リーマン仮説の証明   ver20.2 第7部、第8部





第7部    k(1-s)/k(s) を分析する




■7の1■      k(1-s)/k(s)の零線図


k(1-s)/k(s)は第2部での証明に使った式ですが、ここでも有益な働きをしてくれます。ただし、最初にお断りしておきますが、これで全部証明が出来たわけではありません。これをもってしても矛盾が生じないケースが残ったので、さらなる別のやり方が必要になりました。それは第8部で取り上げます。当面、この第7部では、k(1-s)/k(s)を使って、第6部で残っていた事例の中で、このやり方でどのような矛盾が生じるかを示し、矛盾のあるものを排除して、証明の範囲をなるべく狭めておきたいと思います。


k(1-s)/k(s)の式を再掲しておきます。

k(1-s)/k(s) = s! *2*cos(pi*s/2) / { s*(2*pi)^s }

kv00 の図
この式にも実零線・虚零線があり、零線図を描くことが出来ます。k(s)の図とだいぶ違うという印象ですが、しかし、両者を重ねてみると、aの絶対値の大きいところではほとんど重なります。



















kv00 の図
この図の左半分では両者は重なりますが、右半分は別の図形になっています。ただし、k(1-s)はk(s)とa=0.5を基準に左右対称なので、右半分についてはk(1-s)と重なる構造になっています。

もし、k(s)にリーマン零点が横に並ぶような歪みが生じるなら、k(1-s)にも同じ形が現れます。そして、k(1-s)/k(s)にも何らかの歪みが生じるはずだと思われます。そこで、第6部で矛盾を指摘できなかった事例について、このk(1-s)/k(s)でどのような形になるかを検討して、そこにもし矛盾が生じるとするなら、それはk(s)から来たものと認定することが出来、そのような図の事例が起きないことが証明されたことになります。

新しい形を知る手がかりは、k(s)とk(1-s)の零線の交点が次の新しい関数における零線の通過点になることです。

s1をk(s)上の点、s2をk(1-s)上の点として、これらが重なっているとします。s1=x1+y1*i, s2=x2+y2*i とすると、これを割るとは、s2/s1 = (x2+y2*i) / (x1+x1*i) ですから、(x1-y1*i) * (x2+y2*i) / (x1^2+y1^2) となります。 k(s)の実零線とは実部が零で虚部が値を持つ場所なので、その場所はすべてx1=0となっています。k(1-s)の実零線とは、x2=0となる複素点の集合です。k(s)とk(1-s)の実零線が交差する点での計算結果は必ず (y1*y2+0i)/(0^2+y1^2) となります。虚部が零なので、ここはk(1-s)/k(s)の虚零線が通る場所となります。

k(s)の虚零線とk(1-s)の虚零線の交点は、y1=0, y2=0 ですから、s2/s1の答えは (x1*x2+0i)/(x1^2+0^2)となり、虚部が零となり、やはり虚零線が通ります。

k(s)の実零線とk(1-s)の虚零線の交点はx1=0, y2=0 の点ですから、答えは (0+y1*x2*i)/(0+y1^2) となります。これは実部が零なので、ここを実零線が通ることになります。

k(s)の虚零線とk(1-s)の実零線の交点は、同じく実部が零になるので、実零線が通ることになります。

これにより、新しく出来る零線図の大枠が決まってきます。

br08c の図
右図はk(s)とk(1-s)の零線図をa=0.5を基準に重ねたものですが、実零線同士の交点と虚零線同士の交点は新しい虚零線が通る道となるので、目印にピンク点を付けておきます。実零線と虚零線の交点は、実零線が通る道となるので緑点を付けておきます。リーマン零点はどちらも通らないので黒点にしておきます。この図と先のk(1-s)/k(s)の零線図を重ねると、新しく出来たk(1-s)/k(s)の実零線が緑点を、虚零線がピンク点を通っているはずです。この図はやや小さすぎたので、あまりはっきりしませんが、拡大した図を作れば、そのことはすぐに非常にはっきりと判ります。









■7の2■      実虚零線の通り道(その1)


