。







hj04 の図

右図のシアン線はbについての微分零線ですが、k_im(a,b)の虚零線(赤線)とよく似ています。

















■5の4■      虚部式をaについて微分



虚部式 k_im(a,b) をaについて微分した式をk_im_a(a,b)とします。ra(r)をaについて微分したものをra_a(r)とします。rb(r)をaについて微分してものをrb_a(r)とします。計算プラグラムはim001.javaです。

k_im_a(a,b) = ln(2)*sin(b*ln(2))/2^a+ln(3)*sin(b*ln(3))/3^a+...+ln(n)*sin(b*ln(n))/n^a
-Q/n^A/H+2A*P*b/n^A/H^2+P*b*ln(n)/n^A/H+2A^2*Q/n^A/H^2+A*Q*ln(n)/n^A/H-Q*ln(n)/2n^a+B(2)*(-Q-ln(n)*(P*b-Q*a))/2!/n^2/n^A+B(4)*(-ln(n)*(P*rb(4)-Q*ra(4))+P*rb_a(4)-Q*ra_a(4))/4!/n^4/n^A+....



k_im_a(a,b)が実部をbについて微分した式 k_re_b(a,b)とよく似ていることはすぐに気が付きました。しかし、当初、これらがマイナスを介して等しいとはまったく予想しませんでした。計算上の誤差があるので、微妙にずれていたからです。しかし、精度を上げて計算してみたところまったく同じ値になりました。これには驚かされました。。 ヽ(゚Д゚)ノ !!  こういうこともあるのですね。

複素関数で、実部をaについて微分した式と虚部をbについて微分した式が等しいことは、どの関数でも成り立ちます。また、実部をbについて微分した式と虚部をaについて微分した式はマイナスを介して等しくなります。このことは f(x)=x^5+x^3-4x+1 などの簡単な式でも確かめられます。

この現象についてはすでに知られているとのことですが、リーマン仮説証明の根拠として使って良いものかどうか?詳しいことは知りませんので、ここでは、それとは別に、kr_im_a(a,b)+kr_re_b(a,b)≡0 が成り立つことを私自身のやり方で証明しておくことにします。




■5の5■      k_im_a(a,b)=-k_re_b(a,b) の証明


k_im_a(a,b)=-k_re_b(a,b) であることは一見したくらいでは判りません。そこで、k_im_a(a,b)+k_re_b(a,b) として、これを整理して消える項目は消してしまいます。その結果は次の式になります。

-2Q/n^A/H+2b^2Q/n~A/H^2+2A^2Q/n~A/H^2 + B(2) * { -Q-P*ra_b(2)+Q*rb_b(2) - ln(n)*(Pb-Qa+P*ra(2)+Q*rb(2))} /2!/n^2/n^A + B(4) * { P*rb_a(4)-Q*ra_a(4)+P*ra_b(4)+Q*rb_b(4) - ln(n)*(P*rb(4)-Q*ra(4)+P*ra(4)+Q*rb(4))} /4!/n^4/n^A + . . .

この式が零になるとは、一見しただけでは判断できませんが、ピンク部分の式は整理すると、H=A^2+b^2 なので消えてしまいます。B(2)以下の式は、すべての分母にn^Aがあるので括りだし、残りの式を検討すると、分子がln(n)の次元であり、分母にはln(n)より次元の高いn^2,n^4,... があり、a,b は有限な値で、nは無限に拡大させる数なので、結局全体が零になります。これを先に括りだしたn^Aで割るのですが、aがマイナス方向に大きいとn^Aが無限小になり、これで割ると逆に無限大になる可能性があります。零と無限大を掛けるという場合は、別途検討することになりますが、aがマイナスのときについてはすでに証明が終わっています。ここでのリーマン仮説証明は、aが零から1の間に限定しているので、その範囲なら、n^Aも無限小にならず、これで割っても零*無限大という計算にはなりません。それゆえ、0<a<1 という条件では、先の式のB(2)以下の項目はすべて零と言うことになります。