以上の分析をさらに一般化して論じてみたいと思います

関数f(s)をg(s)で割るとき、f(s),g(s)とは別の場所に実虚零線が生じますが、以前の関数の実虚零線の交点は必ず新しい関数の零線の通り道となります。交点はあちらこちらに出来ますが、交点であるかぎり、その点の周りに4つの区域が発生します。それらをA,B,C,Dと名付けます。

その交点を通る零線が、実零線のこともあり、虚零線のこともありますが、この2種類だけなので、その組み合わせは4通りです。そこで、この4通りについてそれぞれ、A,B,C,Dがどの零線の通り道になるかを分析します。

nami137 の図
そのために、まず、もっとも基本的図としてひとつの線で区切るときに出来るふたつの区間A,Bを先に分析します。その区切り線がf(s)のものか、g(s)のものかで分析が異なり、また、実零線か、虚零線かでも異なります。ですから、それぞれを場合分けして、個別に議論する必要があります。

まずは、区切り線がf(s)のもので、実零線の場合を分析してみます。Aのf(s)実部が+なら、Bのf(s)実部はーとなります。虚部は+かー、いずれにせよ、A,Bは同じです。また、g(s)の実部、虚部はこの図の中に区切り線がないので、すべて同じ符号になります。f(s)=x1+y1*i, g(s)=x2+y2*i として、f(s)/g(s)を実行すると、(x1+y1*i)*(x2-y2*i)/(x2^2+y2^2) となり。符号を調べるだけなので、分母は無視すると (x1*x2+y1*y2)+(-x1*y2+y1*x2)*i となります。

f(s)のA実部が+、虚部が+ということなので、(+,+)と表記します。g(s)の実部が+、虚部が+なら、(+,+)ということで、(+,+)/(+,+)=(+,?) となります。答えの虚部は (-x1*y2+y1*x2) で、+にもーにもなりうるので、これを?で示します。つまり、新しい関数の実零線はA区域を通ることはできません。なぜなら、この区域の実部は常に+で零になることはないからです。虚零線はここを通ることが出来ます。なぜなら、印が「?」で、+もーもありうるので、その間の0もあり得るからです。もっとも、「通りうる」とは「通らないこともある」という意味も含むことにご注意下さい。

Bは(-,+)/(+,+)=(?,+) となります。ですから、ここは実零線が通りうる地区で、虚零線は通りません。

A虚部の符号が異なることもあります。その場合は、A (+,-)/(+,+)=(?,-)で、Bの実部符号は逆、虚部符号は同じですから (-,-)/(+,+)=(-,?) となり、Aに実零線、Bに虚零線が通ります。

同じことをg(s)の実部、虚部の符号を替えてやってみる必要がありますが、ここでは結果だけを書いておきます。すべての場合において、Aが実零線なら、Bは虚零線、Aが虚零線ならBは実零線となり、必ずAとBでは反対の零線が通りうる結果になります。

さて、今度は、区切り線が虚零線の場合を検討します。虚零線とはAとBで虚部の値が異なることを意味しています。ですから、Aで (+,+)/(+,+)=(+,?) ならば、Bは (+,-)/(+,+)=(?,-) となります。ここでも実部の値を変えて再度やってみる必要がありますし、g(s)の符号を変更してやってみる必要があります。その途中の作業は省略しますが、結論はどれも同じで、AとBでは別の零線が通ることになります。

今度は、f(s)ではなく、g(s)の区切り線であったとして、同じようにすべての符号の場合を検討します。g(s)なので、たとえば、区切り線を実零線として、A地区の符号を(+,+)とすると、f(s)のB地区の符号は(+,+)となります。しかし、割るほうの符号が変化して、(+,+)/(+,-)=(?,+) のような結果になります。この場合も結論は同じで、Aに実零線と虚零線のどちらかが通ると、Bはその逆の零線が通ります。

このように、すべての場合において、区切り線があるなら、その両側では必ずひとつの零線が通れない状態となり、反対側は通りうる状態となります。この結論は、一般の関数f(s)を前提にしているので、すべての複素関数のあらゆる場合に当てはまります。



実零線・虚零線により、4つの地区に分けられたとしても同じです。区切り線が実零線であれ、虚零線であれ、区切られた区間では別々の零線が通ります。ですから、その交点が緑点(実零線の通り道)ならば、その4つの地区のどれでも通りうるのでなく、必ず点で接している地区を通ることになり、隣り合った地区を通ることはありません。

実零線同士、虚零線同士により4つの地区に分けられても同じ結論です。隣り合った地区を同じ零線が通ることはありません。必ず点の反対側の地区を通ります。




■7の3■      実虚零線の通り道(その2)


以上の分析から言えることは、「同じ地区に実零線と虚零線が同時に通ることはない」ことです。A,Bの符号をすべての場合にわたって調べたのですから、これはすでに証明された命題となっています。しかし、前の説明はやや漠然としてたので、再度書き直して、少し判りやすくしておきます。

実零線も虚零線も通過しうると言うことは、f(s)/g(s)の結果である { (x1*x2+y1*y2) + (-x1*y2+y1*x2)*i } / (x2^2+y2^2) の実部も虚部も符号が不定と言うことです。記号で表記すると (?,?) ということです。f(s)、g(s)の実部・虚部の符号を変化させて、すべての場合に渡って検証してみます。

f(s), g(s) の符号を (+,+)のように現わします。あとは、(+,+)/(+,+) の符号を機械的に変更して、すべての場合を検証するだけですが、全部で 2^4=16 通りあります。(+,+)/(+,+)=(+,?), (+,+)/(+,-)=(?,+), (+,+)/(-,+)=(?,-), あとは省略しますが、このすべての場合において 答えが(?,?)となることがありません。それゆえ、「同じ地区に実零線と虚零線が同時に通ることはない」ことが証明できました。


もうひとつ別の証明を付け加えます。もし、同じ地区を実零線と虚零線が同時に通過していたとすると、それに隣接する地区にはどちらも通過し得ないことになります。それに隣接する地区にはどちらも通過できることになります。この連鎖は無限に可能なので、すべての地区で実零線と虚零線が同時に通過しうることになり、別々に通過することは出来なくなります。

しかし、先の分析の最初の事例において、f(s)/g(s)のとき、実零線と虚零線が別の地区を通ることが証明されているので、「すべての地区を実零線と虚零線が同時に通過するか、ともに通過できない」という命題への反証となっています。それゆえ、「同じ地区に実零線と虚零線が同時に通ることはない」ことが証明されました。




■7の4■      実虚零線の通り道(その3)


もうひとつの法則があります。それは「新しい実虚零線は以前の実虚零線の交点以外の零線を通過することはない」ことです。それを証明すると以下のようになります。

f(s)=x1+y1*i 、g(s)=x2+y2*i とすると、f(s)/g(s) = { (x1*x2+y1*y2) + (-x1*y2+y1*x2)*i } / (x2^2+y2^2) となることはすでに示しています。「新しい実零線がf(s)の実零線(交点を除く)を通過した」と仮定します。先の命題の逆を仮定するので、その通過点は交点以外とします。すると、実零線なので x1*x2+y1*y2=0 かつ x1=0 となります。すると、y1*y2=0 となり、y1=0 もしくは、y2=0 となります。しかし、y1=0 、y2=0 とは、そこを虚零線が通ることを意味していて、その点が交点となり、最初の前提に矛盾します。

「新しい虚零線がf(s)の実零線を通過した」と仮定しても同じ矛盾が生じます。虚零線なので、-x1*y2+y1*x2=0 かつ x1=0 なので y1*x2=0 です。y1=0 とは、その点を虚零線が通ることを意味し、x2=0 は実零線が通ることになります。これは最初の前提と反します。

f(s)ではなく、g(s)の実零線、虚零線に替えても同じ矛盾が生じます。それゆえ、最初の前提である「交点以外の零線を通過する」という前提があり得ないことを意味し、結果的に最初の命題「新しい実虚零線は以前の実零線・虚零線の交点以外の零線と交わらない」ことが証明されました。





■7の5■     k(1-s)/k(s)における実虚零線


kv06 の図
さて、以上の分析を踏まえて、再度、k(1-s)/k(s)の実虚零線の通り道を確認しておきます。k(s)図の左側は実零線も虚零線も右肩下がりで、k(1-s)図の左側は虚零線のみで、だいたい真っ直ぐ横に伸びています。その重なりを大まかな図にすると右のようになります。