結局、式のそれぞれの部分がすべて零ですから、最終的にはn→∞で全体が零となります。つまり、0<a<1 という条件付きで k_im_a(a,b)+k_re_b(a,b)=0 が証明できました。




■5の6■      虚部式をbについて微分


虚部式 k_im(a,b) をbについて微分した式をk_im_b(a,b)とします。(計算式はin001.java) ra(r)をbについて微分したものをra_b(r)とします。rb(r)をbについて微分してものをrb_b(r)とします。

k_im_b(a,b) = -ln(2)*cos(b*ln(2))/2^a - ln(3)*cos(b*ln(3))/3^a - ln(4)*cos(b*ln(4))/4^a - ... - ln(n)*cos(b*ln(n))/n^a +
+(-P+ln(n)*bQ-AP*ln(n)+2b(bP+AQ)/H)/H/n^A + ln(n)*P/2n^a + B(2) * (-ln(n)*Qb+P-ln(n)*aP) / 2!/n^2/n^A + B(4) * (-ln(n)*(P*rb(4)-Q*ra(4)) + (P*rb_b(4)-Q*ra_b(4))) / 4!/n^4/n^A+





■5の7■      k_im_b(a,b)=k_re_a(a,b) の証明


k_im_b(a,b)=k_re_a(a,b)なら k_im_b(a,b)-k_re_a(a,b)=0 なので、これを以下のように証明してみました。

まず、一見して同じ項目を消してしまうと、残りは次の式となります。

-2P*A^2/n^A/H^2+2bQA/n~A/H^2-2b*(b*P+A*Q)/n~A/H^2 + B(2)* { P-ln(n)*(bQ+aP)-P+ln(n)*(aP+bQ) /2!/n^2/n^A + B(4) * { P*rb_b(4)-Q*ra_b(4)-P*ra_a(4)-Q*rb_a(4) - ln(n)*(P*ra(4)+Q*rb(4)-P*ra(4)-Q*rb(4))} /4!/n^4/n^A + . . .

H=A^2+b^2 なのでピンク部分は零になります。B(2)以下の項目は、B(2)は零になり、B(4)のln(n)部分も零になりますが、B(6)以下も同じかどうかを確認するのが面倒なので、ここまで判っていることだけで証明を進めます。すると、B(2)以下のすべての分母にn^Aがあるので、括り出します。また、分子のすべてにln(n)があり、分母にはn^2, n^4 ... があり、その他の a, b, は有限の値を取ります。ここで、■5の4■ 同様に、0<a<1 という条件を付けます。すると、n^Aが有限化して、B(2)以下の項目すべてを合計したものは n→∞で必ず零になります。

ゆえに、0<a<1 という条件で k_im_b(a,b)-k_re_a(a,b)=0 が証明できました。





■5の8■      f(s)の定義


以上の証明の拡張として、一般に、複素関数では実部式のaについての微分と虚部式のbについての微分が一致します。また、実部式のbについての微分と虚部式のaについての微分はマイナスを介して一致します。これを以下のように証明してみました。

どのような複素関数であれ上記の法則が成り立ちますが、今回証明する対象は以下の表記が可能な関数に限定しておきます。これ以外の関数については、リーマン仮説証明の根拠として使わないからです。

まず、p(0),p(1),p(2), . . . となる数列を想定し、s=a+bi で、 f(s) = p(0) + p(1)*s + p(2)*s^2 + p(3)*s^3 + ... と表記できる関数を考えます。

この実部式は、

f_re(a,b) = p(0) + p(1)*a + p(2)*a^2 - p(2)*b^2 + p(3)*a^3 - 3*p(3)*a*b^2 + . . . ですが、この一般形は、

f_re(a,b) = Σ_[r=0,∞] p(r)* { a^r - C(r,2)*a^(r-2)*b^2 + C(r,4)*a^(r-4)*b^4 - . . . } となります。C(r,2)=2!(r-2)!/r! です。これをさらに整理すると、

f_re(a,b) = Σ_[r=0,∞] p(r)*{Σ_[q=0,r/2-1] a^(r-2q)*b^(2q)*C(r,2q)*(-1)^q } 
となります。注意すべき点としては、Σ_[q=0,r/2-1] はrが奇数の時で、偶数だとΣ_[q=0,r/2] でなければなりません。