格子状の交点のうち、実零線と虚零線の交点は実零線、虚零線と虚零線の交点は虚零線になるので、その通り道の可能性はひとつしかなく、結果的にf(s)図の実零線、虚零線と似たような線になります。それがa=-1あたりまで続きいていています。その後、実部のk(1-s)/k(s)零線は自然な流れでa=0を通過して、aのプラス部分へと進みますが、k(s)実零線の方が乖離して、a=0.5あたりで丸みの先端を作り横U字形となります。虚部のk(1-s)/k(s)零線も自然な流れで、k(1-s)/k(s)実零線と並行してaのプラス部分へと進み、左右対称なので、すぐに右肩上がりで上り始めます。それに対して、k(s)の虚零線は横に真っ直ぐ伸びてゆきます。




■7の6■      k(s)とk(1-s)/k(s)の実虚零線は近接する


さて、ここでひとつ証明しておくべき命題があります。先の図からも明らかですが、a=-∞からa=0に最も近い交点まで、k(s)とk(1-s)/k(s)の零線同士が互いに糾える縄の関係で、常に近接し、絡み合っています。a=0.5を基準に左右対称ですから、右側ではk(1-s)の実虚零線とk(1-s)/k(s)の零線が同じ関係にあります。これはあとの証明の根拠のひとつになるので、確実であることをここに論証しておきます。

その論証の材料となる事実は、k(s)の虚零線がa=+∞に向かって横に真っ直ぐ伸びていて、実零線は伸びずに横U字形を作ることです。k(1-s)では、それがa=-∞に向かう現象になるので、aのマイナス部分には、k(1-s)の虚零線しかなく、k(1-s)の実零線は通っていません。ですから、k(s)の実零線とk(1-s)の虚零線の交点はk(1-s)/k(s)の実零線が通るところとなり、k(s)の虚零線とk(1-s)の虚零線の交点はk(1-s)/k(s)の虚零線が通ります。この交点は、k(s)の虚零線がa→-∞とb→∞に向けていくらでも存在しているので、交点もa=-∞に向けていくらでも存在しています。

無限から逆にたどると、a=-∞から、a→0に向けて交点ごとに同じ実零線同士、同じ虚零線同士が同じ値になり、糾える縄状態となります。それがa=0にもっとも近い交点まで続くわけですから、その交点までは近接していることになります。また、糾える縄状態にならない零線はないのですから、k(s)の零線とk(1-s)/k(s)の零線は一対一対応していて、フリーな零線はひとつもないことになります。




■7の7■      どこに矛盾が?


nami119b の図
さて、以上の交点と零線の関係をもとに、k(s)で横U字形が並んでペアでリーマン零点が生じるときにk(1-s)/k(s)ではどのような図になり、そこにどのような矛盾が生まれるかを見てみたところ、残念ながらこのやり方では、ほとんどの場合、何も矛盾は起きませんでした。絶対あり得ないと思われるクニャクニャとした実零線と虚零線が生まれますが、これが「あり得ない」と言うためには、さらに別の証明を付け加えなければなりません。

まずはここで、どのように矛盾が現れないかを示しておきます。

図1はペアでリーマン零点が現れるひとつの事例です。第1虚零線が第2虚零線と繋がり、第3虚零線は外に流れています。黒点がリーマン零点で、黒縦棒がa=0.5です。

k(1-s)図はこれをa=0.5を基準に左右反転させたものです。k(1-s)/k(s)の実虚零線は、k(s)とk(1-s)を重ねたときに出来る交点を通るので、図を重ねてみたのが次の図です。たくさんの交点が出来ています。実零線同士・虚零線同士の交点をピンク点で示します。実零線と虚零線の交点を緑点で示します。ピンク点はk(1-s)/k(s)の虚零線、緑点は実零線の通り道になります。黒点はリーマン零点ですが、k(1-s)/k(s)の場合、ここを実零線と虚零線が同時に通ることがないことは第2部で証明してあります。

四角形の対角上に同種の交点が出来ているので、縦にも横にも繋がる可能性がありますが、ここは横にしか通ることが出来ません。なぜなら、実際の実虚零線図を「6の1」に載せてありますが、図示できる範囲の実虚零線は皆横に走っています。ですから、図2の上下に隠れている実虚零線は横に走っているわけで、図の中だけ縦に走ると、横に走っている零線とぶつかり矛盾が生じるからです。必然的に図3に描かれたような実虚零線(緑線、ピンク線)が走ることになります。少しクネクネしていますが、矛盾を指摘できる現象はありません。

横U字形を横に並べるという条件の中でも、ペアでリーマン零点が現れる事例は他にもいくつも想定できますが、分析したところ、その多くの図で矛盾が見つかりませんでした。結果的に、このやり方では証明できないことになったわけですが、これを踏まえて次の証明のステップへと進むことが出来ます。





■7の8■      k(1-s)/k(s)の歪みを解消した図


先の図では k(1-s)/k(s)の実虚零線が大曲がりしていますが、実際のk(1-s)/k(s)の実虚零線は極めてなだらかです。もし「なだらかに流れる」ことが証明できれば、「曲がった実虚零線」は矛盾と認定できるはずです。そう思って分析したところ、何と ヽ(゚Д゚)ノ !!  なだらかに流れるような実虚零線に問題なく書き換えられることが判りました。k(s)に「ペアでリーマン零点がある」という歪んだ図があったとしても、それを逆にして重ねたときに出来るk(1-s)/k(s)の図には歪みがまったくないのです。

nami129f の図
歪みがないことを確認するのが右の図です。緑線、ピンク線を真っ直ぐにしても、青と赤の実虚零線を矛盾無く描くことが出来ます。ひとつでも可能と言うことは、「すべてに矛盾が生じる」と言うことはもはや不可能です。このやり方でも矛盾は発生しませんでした。
















第8部    周期(サイクル)による証明





■8の1■     周期(cycle, frequency)


波には周期があります。自然界の波は常に一定なので周波数を数えることができますが、数学の波はあらゆる形が可能なので、k(s)のように周期が変動するものも含まれます。この変動があるゆえに、なかなか証明の根拠として使えなかったのですが、k(s) と k(1-s)/k(s) の周期が一致することは重要な証明の根拠となります。

どのように一致しているかというと、k(s)でやや広がった周期のところはk(1/s)/k(s)でも広がっていて、k(s)で狭まっているところではk(1-s)/k(s)でも狭まります。ふたつの関数は同じリズムで常に波打っています。この現象はk(s)複素平面のすべてに起きていますが、a=0.5上の波でも同じで、bが無限に至るまで変わることはありません。

そのことをa=0.5上での実際の波において証明しておきます。

kr_hx05a の図
k(s)の波は右図のようになっています。a=0.5でb=0から20までの図ですが、綺麗に上下運動していることが判ります。bが20以上の場合が次の図です。










kr_hx05b の図
実部波が零近辺で折り返していて、マイナス方向に深く折れ込まないのが特徴です。虚部波は普通に零を中心に振動しています。おそらく実部波はz=1を中心に振動しているのだろうと思いますが、証明できたわけではありません。









kv20a の図
k(1-s)/k(s)の図も載せておきます。a=0.5で、b=0からb=20までが右図で、次がb=20からb=40までの図です。b=10以上ではだいたいサイン曲線に近い形になります。青線がcos曲線、赤線がサイン曲線に対応します。高さがぴったり1になっているのが注目されます。

この図を眺めると、まったくサイン曲線と同じであるように見えるのですが、厳密に調べると、サイン曲線から少しズレています。しかし驚いたことに、そのズレは、k(s)のズレと一致します。つまり、a=0.5上のリーマン零点が並ぶ間隔と同じリズムで(厳密な距離ではなく)k(1-s)/k(s)の波が動いていると言うことです。これは証明で使うことになる現象なので、次の節で証明することにします。


kv20b の図
また、その証明と内容的に重なりますが、このk(1-s)/k(s)の図と、先のk(s)の図を重ねると、完全にサイクルが一致しているだけでなく、零点の場所も一部一致していることが判ります。これは証明に直結する現象なので、項を改めて論じてみることにします。




■8の2■      k(s)とk(1/s)/k(s)の周期の一致を証明する


kv20c の図
波は上下運動しますが、その周期の一致を証明するためには、繰り返し互いの零点が一致することを示せば充分です。

k(s)とk(1-s)/k(s)の図を重ねたものが右図(b=20から40)です。両図を同じ色で描いたので、判りにくいかもしれませんが、ピンク点が両者の一致点です。黒点がk(s)のリーマン零点です。実零線は同一方向でリズムが一致し、虚零線は逆向きに一致しています。