虚部式の一般形は、

f_im(a,b) = Σ_[r=1,∞] p(r)* {C(r,1)*a^(r-1)*b - C(r,3)*a^(r-3)*b^3+ . . . } となります。これをさらに整理すると、

f_im(a,b) = Σ_[r=1,∞] { p(r)* Σ_[q=0,r/2-1)] C(r,2q+1)*a^(r-1-2q)*b^(2q+1)*(-1)^q) } 
となります。注意すべき点は、Σ_[q=0,r/2-1]はrが偶数の時で、奇数だとΣ_[q=0,r/2-1/2] となります。

さて、f_re(a,b)をaについて微分した式をf_re_a(a,b)とします。

f_re_a(a,b) = Σ_[r=0,∞] p(r)*{Σ_[q=0,r/2-2] (r-2q)*C(r,2q)*a^(r-2q-1)*b^(2q)*(-1)^q } 

f_im(a,b)をbについて微分した式をf_im_b(a,b)とします。

f_im_b(a,b) = Σ_[r=0,∞] { p(r)* Σ_[q=0,r/2-1)] (2q+1)*C(r,2q+1)*a^(r-1-2q)*b^(2q)*(-1)^q }

両式を比較すると、a^(r-2q-1)*b^(2q) の部分は同じです。残りを分析すると、fa_re(a,b)に登場する (r-2q)*C(r,2q)は、整理すると (r-2q)を消すことが出来、 r!/(2q)!/(r-2q-1)! となります。fb_im(a,b)に登場する (2q+1)*C(r,2q+1) を整理すると、(2q+1)を消すことが出来、 r!/(2q)!/(r-2q-1)! となります。両者は同じなので、これで一致が確認できました。

これで上記のf(s)表記可能な関数は、実部式のaについての微分と、虚部式のbについての微分はまったく一致するゆえに、f_re_a(a,b)=f_im_b(a,b) であることが証明できました。


次に、実部式をbについて微分したものをf_re_b(a,b)とします。虚部式をaについて微分したものをf_im_a(a,b)とします。すると、f_re_b(a,b) = - f_im_a(a,b) となることを以下のように証明しました。

f_re_b(a,b) = Σ_[r=0,∞] { p(r) * Σ_[q=0,r/2-1] (2q)*C(r,2q)*a^(r-2q)*b^(2q-1)*(-1)^q }

f_im_a(a,b) = Σ_[r=0,∞] { p(r) * Σ_[q=0,r/2-1)] (r-2q-1)*C(r,2q+1)*a^(r-2q-2)*b^(2q+1)*(-1)^q }

両式を比較すると違いが目立ちますが、r, q に数字を当てはめると同じ式が現れます。それはf_re_b(a,b)とf_im_a(a,b)でqの順番がズレるからです。つまり、f_re_b(a,b)でq=0のときは 2q=0, 2q-1<0 となり値を持ちません。f_re_b(a,b)でq=1のときがf_im_a(a,b)でq=0に対応します。(ただし符号が逆であることに注意が必要です。)そこで、f_re_b(a,b)のqをq+1に置き換えてみます。すると、f_re_b(a,b) = Σ_[r=0,∞] { p(r) * Σ_[q=0,r/2-1] (2q+2)*C(r,2q+2)*a^(r-2q-2)*b^(2q+1)*(-1)^(q+1) } となります。