このピンク点については、計算上も完全に一致していますが、この点がk(s)とk(1-s)の虚零線の交点であることを考えると、ここをk(1-s)/k(s)の虚零線が通ることは必然、つまり、must マストです。それゆえ、この現象はbがどれほど大きくなっても必ず繰り返されることが証明できました。




■8の3■      周期の基準点


さて、この周期の基準点を使って、先の事例を再度整理してみます。すると、実虚零線については矛盾は生じませんが、周期の点で矛盾が生じていることを指摘できます。まずは一般的事例で矛盾が生じることを示すことにします。

nami129c の図
もし、リーマン零点がa=0.5以外に存在するとしたなら、それは必ずふたつの横U字形が横に並ぶ形しかないことは証明できました。それがk(1-s)/k(s)の図と重ねるとき、非常に歪んだ形になりますが、実虚零線についての矛盾は生じません。しかし、実際的にはあり得ない形になっています。そのあり得ない形のひとつが右図です。

緑線がk(1-s)/k(s)の実零線、ピンク線が虚零線です。実際の図より真っ直ぐな線に描いてありますが、ここではリズムが問題なので、少々の歪みは無視できます。黒点がリーマン零点、緑点とピンク点がk(s)とk(1-s)の交点で、k(1-s)/k(s)の実零線、虚零線の通過点を意味しています。a=0.5上以外の点は左右対称です。

k(1-s)/k(s)の実虚零線を引くことが出来るので、この図には実虚零線上の矛盾は何もありません。しかし、なぜこれがあり得ないと感じるのかというと、波のリズムが変わりすぎているからです。そこで、このリズムの変化があり得ないことを証明することにします。

そこで、右図のように想定した場合のa=0.5上の波を描いてみます。そのためにa=0.5上の符号を確定します。k(s)の横U字形の内部がマイナスであることはすでに証明済みです。ですから、q3からq5までの実部はマイナスです。すると、q1からq3までがプラス、q5からq7までがプラスと確定します。

虚零線については、まずリーマン零点に注目します。q1の下にリーマン零点がありますが、ここは横U字形の内部から外部へ出る場所なので、a方向の実部微分係数は必ずプラスです。すると、微分係数決定の法則から、ここから90度先のbについての虚部の微分係数もプラスになります。次の虚部零点であるq2までは値がプラス、次のq4まではマイナス、q6まではプラス、次はリーマン零点までがマイナスと確定します。

nami129e の図
これに基づいた図を描くと右図になります。





nami130a の図
さて、歪み部分については、この両者のサイクルに異動が生じています。それを前後も入れて図示すると右図のようになります。

k(1-s)/k(s)のサイクルは緑とピンクの色で現わしています。それに対応してk(s)は変化するのですが、太線のところだけが壊れています。虚零線で見ると判りやすいのですが、ひとつのサイクルであったところが太字の赤線では半サイクルになっています。実零線ではひと山無くなっています。(本来ならば q3 と q5 の近傍にリーマン零点があり、そこを虚零線が通過するのですが、ここにはリーマン零点が無いので、次の通過点へ直行します。)変化はq3とq5の前後にも広がっていて、全体としては2サイクルが1サイクルに縮んだ、もしくは、k(s)を基準に考えると、1サイクル分伸びたことになります。このようなことは起こり得ません。

この「起こり得ない」ことの証明はどうするのかと言われると困るのですが、あるふたつの関数においてa=-∞からa=0まではまったく同じ値であったのに、a=0からa=1までは異なる値を取り、a=1からまた元に戻るという関数があるでしょうか。関数なら、そういうことはないというのは証明無しに使える公理だと思います。ならば、このサイクルにおいても同じことが言えるはずです。他の部分ではまったく一致するのですから、この部分だけサイクルが変化することはありえないことです。

ある一部のサイクルの長さだけが伸びるというなら、それはありえるかもしれません。しかし、ここではサイクルの幅が伸びたのではなく、サイクルそのものが別の変化をしたのです。「こういうことはない」と判断して、これを証明の根拠として使える矛盾として提示させていただきます。

以上、くどくどと言いましたが、サイクルについての扱いはまだなれてないので、どこまでが証明の根拠として使えるかはいまいち不安がありますが、従来の数学の証明のやり方からすると、このサイクルの矛盾も数学上の矛盾として認められると思います。もし違っているようならご指摘いただけると幸いです。


以上のことを前提に、第6章で証明できなかった事例をこのやり方で矛盾を示すことにより、すべての事例をカバーしたことにしたいと考えています。第6章で証明できなかった事例は、(2,1)、(2,2)、(2,3)、(2,7)、(2,8)の5つです。これらの中にいくつか場合分けした方が良いものもありますが、この5つを基本に今回の新しい証明方法を適用してみます。(第7章の証明で矛盾が生じる事例も入っていますが、第7章での分析は省略したので、ここで第7章の論理を含めて議論します。)




■8の4■      事例(2,1) nami135 の図



事例(2,1)はいくつか分けて議論したもので、矛盾の起きる図もありましたが、起きない図もありました。ここでは、矛盾の起きなかった別例(3)を取り上げます。

この図をa=0.5を基準に反転させて重ねると、かなりの部分が重なってしまい、図として見にくくなります。それゆえ、やや極端な作図をして、交点が判るように描いてみたのが右図です。第1図が元の図で、それを反転させて重ねると第2図になります。それでも判りにくいので、中央部分を拡大してみたのが第3図です。

第3図に出来た3角形の各頂点はピンク点ですが、3つの虚零線が内部に入ると、それがひとつになることが出来ないので矛盾になります。













■8の5■      事例(2,2) nami122c の図


事例(2,2)は、実零線が横U字形ふたつで、虚零線が横一本線ふたつのときです。横一本線はふたつだと作図できないので、3つの線になります。反転させて重ねるとたくさんの交点ができます。そのうち注目すべきはP1,P2,P3です。ここにk(1-s)/k(s)の虚零線(ピンク線)が通るので、輪になります。

輪になることは、この段階では矛盾とは言えないので、これを周期の点で再検討してみます。

先の周期の分析のときと異なり、p1,p2,p3という輪が出来ていますが、これによりk(1-s)/k(s)の周期が変わったわけではありません。なぜなら、この前後に実零線は無く、虚零線が単独で動いているからです。また、q2,q4,q6には本来の虚零線が通っているので、周期は少しも乱れていません。ただ、周期の内部で虚零線のみに変化があったと言うことです。この変化はk(s)にも現れています。それゆえ、この輪があるという前提で、k(s)とk(1-s)/k(s)のa=0.5上の波の図を描いてみます。

nami130b の図
上図がk(s)で、下図がk(1-s)/k(s)ですが、輪が出来たところで波が乱れています。この乱れが矛盾であるわけではありません。波の乱れと別に周期が乱れていることが矛盾と認定できます。

この場合も、k(s)とk(1-s)/k(s)の周期を比較することができますが、q3,q4,q5の部分では周期が異なっています。これは、k(s)とk(1-s)/k(s)が同一周期の関数であることと矛盾しています。それゆえ、このような図はあり得ないことが証明されました。




■8の6■      事例(2,3) nami122b の図


事例(2,3)は、実零線がふたつで、虚零線が横一本線と右横U字形の場合ですが、実虚零線を使う分析では矛盾が生じません。そこで、k(1-s)/k(s)ではどうなるかを見てみます。すると、この場合にもa=0.5上に虚零線の輪が発生します。形としては(2,2)とまったく同じになったので、(2,2)の説明を参照にしてください。







■8の7■      事例(2,7) nami122a の図


事例(2,7)は、実零線がふたつで、虚零線が右横U字形と横一本線のときです。これをk(1-s)/k(s)の図で考えると、右図のようになります。

この図の場合、虚零線の輪も発生せず、実虚零線については何の矛盾もありません。しかし、q3.q4.q5のところにk(s)だけの歪みが生じていて、1周期全体が欠けています。これは矛盾です。それゆえ、このような図は成り立たないことが証明されました。






■8の8■      事例(2,8) nami122e の図


事例(2,8)は、実零線が横U字形ふたつで、虚零線が右横U字形ふたつのときです。この図にも実虚零線についての矛盾は生じません。そこでk(s)とk(1-s)/k(s)の周期を比べてみると、k(s)のほうが1周期欠けています。そのようなことは起こり得ないことですから、矛盾です。つまり、このような図になることはあり得ないことが証明されました。