この修正した式のa^(r-2q-2)*b^(2q+1)の部分は同じなので、残りを比較すると、(2q+2)*C(r,2q+2)=r!/(2q+1)!/(r-2q-2)! となります。また(r-2q-1)*C(r,2q+1)=r!/(2q+1)!/(r-2q-2)!  となります。両者は同じなので、全体の一致が確認できました。ただし、符号が逆になっています。

つまり、実部式をbについて微分したものと、虚部式をaについて微分したものとでは符号は逆ですが、式の内容は同じであり、f_re_b(a,b) = - f_im_a(a,b) と表わすことが出来ると言うことです。





■5の9■      f(s)を使ったk(s)の別証明


さて、f(s)の証明が出来たので、k(s)の証明に移ります。これについては■5の5■などで、すでに証明終わっていますが、f(s)を使うと別の証明が可能になるので、それも面白いと思い、ここに載せておきます。

k(s)=lim_[n→∞] zt(s,n)+ber(s,n) で、ber(s,n) = Σ_[r=0,∞] B(r)*(s-2+r)!/r!/(s-1)!/n^(s-1)/n^r  となっています。この中のn^(s-1)を括り出すと、ber(s,n) = Σ_[r=0,∞] 1/n^(s-1) * B(r)*(s-2+r)!/r!/(s-1)!/n^r となります。単に表記法を変えただけのことです。

この式の後半 B(r)*(s-2+r)!/r!/(s-1)!/n^r に階乗が登場しますが、これは表記の都合上のことで、具体的な数字を入れると階乗は消えて、sについての普通の関数が現れます。B(r)とn^rは微分については定数扱いですから、sがどのような値であれ、必ず f(s) = p(0) + p(1)*s + p(2)*s^2 + . . . と表記することが出来ます。それゆえ、この部分については先のf(s)の証明を使うことが出来ます。

そこで、f(s,n,r)=B(r)*(s-2+r)!/r!/(s-1)!/n^r として、ber(s,n) = Σ_[r=0,∞] f(s,n,r)/n^(s-1) と表記を変更します。

実部と虚部を分けて表わすと、ber(s,n) = Σ_[r=0,∞] (f_re(a,b,n,r)+f_im(a,b,n,r)*i )/n^(a-1+b*i ) となります。これを計算して実部だけを取り出すと、

(f_re(a,b,n,r)*P+f_im(a,b,n,r)*Q)/n^A となります。(A=a-1 です。)

虚部だけを取り出すと、

(-f_re(a,b,n,r)*Q+f_im(a,b,n,r)*P)/n^A となります。

実部をaについて微分した式は

(f_re_a(a,b,n,r)*P+f_im(a,b,n,r)*Q-ln(n)*f_re(a,b,n,r)*P-ln(n)*f_im(a,b,n,r)*Q)/n^A

実部をbについて微分した式は

(f_re_b(a,b,n,r)*P-ln(n)*f_re(a,b,n,r)*Q+f_im_b(a,b,n,r)*Q+ln(n)*f_im(a,b,n,r)*P)/n^A

虚部をaについて微分した式は

(-f_re_a(a,b,n,r)*Q+f_im_a(a,b,n,r)*P+ln(n)*f_re(a,b,n,r)*Q-ln(n)*f_im(a,b,n,r)*P)/n^A

虚部をbについて微分した式は

(-f_re_b(a,b,n,r)*Q-ln(n)*f_re(a,b,n,r)*P+f_im_b(a,b,n,r)*P-ln(n)*f_im(a,b,n,r)*Q)/n^A

このうち、まず、実部をaについて微分した式と虚部をbについて微分した式(ピンク色の部分)を比べます。f_re_a(a,b,n,r) = f_im_b(a,b,n,r) であることはすでに証明されています。f_im_a(a,b,n,r) = - f_re_b(a,b,n,r) も成り立ちます。残りはまったく同じですから、ber_re_a(a,b,n) = ber_im_b(a,b,n) は証明できました。

実部をbで微分した式と虚部をaで微分した式(そら色の部分)を比べると、f_re_b(a,b,n,r) = - f_im_a(a,b,n,r) が成り立ち、f_im_b(a,b,n,r) = f_re_a(a,b,n,r) が成り立ちます。残りは符号が逆になっているだけですから、ber_re_b(a,b,n) = - ber_im_a(a,b,n) が証明できました。


zt(s,n)についても同じことが証明できます。

zt(s,n)の実部をaについて微分した式と虚部をbについて微分した式とが同じであることは容易に計算できます。どちらも - Σ_[r=1,n] ln(r)*cos(b*ln(r))/r^a  となります。

zt(s,n)の実部をbについて微分した式と虚部をaについて微分した式もマイナスを介して同じであることは一目瞭然です。プラス・マイナスを無視すると、どちらも Σ_[r=2,n] ln(r)*sin(b*ln(r))/r^a となり、符号は逆になっています。 

以上の分析はそのまま k(s)に当てはまります。つまり、k_re(a,b) = lim[n→∞] zt_re(a,b,n) +ber_re(a,b,n) なので、実部をaについて微分したものは k_re_a(a,b) = lim[n→∞] zt_re_a(a,b,n) + ber_re_a(a,b,n) となり、虚部をbについて微分したものは k_im_b(a,b) = lim[n→∞] zt_im_b(a,b,n) + ber_im_b(a,b,n) となります。zt_re_a(a,b,n)=zt_im_b(a,b,n)、 ber_re_a(a,b,n)=ber_im_b(a,b,n) は先に証明したので、k_re_a(a,b)=k_im_b(a,b) が証明できました。

また、実部をbで微分したものは k_re_b(a,b) = lim[n→∞] zt_re_b(a,b,n) +ber_re_b(a,b,n) であり、虚部をaについて微分したものは k_im_a(a,b) = lim[n→∞] zt_im_a(a,b,n) + ber_im_a(a,b,n) となっています。zt_re_b(a,b,n)=-zt_im_a(a,b,n)、 ber_re_b(a,b,n)=-ber_im_a(a,b,n) なので、k_re_b(a,b)=-k_im_a(a,b) であることが証明できました。




■5の10■      斜めの角度での微分


さて、もうひとつの分析を付け加えておきます。上記の微分はaについてと、bについての微分でしたが、「aについての微分」とはa軸にそって微分係数を計算することで、「bについての微分」とはb軸にそって微分係数を計算することです。では斜めに切った線での微分係数はどうなるでしょうか。これも計算可能です。

br00b の図
たとえば、k(s)の実部を例にして説明すると、θの角度で斜めに線を引くと、その線上の実部の値を図示することが出来ます。そこに現れる波には傾きがあるので、それぞれの点で微分係数を計算することが出来ます。図のどこにおいても、またどの角度でも、微分係数を計算できます。

ある点p1を確定した上での計算方法は、a,bを任意に定めて s1=a+bi としてz1_re=k_re(s1)を計算します。虚部はまた別ですから z1_im=k_im(s1)を計算します。次にs2=a+r*cosθ+(b+r*sinθ)*i として、z2_re=k_re(s2), z2_im=k_im(s2) を計算します。それぞれ、(z2_re-z1_re)/r, (z2_im-z1_im)/r を計算します。あとは、rを小さくして再計算し、次にはさらに小さくしてゆくと、まもなく値は収束します。それが(a,b)におけるθ方向での微分係数となります。

非常に面白いことですが、L1に直交するL2線上でも微分係数を計算することが可能で、その実部の微分係数は先のz_imの値と等しくなります。また、虚部の微分係数はz_reとマイナスを介して等しくなります。a軸、b軸については先に証明したことですが、どの角度でも成り立っていることは驚くべきことで、 ヽ(゚Д゚)ノ !!  これはリーマン証明のための有力な根拠となります。




■5の11■      斜めでの微分係数を求める式 (計算数値の一部修正 09/04/23)