■8の9■      結論


さて、以上で実零線・虚零線のすべての場合の検討が終わりました。それらすべてで矛盾が生じるとは、「リーマン零点がペアで存在する」という仮定法の前提が成立しないことを示しています。ゆえにa=0.5上を除いて、0=<a<=1 の全領域でリーマン零点が存在しないことが証明されました。

0=<a<=1 ということは、すでにa>1, a<0 で証明されているので、b=0上とa=0.5上を除いて、aの全領域でリーマン零点が存在しないことが証明できたと言うことです。




■8の10■      a=0.5上にリーマン零点が存在することの証明


さて、以上で「リーマン零点不存在証明」は完成しました。しかし、一般的理解では、「a=0.5上にしかリーマン零点が存在しない」ということなので、a=0.5上にもリーマン零点が存在する証明を付け加えて、一般的理解に配慮することにしました。「a=0.5上に存在する」とは、ひとつでも存在すればよいのですから、a=0.5上に最初に登場するa=0.5,b=14.13472514...がリーマン零点であることを証明します。

b=14.1347の近傍を通るのは実零線2です。この線がa>0.5にも存在することは計算によって確かめられます。この実零線の内部の実部値がマイナスで、外がプラスであることは計算で確かめられます。そして、この実零線の内部を虚零線が通っていることはすでに証明されています。b=14.1437近辺を通るのは虚零線3です。この虚零線と実零線がa<0で交わることがないことも■第3部■で証明してあります。この虚零線は実零線の外に繋がっていることは計算により確かめられます。さて、虚零線が実零線の内部から外部へと繋がるためには必ず実零線と交差しなければなりません。そして、その交点は必ず存在し、その点は必ずリーマン零点となります。今、「不存在証明」により、a=0.5以外にリーマン零点が存在しないことが証明されています。ということは、存在するリーマン零点は、必ずa=0.5上でなければならなくなります。以上で証明終わり。

計算によりそれを裏付けることができます。実部の零点を算出するとa=0.5,b=14.1347251421...、虚部の零点を算出するとa=0.5,b=14.1347251417...となります。誤差が出ているようなので、さらに精度を上げると、ますます一致桁が増えます。ですから、計算上も問題なく成り立っていることが判ります。




■8の11■      付録 (リーマン零点がa=0.5上に無限個存在することの証明)


さて、補足になるか、蛇足になるか判りませんが、「a=0.5上にリーマン零点は無限に存在する」ことはすでに証明されているそうです。その証明法をまだ見たことはありませんが、私なりにこの証明にもチャレンジしてみました。

まず、a=-∞において実零線と虚零線が交互に並んで、無限に存在していることは証明されています。■4の8■を参照してください。これらがa=0に向けて実零線、虚零線として伸びてきているわけですが、実零線はa=∞に到達しないことも証明されています。また、b=+-∞にも到達しません。とすると、-∞から出た実零線は必ず元に戻らざるを得ず、必ず横U字形になります。

虚零線はa=∞に到達するものがたくさんありますが、元に戻り、横U字形になる場合もあります。しかし、いずれにせよ、実零線の横U字形の内部で元に戻ることはありません。なぜなら、a=-∞において、実零線と虚零線は交互に並んでいるからです。

ゆえに、虚零線がa=∞に到達するか、別の虚零線と繋がるかするときには、実零線の外に出なければならず、その際、必ず実零線との交わることになります。そのときできる交点はリーマン零点です。

さて、■4の8■で、a=-∞において、実零線と虚零線が交互に無限に存在することは証明されています。この無限個の実零線と虚零線は必ずリーマン零点を形成するのですから、作られるリーマン零点の数は無限個ということになります。今、先ほどですが、リーマン零点があるなら、それはa=0.5上に存在することが証明できました。ゆえに、リーマン零点はa=0.5上に無限に存在することになります。









証明の第1部

証明の第2部、第3部

証明の第4部

証明の第5部

証明の第6部

証明の第7部、第8部



以下、ver35

証明の第9部、第10部

証明の第11部





追加説明:2011/12/09 周期についての説明に追加を加えました。

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