斜めの角度では通常の微分公式は使えません。しかし、一定の法則はあるので、その法則を調べたところ、以下のようになっていることが判りました。

複素関数では、驚くべきことですが、ある点のaについての実部の微分係数と虚部の微分係数が定まると、その他の角度の微分係数はすべて定まります。一般に3次元空間内の平面における傾きは自由に設定できるので、ある点でのa方向の傾きとその他の角度の傾きが関連するはずはありません。ところが複素関数では、実部と虚部が連動しているからなのでしょうか、自由な角度を取ることが許されません。どうしてそうなるのか・・・、まだうまい説明は思いつかないのですが、(a+b*i)*(c+d*i) = (ac-bd)+(ad+bc)*i ですから、実部と虚部が別々に動くことが出来ないと言うことなのでしょう。

ここでは、k(s) に限らず、すべての複素関数で成り立つ法則を説明します。

(注   「すべての」と書いてしまいましたが、成り立たない関数を発見しました。ですから、以下の法則が「成り立つ関数もあるし、成り立たない関数もある」とご理解ください。普通の複素関数では成り立っています。)

複素空間内の任意の点p1が定まったとします。この点におけるa方向からの傾きがθである線に沿った実部の傾きをr1, 虚部の傾きをr2 とします。すると、θ+pi/2 の方向での微分係数が定まり、実部は-r2, 虚部はr1 となります。θ+piでは、実部が-r1, 虚部が-r2、θ+3*pi/2 では、実部がr2, 虚部が-r1、θ+2pi で元に戻ります。

傾きの変化はsin曲線の式で表わすことが出来ます。驚くべきことに、どの関数であるかは関係ありません。r1,r2が同じなら、どの複素関数でも同じ波になる構造になっています。

たとえばということで、k(3+i)の点におけるsin曲線の求め方を説明します。簡略化するために、θ=0としておきます。これはa方向に微分したことを意味します。そのときの傾きは、r1=-6.8630601E-2, r2=1.4962373E-1 です。この点の周りの傾きを示すsin曲線は、t1*sin(θ+t2)なので、r1=t1*sin(θ+t2), r2=-t1*sin(θ+t2+pi/2) が成り立ちます。この式の -sin(θ+pi/2) は cos(θ) に書き直せますが、実部をcos( )、虚部をsin( )で表記するのが相応しいので、これを整理して、実部を r1=t1*cos(θ+t2) 、虚部を r2=t1*sin(θ+t2) とします。その上で、この連立方程式を解くと t1=0.16461293 、t2=2.0008516 となります。

そこで、これを検算しますが、θ=pi/4のとき、k(s)で計算した実部の傾きは f1=-0.15432911, 虚部は f2=0.057270791 となります。次に微分公式で θ=pi/4 の傾きを計算すると、実部は g1=-0.15432910, 虚部は g2=0.057270783 となり、見事一致します。

これは不思議な現象です。

あまり不思議なので、k(s)と無関係な関数で試してみます。y=x^2+x+3 というのはどうでしょうか。適当に思いついた関数です。これを複素数と考えて、x=a+biを代入します。そして、適当に (5,4)を選びました。

この点のaについての微分係数を計算します。すると、実部の値は11、虚部は8 と結構切りのいい数になります。次に t1*cos(θ+t2)=11, t1*sin(θ+t2)=8 として、t1, t2 を求めます。すると、t1=13.601470 、 t2=0.62879623 となります。

さて、これでθ=pi/4での微分係数実部を計算してみます。すると、2.1213209 となりました。これを手動で、y=x2+x+3の式から直接計算すると、2.1213203 となります。これで良しという感じですね。
(^^)




■5の12■      複素空間の特徴


上記の分析は非常にうまくいったので満足していますが、しかし、それにしても、複素空間は予想を超えた性質を持っているようですね。関数に影響されず、ただ、ある点でのa方向での実部微分係数と虚部微分係数さえ定まると、その点の各方向での微分係数はすべて定まるというのです。実部値や虚部値にも影響されません。そんなことがあり得るでしょうか。いまだに信じられない気持ちです。

複素空間についての分析は、リーマン仮説証明と直接関係するわけでありませんが、あまりに重要な現象なので、ここに補遺の形で載せておきます。

複素空間については、■1の8■で解説しましたが、実部のXYZ座標、虚部XYZ座標を重ね合わせたものです。これを今までは3次元の特殊な形と理解してきましたが、いわゆる3次元の概念では不適切であることに気が付きました。2*2次元というべき実体を持っています。2*2次元という概念が可能なのかどうか判りませんが、今まで話題になったことがないと思うので、ここで問題提起をしておきたいと思います。非常に面白い、検討に値するテーマだと思いますがどうでしょうか。

現在、4次元、5次元、11次元などが、物理学の分野で話題になっていますが、2*2次元というアイデアは耳にしません。2次元、3次元、4次元、・ ・ ・ と発展すると考えるのは、非常に判りやすいのですが、2*2次元とか、2*3次元という空間がないとは言い切れません。

複素空間という言い方は「複素数の空間」というイメージを与えますが、複素数はふたつの要素をもつ2次元で、平面で表現できます。複素空間は、複素数そのものではなく、「複素関数の空間」と理解すると概ね正しく理解したことになるのではないでしょうか。

さて、2*2次元が存在するとするなら、その代表例が複素空間です。空間なので外見は3次元ですが、その要素である実部と虚部がそれぞれ区別される空間として存在しています。当初、私はこのふたつの空間は相互独立であると誤解していましたが、2*2次元と考えると誤解は解けます。つまり、ふたつの空間があるのではないのです。2*2次元を表現できないので複素空間という概念で表現しているだけのことなのです。ですから、実部と虚部は同じ複素数の一要素であり、これを分離して、それぞれを独立した数として理解してはなりません。また、実部式と虚部式も式としては別のものですが、実体は、これも相互依存関係にあり、糾える(あざなえる)縄のようなになっています。

この特質を示すもうひとつの現象が「微分係数決定の法則」です。「微分係数決定の法則」とは、私が命名したもので、説明無しには何のことか判らないかもしれません。2*2次元の複素空間上には、実部と虚部を持つひとつの点が存在しています。ただし、空間を視覚的に見る限り、その実部と虚部は別々の点として見えますが、実体としてはひとつであると考えないといけません。

この空間上に複素面 f があるとします。この場合、実部の立体図と、虚部の立体面のふたつを描くことが出来ますが、その両者をひとつの面と理解したのが複素面 f です。この面上の点p でa方向から微分したときの傾き(微分係数)は、それぞれ実部の傾き、虚部の傾きとからなっています。abz座標では実部と虚部がそれぞれ別の点を占めているので、この傾きも別のものという印象を与えますが、複素空間では点pにおけるひとつの傾きの実部、虚部と理解すべきです。つまり、傾きそのものが複素数なのです。

a方向での傾きが通常の傾き(微分係数)ですが、b方向の傾き(微分係数)もあります。斜めに切った線上の傾きを計算することも出来ます。これらの傾きは独立したものではなく、a方向の傾き(微分係数)が決まるとその点の周り360度すべての方向からの傾き(微分係数)が決まります。これを「微分係数決定の法則」と名付けさせていただきました。もっと良い名前があればご紹介下さい。

「そんなことがあり得るのか」と思うのは私だけではないはずです。私などは、このような説明をしているにもかかわらず、気持ちの上では「そんなバカな!」という思いを消すことが出来ません。あり得ないことなのですが、今のところそのような現実以外は見つかりません。

この法則を検証することはすでにやっていますが、再度、別の言い方で説明しておきます。適当な関数f(x)を選び、それに x=a+bi を代入して複素数化します。そして、(a1,b1)という適当な点を選び、f(s)に代入します。すると (a2,b2)という答えが出るはずです。この点における傾きと言うことで、まず、a方向での傾き(微分係数)を求めます。

lim_[h→0] { f(s+h)-f(s) } / h 

式としてはこれでよいのですが、たとえばということで、具体例を挙げて説明します。f(x)=1/x とします。これを複素数化すると f(s)=1/s となります。分母に複素数が来ると計算しにくいので、分子分母に (a-bi)を掛けます。すると、f(s)=(a-bi)/(a^2+b^2) となります。実部は f_re(a,b)=a/(a^2+b^2) で、虚部は f_im(a,b)=-b/(a^2+b^2) です。

ここで (2,1)での微分係数を求めます。まず、a方向での微分ということで、実部は lim_[h→0] { (a+h)/((a+h)^2+b^2) - a/(a^2+b^2) } / h で計算します。答えは -0.12 です。虚部は lim_[h→0] { -(b+h)/(a^2+(b+h)^2)/h - (-b)/(a^2+b^2) } / h で計算します。答えは 0.16 となります。

b方向での微分も計算します。、実部は lim_[h→0] { a/(a^2+(b+h)^2) - a/(a^2+b^2) } / h で計算します。答えは -0.16 です。虚部は lim_[h→0] { -(b+h)/(a^2+(b+h)^2)/h - (-b)/(a^2+b^2) } / h で計算します。答えは -0.12 となります。

a+bi方向での傾き(微分係数)を求めることも出来ます。θ=pi/4 として、h=cosθ+i*sinθ とします。その上で、lim_[h→0] { f(s+h)-f(s) } / h を計算します。その結果、実部は -0.19798989... 虚部は 0.028284271... となります。

jn10 の図
θがどの角度でも傾きは存在するので、それを計算することは可能です。ぐるりと回ると360度になりますが、それをθを変数として図示すると右のようになります。

これはsin cos 曲線で、計算すると 実部は 0.2*cos(θ+2.2142974...) 、虚部は 0.2*sin(θ+2.2142974...) です。この式から θ=pi/4 を計算すると、実部 -0.19798989... 虚部 0.028284271... と、先ほどの計算結果と同じ答えを得ます。

以上は、任意の関数 f(s)=1/s を例としてやってみた結果ですが、どの関数でも同じ結果になることが非常に重要なところです。ある特定の複素空間点があり、その点の周りに複素面があり、連続していて微分可能なら、必ずその一周の微分係数はsin cos 曲線になっていて、t1*sin(θ+t2) と表現できるということです。この場合、上記のf(s)の例でも判るように、実部が t1*cos(θ+t2) なら 虚部は t1*sin(θ+t2) となっています。

(´▽`)!!

(追加説明   09/05/25)

上記の式は複素数の対数を使っても、また、極座標表示からも求められます。

たとえば、s1=x1+y1*i として、x1=-0.12、 y1=0.16 とすると、先の計算で t1=0.2 t2=2.2142974 が求められています。これは asin と acos を使って求めた結果ですが、以下の式を使うほうが便利です。

t1=e^(ln-re(s1) であり、また、t1=√(x1^2+y1^2) でもあります。どちらも 0.2 になります。t2=ln_im(s1) であり、また、t2=pi+atan(y1/x1) です。これは 2.2142974... になります。

また、微分係数決定の法則と名付けましたが、この実態は微分がひとつの平面を示していることからくる現象であることが判りました。2次元の場合は微分は接線の傾きを求めることと説明できます。この場合も関数に関係なく、右方法の傾きが決まると左方向の傾きは必ずそれにー1を掛けたものになります。この一致が3次元の場合に微分係数一致の法則として現れるということです。法則と言うほどのことでもなさそうですが、つまりは接している平面の傾きと言うことで、関数に関係しないことも当然のことになります。









証明の第1部

証明の第2部、第3部

証明の第4部

証明の第5部

証明の第6部

証明の第7部、第8部





■      ver 20 履歴

09/04/23   「5の11」と「5の12」に数値の書き間違いがあったので訂正しました。
09/05/25   「5の12」に追加説明。






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